韓国銀行が昨年10月と11月に2度にわたって政策金利を引き下げ、今月には凍結を決めたのは、経済環境の不確実性がいっそう高まっていると判断したからだ。これは、「12・3内乱事態」に起因する政治の不安定が長期化するかどうかと、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の動きをもう少し見守ってから動いても遅くないと韓銀が判断したことを意味する。
韓銀のイ・チャンヨン総裁は16日、金融通貨委員会の会議後におこなった記者懇談会で、「(昨年10月と11月の)2度にわたる金利引き下げの効果を見るのも兼ねて、ひとまず息を整えて情勢を見て判断した方がよいと判断した」と語った。イ総裁の述べた「情勢」とは第一に、内乱罪の容疑者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領による非常戒厳の宣布からはじまった政治不安だ。「通貨政策の方向性決定文」にも「予想外の政治的リスクの拡大により、成長の下方リスクが高まると共に、為替レートの変動性が強まっている」、「国内の政治状況によって、経済見通しおよび外国為替市場の不確実性が高まっている」と記されている。
イ総裁は、政治的リスクが決定的に波及する領域を「外国為替市場」に求めた。同氏は、「現在のウォン相場の水準は、韓国の経済の基礎的諸条件や米国との金利格差など、経済的要因で説明できる水準よりはるかに低くなっている」と述べた。政治的リスクのせいでウォンの価値が異常な水準にまで下落しているということだ。為替レートは、韓銀の第一の存在理由である「物価の安定」を揺るがす最も重要な経済変数だ。ウォン安ドル高は輸入品の価格を押し上げ、消費者物価を刺激するからだ。先月の輸入物価上昇率(対前月比)は2.4%で、前月に比べて上昇幅は3倍近い。韓銀は、内乱事態の序盤には政治的リスクによるドルの上昇幅を最大60ウォン、最近では30ウォンほどと分析している。
イ総裁は「米国変数」を、韓国経済の不確実性を高めたもう一つの軸だと指摘した。今月20日に発足する第2次トランプ政権の経済政策と、「一国好況」にともなうFRBによる政策金利引き下げの速度調節の可能性を、注意深く見守っているということだ。10~20%の関税を課すなどの大統領選挙での公約などが直ちに実行されれば、米国はもちろん世界の経済にかなりの衝撃となる恐れがあり、FRBが金利を引き下げなければ韓米の政策金利の格差が拡大し、さらなるウォン安を招きうる、と専門家たちはみている。イ総裁は「当初は米国が政策金利を3回ほど引き下げると予想したが、今の米国市場では、1回下げるか、まったく下げず、逆に引き上げる可能性もあるという説も有力だ。トランプ政権の発足後は不確実性が多少は落ち着くだろう」と語った。
この日の凍結決定には、イ総裁を除いた6人の金通委員のうち5人が賛成票を投じた。政策金利を0.25ポイント引き下げるべきだという少数意見を述べた金通委員は、銀行連合会によって推薦されたシン・ソンファン委員。今後3カ月間の金利見通しでは、6人の委員全員が国内景気の下方リスクを理由に政策金利を3.00%未満に引き下げる可能性を残しておくべきだと主張した。昨年10月から始まった政策金利引き下げの流れそのものは、維持される公算が高いわけだ。イ総裁は「金利の下落期には、国内の経済状況だけを見て判断する余力が上昇期に比べて大きい」として、「国内の政治的対立がある程度落ち着けば、より独立的に引き下げ政策を持っていけるだろう」と語った。