韓国政府が医学部定員増員分2千人のうち1639人(82%)を首都圏以外の地域に、残りの18%は京畿・仁川(インチョン)に配分した。ソウルの8つの医学部は、現在の定員を維持した。2006年から3058人に凍結された定員が、来年から5058人に大幅に増える見通しだ。当初の3月末あるいは4月初めの予定よりも10日以上操り上げて発表し、医学部生2千人増員計画に事実上「ピリオド」を打った。しかし、延世大学と高麗大学医学部の教授らが政策撤回を要求するなど反発が広がり、政府と医療界の対立がさらに激化しており、医療空白も長引くものとみられる。
イ・ジュホ社会副首相兼教育部長官は20日、政府ソウル庁舎でブリーフィングを開き、2025学年度医学部定員の大学別配分結果を発表した。教育部は保健福祉部、医療界の専門家などと「医科大学の学生定員配分委員会」(配分委員会)を設け、15日から配分について協議してきた。配分委員会は大学を実査する代わりに増員申請書と福祉部資料などを参考にして増員分を決めた。
1639人が首都圏以外の地域に配分され、2025学年度からは首都圏以外の大学医学部の定員が3662人(全体の72.4%)に増える。現在は首都圏以外の地域の医学部定員は3058人のうち2023人(66.2%)だ。特に、地域拠点の国立大学の定員が大幅に増えた。これらの大学を、地域の必須医療を支える責任医療機関に育てるためだ。慶北大学(現在、110人)、慶尚国立大学(76人)、釜山大学(125人)、全北大学(142人)、全南大学(125人)、忠北大学(45人)、忠南大学(110人)の7校はいずれも200人に増えた。同じ拠点国立大学の江原大学(49人)、済州大学(40人)はそれぞれ132人、100人に増えた。
定員50人未満の小規模な医学部は、地域の区別なく定員が増加した。京畿地域では、車医科大学(40人)が80人に、亜洲大学(40人)、成均館大学(40人)は120人に増員された。仁川(インチョン)では嘉泉大学(40人)、仁荷大学(49人)が定員120人を確保した。大邱カトリック大学(40人)は80人で、蔚山大学(40人)、檀国大学天安キャンパス(40人)、東国大学分校(49人)は120人に2~3倍増えた。残りのカトリック関東大学など首都圏以外の大学の医学部も定員が100人以上に増えた。
政府は首都圏以外の医学部の地域人材選考選抜の割合を60%以上(現行40%)に引き上げるよう誘導する計画だ。イ副首相は「規制や指示を通じて推進するよりはボトムアップ型で話し合いながら進めていきたい」と述べた。地域医療を強化し、医学部への偏りを緩和するためのものだが、強制ではないため、実効性に疑問を呈する声があがっている。
また、政府は増員にともなう教育条件の改善に向け、教員の確保と施設や機材などの拡充を支援する計画だ。国立大学医学部に対しては、2027年までに専任教授1千人を拡充する計画だ。配分規模によりさらに必要な教員と施設、実習空間、設備、機材などは大学ごとの需要を調査し、来年の教育部予算に反映する計画だ。私立大学に対しても、需要調査を経て必要性が認められれば、教育環境の改善のため、私学振興基金の融資を拡大すると明らかにした。
しかし、医学部の教育環境改善のための計画がまだ具体的に出ていない上、増員された医学部生が卒業後、医療需要・生活基盤の良い首都圏に流出することを防ぐ方法が地域必須医師制の導入以外には明確に示されておらず、今回の増員が地域医療の強化につながるかは不透明だ。
政府が配分結果を発表し、「2千人増員」を事実上確定したことを受け、医療界は大きく反発した。延世大学医学部の教授らは声明を出し、「国民の健康を脅かしかねない独善的な決定」だと主張した。セブランス病院を含むいわゆる「5大病院」の教授らが25日に辞表の提出を決議した状況で、政府の今回の発表でその可能性はさらに高くなった。大韓応急医学会など26の専門科目学会で構成された大韓医学会も、立場表明文を出して政府の政策撤回を求めた。