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地政学的な不安が好材料に…胸を張れない韓国の兵器輸出増加

登録:2022-02-28 05:09 修正:2022-02-28 08:01
[ハンギョレS]キム・ヨンベの経済見通し 
武器輸出突撃する「K9自走砲」 
 
「K9自走砲」で兵器輸出の歴史塗り替え 
昨年の兵器輸出額、輸入超過の分析も 
内需は飽和状態…新冷戦気流の中で 
「NATO諸国などを通じて輸出拡大」の見通し
「K9自走砲」=ハンファディフェンス提供//ハンギョレ新聞社

 ハンファグループの防衛産業系列会社のハンファディフェンスが、オーストラリア現地に自走砲と装甲車を製造できる3万2000平方メートル規模の生産施設の敷地を確定したと発表したのは今月23日。ロシアとウクライナとの軍事的緊張が一触即発の状態だったうえ、国内の防衛産業企業が国外に生産拠点を確保した初めてのケースであることから、注目を集めた。これはハンファディフェンスが昨年12月、オーストラリアに「AS9Huntsman」(「K9自走砲」の現地名)と弾薬運搬装甲車を現地生産する方式で供給する1兆ウォン(約960億円)規模の契約を結んだことに伴う動きだった。

 韓国の兵器輸出の代表アイテムに浮上しているK9自走砲は今月1日、ハンファディフェンスとエジプト間の輸出契約の件でも話題になった。契約金額2兆ウォン(約1920億円)規模で、K9自走砲の輸出史上最大規模だった。先にオーストラリアと結んだ契約件数の2倍水準である上、アジアや欧州、オセアニア地域に続き、アフリカ国家に初めて国産自走砲を輸出したケースだった。

兵器輸出の好調、その光と陰

 兵器輸出の歴史に足跡を残しているK9自走砲の輸出が初めて実現したのは2001年だった。当時、輸出先のトルコと結んだ契約は韓国の「国産兵器システム」としては初の輸出だった。K9自走砲輸出契約はその後、ポーランド(2014年)やフィンランド、インド、ノルウェー(2017年)、エストニア(2018年)、オーストラリア、エジプトへと続いた。

 北欧諸国(フィンランド、ノルウェー)にもすでに5年前から輸出されていたことが特に目を引く。国防・防衛産業分野のコミュニケーションコンサルティング会社「GOTDA」のオム・ヒョシク代表は「これらの国が韓国の兵器を購入したのは、ロシアの脅威のため」だと説明した。ロシアとウクライナとの紛争が激化している現状を思わせる。オム代表は予備役大佐出身で、防衛産業界で経歴を積んだ。

 K9自走砲などの兵器輸出が相次ぎ、昨年、韓国の防衛産業輸出額が輸入額を初めて上回ったというメディアの報道もあった。匿名の韓国政府当局者の伝言を取り上げた形だったが、定かではない。全般的な輸出入のように厳密な数値に分類されにくい分野である上、長期間にわたる契約件がすでに成立した実績のように受け止められ、過大評価された可能性があるためだ。

 産業研究院(KIET)機械・防衛産業室のキム・ミジョン専門研究員は「契約は今年成立したとしても、引き渡される時期が異なり、企業が生産・開発して(輸出に)出る時期はまた違うため、収支が黒字(輸出>輸入)と断言するのは難しい面がある」とし、「輸出が輸入を上回り、黒字を出したというのは、やや大げさである可能性がある」と話した。「(主要輸入先の)米国から輸入する武器はハイエンド(先端)製品が中心であるのに比べ、K9自走砲をはじめとする輸出品は比較的中低価」である点を基本に考慮すべきだと説明した。キム研究員は「2020産業研究院 防衛産業輸出有望国」と題する報告書を共同で発表しており、この分野の専門家として知られている。

 兵器貿易収支で黒字を出したと断定するのは難しいが、兵器輸出が最近になって大幅に増加し、防衛産業市場の規模が大きくなっていることは、国際専門機関の分析資料からも確認できる。スウェーデンの政策研究団体であるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が昨年まとめた統計によると、2016~2020年の韓国の防衛産業輸出は37億9800万ドルで、世界防衛産業物資取引(1401億6400万ドル)の2.7%だった。2011~2015年の12億2400万ドル(0.9%)に比べ、輸出額と割合ともに3倍水準に増えた。輸入は2011~2015年の38億1600万ドル(2.7%)から2016~2020年には60億700万ドル(4.3%)に増加した。輸入の規模が大きいが、輸出の方が増加傾向にある。

 武器輸出の好調ムードは複雑で微妙な感情を呼び起こす。「輸出で稼ぐ国」という韓国経済の現実と、「武器で金を稼ぐ」ことに胸を張れない複雑な気持ちがぶつかり合う。その間で冷酷な現実の方へ重きを置かざるを得ない要因は、防衛産業の産業連関効果が大きい点にある。K9自走砲の生産だけに絡む1次、2次協力会社が1000社を上回るという事実は、これを示す端的な例だ。生産拠点である昌原(チャンウォン)地域の経済全般に影響を及ぼす水準だ。

 韓国の防衛産業企業が、グローバル企業に比べたらかなり後れを取っている「幼稚産業」の段階である事情もある。世界の防衛産業市場の不動のトップメーカーであるロッキードマーティンの防衛産業の売上げは、年間80兆ウォン規模(2020年基準で653億9800万ドル)であるのに比べ、国内防衛産業の代表格であるハンファグループの4つの系列会社の防衛産業の売上げは、合わせて5兆ウォン(約4800億円)規模だ。グローバル舞台では競争相手にさえならない立場だ。これは防衛産業の雇用効果とあいまって、政策的支援の正当性として取り上げられたりもする。

 韓国の兵器輸出は2021年以降も増加を続けており、これは今後も続くというのが大方の予想だ。その根拠は大きく分けて二つだ。一つは内需飽和という国内環境だ。地政学的不安定性の高まりという外的情勢がもう一つだ。

 外的情勢は、進行中のウクライナ事態でもよく現われている。ロシアや米国、欧州が絡んだ新冷戦の気流が兵器産業においては好材料になっている。産業研究院のシム・スンヒョン副研究委員は、「ウクライナ事態以前から東欧諸国は兵器システムの現代化に努めており、中東地域でも依然として多くの需要が発生している」と語った。コロナ禍以降、各国の国防予算が減ったにもかかわらず、「地政学的情勢からすると、輸出が増える可能性が高い」とシム委員は見通した。

冷戦の狭間で輸出の道を開く韓国の兵器

 内需飽和という国内環境は、K9自走砲からもうかがえる。国内唯一の兵器需要者である大韓民国軍に2019年まで約1100台の納入が完了した状態だ。国内需要だけを考慮すれば、生産ラインをさらに回す必要がないのが現状だ。オム・ヒョシク代表は「軍が各種の先端兵器体系を外国から大挙導入し、国内でもかなり多く調達した状況なので、防衛産業企業としては輸出に活路を見出さざるを得ない状況を迎えている」と診断した。

 国内外の環境共に兵器輸出を増やす方向に働くという見通しの中で、輸出の様相は以前と変わるものとみられる。キム・ミジョン研究員は「エジプトや中東のような中・後発国を中心に輸出してきたが、米国と協力してNATO(北大西洋条約機構)地域に進入したり、NATO諸国と直接協力する方式の輸出に変わっていくとみている」と述べた。これは同盟を重視するという米国のバイデン政府の外交路線に基づいている。同盟国間の兵器システムを供給するケースが多くなっており、輸出物量の拡大とともに輸出の変化につながると分析されている。

キム・ヨンベ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1032661.html韓国語原文入力:2022-02-26 10:51
訳H.J

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