公正性と不正行為の防止、失敗のない完璧な実施が重要である大企業の公開採用試験でも「非対面方式」が果たして可能だろうか。サムスングループが毎年実施する定期公開採用試験であるサムスン職務適性検査(GSAT)が、今年は大企業で初めてオンライン方式を通じて30、31日の2日間実施された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態という特殊な状況を反映してのことだが、非対面の大規模採用試験の可能性をうかがえる試金石となる見込みだ。
■どのように進められたか?
これまでサムスン職務適性検査は、毎年上半期と下半期の二度にわたり、それぞれ数万人の受験生が全国の試験会場で同時に試験を受けてきた。それとは異なり、今年は2日間で4回分散実施されたのが特徴だ。受験者の安定した接続環境をまず考慮した措置だ。4回の試験では全て違った問題が出題された。また、過去には115分間で4科目(語学、視覚的思考、数理、推理領域)の試験が行われたが、今回は画面への集中が困難な点を考慮して、数理(20質問項目、30分)、推理(30質問項目、30分)領域の2科目に縮小した。評価時間は全体120分で、事前準備60分、試験60分が割り当てられた。
オンライン方式の公開試験の場合、受験者は各自の家や寮などの一人部屋の中でデスクトップパソコンやノートパソコンを接続して試験を受けた。このために受験生は、個人情報保護用の身分証隠しやスマートフォン用のスタンド、領域別の問題用メモ用紙などの試験キットを事前に会社から郵便で支給され、受験と監視のためのプログラムをパソコンとスマートフォンに設定して準備をした。試験4日前の先月26日には、オンライン予備招集が実施され、各自の注意事項を伝えられて接続環境を点検した。OSとブラウザはウィンドウズ(IE11)とMac(Chrome)環境で進められ、タブレットPCと画面タッチ式操作は許可されなかった。
■不正行為の防止策は?
今回のオンライン採用試験で使われたプログラムは、サムスンSDSが自社のテレビ電話会議ソリューションを応用して特別に開発したものだ。サムスン側は場合によってはあり得るかもしれない受験者の不正行為を防ぐために、職員をテスターとして動員し、様々な状況で「カンニング」を試みて摘発する事前点検を経て、奇想天外なカンニング方法に対して事前に備えたことが分かった。 実際の試験で受験者はパソコンのモニター画面、マウス、顔や手などが全て撮れるように各自のスマートフォンを提供されたスタンドに載せ、試験時間中は終始撮影されるようにした状態で試験を行った。
不正行為防止のために二重三重の装置も用意された。受験者9人当り1人の監督官が遠隔でモニタリングして不正行為の有無を監視する方式だった。受験者はキット以外には飲み水も机の上に乗せることができず、スマートフォンでは映像とともに音声も転送され、外部の助力者が介入していないかどうかもチェックした。試験を終えた後には問題を解くのに用いたメモ用紙の裏表を撮影した後、送信して事後検証を受けた。不正行為が摘発された場合は無効処理され、5年間受験できない。
受験者が画面を眺める角度と時間を点検する「瞳孔追跡装置」の使用の有無が当初関心を集めたが、サムスン側は「スマートフォンのカメラを通じた側面監視だけを用いた」と明らかにした。サムスン関係者は「極めて一部の受験生の監視プログラムにクラッシュが起きて試験が一時停止した事例があったが、中断した分の追加時間を与えて不利益を被らせることはなかった」とし、「モニタリングを通じて摘発された組織的な不正行為の事例は報告されておらず、問題なく円滑に進められた」と明らかにした。
■受験生の反応は?
試験が行われた後、就活生のカフェ(インターネットのコミュニティー)に投稿された受験生のレビューでは「数理問題が難しかった」などの内容の反応が主だっただけで、受験環境に関連した投稿はほとんどなかった。一部の受験生は、パソコン画面をタッチしてはならず、手の動作範囲もモニターの内側に制限されるなどの条件が慣れずに大変だったとの感想を打ち明けたりした。サムスン関係者は「問題の難易度は例年と特に違わなかったが、初のオンライン試験だった上に、スマートフォンを通じた監視の状況下で行われ、緊張度が高かっただろう」と明らかにした。この関係者はまた「一部の国外の受験者も国内と同じ手続きを経てオンライン試験を受けた」とし、「国外の受験者は(本来なら)韓国に入国しなければならなかったので、利便性が高くなった」と語った。
サムスン側は初めて行われたオンライン公開採用試験が特別な失敗もなしに行われたと見て、今後も非対面方式の長所を活用する計画だ。サムスン側は31日「既存の大規模筆記試験より、社会的費用の縮小や受験者の便宜の側面で効用が高いと判断し、今回の施行結果を分析・補完した後、オンライン非対面の長所を採用分野で多様に活用する案を検討する計画」という立場を明らかにした。