「韓国経済は確実に回復しています」(尹錫悦大統領、8月29日の国政ブリーフィングで)
尹大統領はこのように述べたが、消費は減っており、税は徴収されていないのに、ソウルのマンション取引だけは爆増していることがあらわになった。景気は低迷し、財政運用に支障をきたし、住宅価格と家計負債に対する不安は拡大しているということだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を気まずくさせるような経済指標を、企画財政部、統計庁、国土交通部が一斉に発表した。尹大統領のブリーフィングから18時間後のことだ。
■減りつつある消費、低迷する景気
30日午前8時。統計庁は先月の小売販売が前月より1.9%(季節調整済み)減少したことを発表した。小売販売は2月に大幅(3.2%)に減少してから毎月小幅な増減を繰り返してきたが、先月はまたも2%近く減少したのだ。絶対水準も低い。先月の小売販売指数(100.6、2020年=100)は、2020年7月(98.9)より後の最低値。コロナ禍の社会的距離措置(ソーシャルディスタンシング)の真っ最中の消費水準に近づいているということだ。
消費の萎縮は全方位的なものだ。耐久財(-2.3%)、準耐久財(-2.1%)、非耐久財(-1.6%)がいずれも減少している。これは、消費者が買い物の大きさを問わず支出を減らしていることを意味する。全般的な景気を示す動向指数の循環変動値は98.4で、前月より0.6ポイント下落。下落は5カ月連続だ。景気が落ち込み続けているということだ。見通しも暗い。今後の景気を示す先行指数の循環変動値は前月と同じだった。
■税は徴収されていない
午前11時。企画財政部も見通しの暗い数字を発表した。年初から7月までに徴収された国税は、歳入予算の56.8%のみだという。この5年間で7月までの国税収入進捗率の平均は64.3%(最大、最小年を除く)。これは税収に欠損が出る可能性が非常に高いことを意味する。政府も、欠損規模が史上最大だった昨年(56兆ウォン)ほどではないものの、数十兆ウォンの欠損は確実だとみている。国策研究所である韓国租税財政研究院が推定した欠損規模は、約23兆ウォンだ。
大規模な税収の欠損は財政運用に支障をきたす。まず、資金がないせいで国会で確定した予算事業が行えない危険性(予算不用)が生じる。また、現政権が金科玉条のように考えている財政健全性も損なわれる。例えば、昨年の財政赤字(管理財政収支)も税収欠損の影響で当初の予想より約29兆ウォン増えている。これは、実際の規模は政府が最近発表した2025年度予算案で予想した今年の財政赤字規模(91兆6000億ウォン)を上回り、100兆ウォンを超える可能性があることを意味する。
■住宅価格は高騰、家計負債は雪だるま式
午前6時。国土部は最も早い時刻に、先月のソウルの住宅取引量が江南(カンナム)圏のマンションを中心に前月の1.4倍となり、計1万2783件だったことを発表した。ソウルの住宅取引が1万件を超えたのは、住宅価格の高騰期だった2021年8月以来、2年11カ月ぶり。前年の2倍以上だ。増えた取引の約30%が江南4区のもの。
取引量の拡大は家計負債の増加を伴う。実際に、7月の1カ月間で家計への貸付は全金融圏で5兆ウォン増加しており、その余波は8月にも及んでいる。5大銀行だけを見ると7兆ウォン以上の増加だ。ソウルのマンション市場に火がついている時、政府は家計貸付規制の緩和方針を明らかにしている。貸付限度を引き下げるストレスDSRの2段階適用の時期を、以前の予告より2カ月遅らせることを発表したのは、6月25日だった。政策が時機を逸したことが住宅価格の急騰と借金の急増へとつながり、マクロ経済全般の危険を増大させたということだ。