>企業結合「条件付き承認」
消費者物価以上の受信料値上げできず
IPTV加入の誘導・商品転換も禁止
YouTubeなど波及の影響で3年前とは異なり許容
消費者・有料放送の市場変化は
コンテンツ選択の幅が広がる
短期的価格負担は軽減
通信会社体制「メディア・ビックバン」を予告
独占事業者の影響力拡大への懸念も
通信大手企業が放送市場に本格的に参入し、有料放送市場に一大激変を予告している。ネットフリックスやYouTubeなど、グローバル・オンライン動画サービス(OTT)の利用が大幅に増えることを念頭に置き、政府当局が大手通信会社と有料放送会社の合併を承認したためだ。一方、通信と有料放送市場の寡占の流れが固まることへの懸念も出ているが、他方では短期的には大手同士の競争が激しくなり、消費者らのコンテンツ選択の幅は広がると同時に、価格負担は減るという期待感も高まっている。
公正取引委員会は先月6日、全体会議を開き、SKブロードバンド(SKB)とTブロードの合併案件と、LGUプラス(LGU+)とCJハローの合併案を条件付きで承認したと、10日に発表した。2件の合併案はそれぞれ5月と3月に公取委に申告され、これまで公取委は有料放送市場の構造再編をもたらす可能性があるなど、同件の重大性が高いと見て、専担チームを立ち上げて企業結合審査を進めてきた。今回の企業結合は通信事業者と放送事業者間の国内初の合併で、これまで30年以上にわたり、放送と通信はそれぞれの道を歩んでいくうち、技術の発展によって二つの領域の仕切りがほとんどなくなる状況で行われた。
特に、ネットフリックスやYouTubeなどグローバル・コンテンツ会社の成長や国内影響力の拡大も今回の合併に影響を与えた。2016年SKテレコム(SKT)とCJハローの合併を承認しなかった公取委が、今回その判断を覆した背景にはこのような変化がある。公取委側は「革新競争を促進し、放送・通信事業者が急変する技術と環境変化に適時に対応できるよう、両企業結合を承認した」として、こうした脈絡を隠さなかった。今回の合併は、年内に行われる放送通信委員会と科学技術情報通信部の審議が可決されれば、最終的に確定される。
これによって、来年から有料放送市場の勢力図は、従来のIPTVとケーブルテレビの1強4中体制から通信社が主導する3強体制に変わることになる。現在は1位のKTとKTスカイライフが合算占有率31.1%で、圧倒的な優位を占めている。2~6位にSKブロードバンド(14.3%)、CJハロー(12.6%)、Tブロード(9.6%)の順で20%を超えているライバル会社業者がいない。しかし、これからは「LGUプラス+CJハロー」(24.5%)と「SKブロードバンド+Tブロード」(23.9%)の1位(KT+KTスカイライフ)とのシェアの差が6%台に縮まり、有料放送市場は競争が激しくなる見込みだ。シェア競争を繰り広げながら、サービスの品質と価格変化が期待できる市場環境が整えられるわけだ。この過程で、通信と放送分野の投資と雇用が拡大する付随効果も予想される。
しかし、肯定的な要因だけではない。有料放送市場の寡占化現象と通信市場の半分を占めるSKテレコムの支配力が有料放送市場にまで拡大(支配力の転移)する結果につながりかねない。このような寡占化や独占事業者の影響力の拡大は、市場競争を阻害し、消費者の便益を減らす副作用を招く恐れもある。公取委が今回の合併を承認する際、“条件”をつけたのもこのためだ。公取委はこのような副作用を減らすため、2022年まで合併後、ケーブルテレビの受信料引き上げ率が消費者物価上昇率を超えないようにし、ケーブルテレビの全体チャンネル数と消費者に人気のあるチャンネルを任意に減らすことができないようにした。また、高価商品への切り替えの強要や低価格商品の加入者への契約延長の拒否も禁じた。このほか、有料放送市場の派生市場である放送チャンネル伝送権取引市場で現れ得る中小PP(放送チャンネル使用事業者)から受け取る番組使用料や通販送出手数料の引き上げなどの副作用を防ぐための対策は別途設けることにした。
一方、チョ・ソンウク公正取引委員長は今月8日、両合併案の審議結果をマスコミに説明し、「放送・通信事業者に革新のインセンティブを与えるため、(承認)した」と述べたものの、のちにこれを撤回した。革新がもたらす副作用である「市場競争の低下」を制御すべき公取委の役割にふさわしくない発言だったからだ。