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「韓国は米中間のエビになるのではなく、多角化した利益を追求すべき」

登録:2022-05-31 02:11 修正:2022-05-31 09:02
韓国外国語大学のカン・ジュニョン教授
中国専門家で韓国外国語大学教授のカン・ジュニョンさんが26日、自身の研究室でインタビューに応じている=キム・ヨンベ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「世界7位の貿易国だ。こんなに大きなエビがどこにいる?(他人のけんかで第3者が被害を受けることを意味する『クジラのけんかでエビがつぶれる』ということわざを前提とした発言)」

 先日のインド太平洋経済枠組み(IPEF)参加で韓国が苦境に陥るのではないかというような分析について、韓国外国語大学のカン・ジュニョン教授(60)は「(韓国の立場を)『エビ』と考える必要はなく、(高まった経済的地位を考慮すると)やたらとエビのように振舞わなくていい」と述べた。カン教授は「経済領域では当然多角化した利益を得るべき」と付け加えた。

 経済安保同盟の性格を帯びる米国主導のIPEF発足宣言をめぐり、中国は韓国をはじめとする参加国に対して不満を示し、反発している。これこそ、韓国が2つの大国の間に挟まれ困難に陥る恐れがあるという観測を生んだ背景だ。IPEFは韓、米、日、オーストラリアなど13カ国が参加し、23日に発足が宣言された。

 26日、韓国外国語大学の教授会館でカン教授にインタビューした。

台湾国立政治大学政治経済学博士 
中国専門家として国際地域研究を総括 
 
「IPEF」への加盟に関して 
「中国はすぐには反発・報復しないだろう」 
「初期から積極的に参加して『生きる道』探るべき」 
「中国との交渉時のテコに」

 カン教授は台湾国立政治大学で政治経済学博士を取得した中国の専門家だ。1999年に韓国外大国際地域大学院中国学科の教授に任用され、その後、中国研究所長、国際地域研究センター長を務め、現在は「HK+国家戦略事業団」団長を務めている。2019年には米中日などの14の地域の研究所を総括する国際地域研究センター長を引き受け、研究所の拡大改編作業を率いている。

 まずIPEFについて、中国がどれほど脅威を感じているとみるかを尋ねた。

 「その方向へと向かうということは中国もすでによく分かっていたはずだ。米国は特に中国を名指ししてはいないが、自分たちを標的にしていることはよく知っている。韓国も自然にそちらに流れていくと考えていただろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が大統領選挙の過程で韓米同盟を強化するとの考えを明らかにしていたではないか」

 しかしカン教授は、中国が直ちに大っぴらに反発したり報復措置を取ったりするとは考えていないと語った。「全般的な流れについて憂慮を示す程度だろう。中国内部が安定しているなら分からないが、(新型コロナウイルス)パンデミック対応で困難に直面している。対外的な(不満の)発散を減らそうとしているようだ。台湾問題のようなことには直接的に反応するだろうが、IPEFについては、来年11月に正式な協議体のかたちが整うまでは、言及は続けつつ問題視する程度だろう」

 カン教授は、米国のバイデン政権の世界戦略について「中国を排除したサプライチェーンの再編」と「新技術標準の制定」の2つを挙げ「そのために民主、自由、市場、人権を強調しつつ中国とロシアを圧迫している」と解説した。IPEFは米EU貿易技術評議会(TTC)と共に2つの軸を成す手段だ、という説明だ。

 「米国としてはIPEFで中国を牽制し、TTCによってロシアを締めつける戦略を取っている。昨年10月に欧州地域における米国の対中牽制のための組織として発足したTTCは、ウクライナ侵攻後はロシアを牽制するプラットフォームとしての役割も果たしている」

 IPEF発足初期からの韓国の参加は良い選択だろうか。

 「韓国は初期から(通商)秩序作りに参加したことがない。オバマ政権時代には環太平洋経済パートナーシップ(TPP)協定にも入れなかった。トランプ時代に米国が脱退した後、TPPは日本中心の環太平洋経済パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)へと変化した。韓国は、これまでは規範制定者、ルールメーカーの役割を果たせなかったが、今や韓国の生きる道を探る方向性を語れるのだ。対中牽制の構図が固まった時に加盟しては、むしろだめだと思う。最初から動いて加盟すべきだ。受動的に臨むべきではないと思う。参加もできずに引きずられるかたちは望ましくない」

 カン教授は、「(韓国は)文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に中国主導の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定にも加盟している」ということについては、「(IPEFへの参加について)中国に対して韓国の主張をするための戦略的レバレッジ(テコ)として活用しうる」と述べた。「特定の国に依存しすぎると、どれほど大変なことになるのか、『尿素水事態』の際に経験したではないか。サプライチェーンの再編において、多くの国と共に動くことの何が悪いのかと(中国側に)言える」

 実際に、IPEFには中国の影響圏に属するASEAN10カ国から7カ国も参加しており、代表的な親中国家であるシンガポールも含まれている。

 「安米経中(安保は米国依存、経済は中国依存)は正しくない。経済、食べていく問題は多角化できるものだ。安米経『世(世界)』、安米経『益(利益)』とまで言われているではないか。米中の対決構図は確実だが、それが韓中の対決構図へと向かわないよう管理すべきだし、そうできるはずだ。(半導体)技術を持っているのだから」

 では、IPEFは米国の意図通りに流れていくのだろうか。

 「米国主導で完璧に? そうはならないだろう。13カ国が集って発足を宣言したにすぎない。具体的な行動へとつなげるためには規範を作らなければならない。来年11月に協議体を正式に設置するまでは『駆け引き』が続くだろう。したがって対立構図ばかりを語る必要はない。韓国の身動きの幅が狭くなるだけだ。米国の意志が貫徹されるか、その他の国の影響で中和されるかは分からない」

 カン教授は、IPEFがバイデン政権の行政命令で推進されていることをあげ、「米国の焦りを示すものでもある」と述べた。「議会の批准を受けるために行ったり来たりする時間がないということだ。国会の批准が必要ない方式なので、指導者が変わればどうなるか分からないし、不透明になりうる」

キム・ヨンベ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1045035.html韓国語原文入力:2022-05-30 19:02
訳D.K

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