文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4月22日の第5回非常経済会議で初めて指示した「韓国型ニューディール」の青写真が1日に公開された。雇用セーフティネットを基に、デジタル・ニューディールとグリーン・ニューディールを両軸にして、今後5年間で76兆ウォン(約6兆7千億円)を投入する長期計画だ。短期的には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機克服のために雇用を創出し、中長期的にはポストコロナ時代を先導できる成長エンジンに素早く投資し、未来に備えるという趣旨だ。
ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官は同日、関係省庁長官会議後のブリーフィングで、「ポストコロナ時代を切り開くための先導型経済基盤の構築に向け、韓国型ニューディールを本格的に推進する」と述べた。韓国政府はこのため、今年5兆1千億ウォン(約4500億円)を皮切りに2022年までに31兆3000億ウォン(約2兆7500億円)を投資して55万の雇用を創出する計画だ。さらに、2025年までに45兆ウォン(約3兆9500億円)を追加投入する。
韓国型ニューディールの青写真が完成するまでは、数回修正があった。まず企画財政部はデータやネットワーク、人工知能(AI)、遠隔教育など非対面事業を中心としたデジタル・ニューディール計画を発表した。その後、気候変動への対応や再生エネルギー拡大の必要性を反映してグリーン・ニューディールが追加され、最後に雇用保険の範囲拡大などを盛り込んだ雇用セーフティネットの強化が同日追加された。雇用セーフティネットの強化は暫定的に「ヒューマン・ニューディール」と呼ばれていたが、「雇用セーフティネットの強化」に最終変更された。大統領府のカン・ミンソク報道官は同日、書面ブリーフィングで、「(グリーン・ニューディール追加決定後)文大統領がもう一度韓国型ニューディールの概念を補完するよう指示し、青写真を完成させた。補完を指示した内容は人間優先及び包容国家という価値を韓国型ニューディールの土台にすることだった」と明らかにした。
新たに追加された雇用セーフティネットの強化は、社会的弱者や脆弱階層のための文在寅政府の包容成長と軌を一にする。雇用保険の死角地帯をなくすため、保険設計士や運転代行ドライバーなど9職種を雇用保険に加入できるよう、年内に法改正を推進すると共に、雇用保険の未加入者を含め、就業脆弱階層に来年1月から就業支援サービスと求職促進手当(最大300万ウォン)を提供する「国民就業支援制度」を導入する計画だ。
グリーン・ニューディールには保育園や保健所など公共施設のグリーン・リモデリングや、グリーン・ニューディール先導100大有望企業を選定して成長を支援するなど、グリーン産業の育成計画が盛り込まれている。またソーラーパネル設置支援など低炭素・分散型エネルギー拡散計画も含まれた。政府はグリーン・ニューディールに2022年までに12兆9000億ウォン(約1兆1300億円)を投入し、13万3000件の雇用を創出する目標を立てている。しかし、エネルギー気候政策研究所のハン・ジェガク所長は「気候危機にどう対応するか、温室効果ガス削減目標と計画が抜けている」とし、「グリーン・ニューディール事業に情報通信技術を活用するというが、それが温室効果ガス削減とどんな関連があるのかが曖昧だ」と批判した。
33万件の雇用創出を目標とするデジタル・ニューディールには人工知能・ソフトウェアの主要人材10万人を養成し、14万の公共データを開放するなど、データ、ネットワーク、人工知能の環境を強化する内容が盛り込まれている。また小中高全体の教室にWi-Fiを構築し、旧型ノートパソコンの交換などを通じてデジタル基盤の教育インフラを整備する。国立大学には老朽化したサーバーやネットワーク装備などを新しくすることで、オンライン教育を強化する計画だ。
これについて韓国労働研究院のイ・ビョンヒ社会政策研究本部長は「全体的にニューディールというより経済政策に偏った側面がある」とし、「社会保険料支援など雇用セーフティネット関連財源が3年間で9000億ウォン(約790億円)では非常に足りず、産業構造の変化による人材の再配置や職業訓練の高度化などへの対策が具体化されていないため、今後議論を通じて補完する必要がある」と指摘した。