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住宅供給と住宅価格安定の間で…再建築市場の「シーソー30年」

登録:2019-09-07 09:35 修正:2019-09-07 10:55
政権によって行ったり来たりの再建築政策 

1987年、住宅関連法の再建築規定を設け 
1990年代、規制緩和で再建築が爆発 
「超高密度」流行のように広がり、住宅価格が急騰 

金大中・盧武鉉政府は「規制」 
金大中政府、小型建設義務化を復活 
「後分譲制・転売禁止、超過利益還収制」 
盧武鉉政府は再建築規制をさらに強化 

李明博・朴槿恵政府は「緩和」 
安全診断の簡素化・後分譲制も廃止 
再建築の許容年限も30年に短縮 
超過利益還収制を猶予し、また延長 

文在寅政府は再び「規制」 
超過利益還収制を復活・分譲価格上限制を実施

上限制の導入で一般分譲価格が下がれば事業性が悪化し、再建築事業が中止になる可能性も高まり、一週間前と比べて雰囲気が様子見の傾向に転じた。写真は先月14日午後、ソウル蚕室の住宅公社5団地//ハンギョレ新聞社

 39億ウォン(約3.6億円)。今年7月の実取引価格で申告されたソウルの盤浦(バンポ)住宅公社1団地の138平方メートル(42坪)の売買価格だ。1坪当たり1億ウォン(約920万円)に近い。最低賃金(月160万3200ウォン=約14万7千円)をもらう労働者は202年分の給料をまるまる貯めれば買える家であり、平均価格が8億ウォン(約7300万円)近いソウルのマンション5戸分に匹敵する。一部の組合員が再建築に反対して訴訟中だが、ここは総事業費が10兆ウォンに上る「建国以来最大の再建築団地」だ。1973年に竣工されたので、今年で46年経ったことになる。古くなるほど価格が下がるのが正常だが、ソウルの江南(カンナム)の再建築マンションだけは例外だ。古いほど高くなる「再建築の逆説」だ。

 再開発と再建築はいずれも古い住居用建物を建て直す都市環境整備事業の一種だが、再開発事業は上下水道、ガス、電気など古い基盤施設も同時に交換するため、再建築よりは公共的な性格が加味される。日増しに地下鉄・広域鉄道など交通施設やサービス施設が集中するソウルの江南の場合、古いアパートを新しく改装するのは再開発ではなく再建築の手続きを踏むことになる。住みやすい江南に容積率を可能な限り高めて建てられる超高層マンションは、莫大な不動資金を持った人々の関心を集中させ、不動産市場を牛耳る威力を発揮する。経済環境によって、また政権の性格によって、再建築の奨励と規制が繰り返されたのもそのためだ。

■20世紀は再建築活況期

 1960年代からソウルに出現した大型マンション団地が古くなってきたことで、再建築問題は徐々に住宅市場の懸案として浮上し始めた。1987年の住宅建設促進法で再建築規定が設けられ、1988年に麻浦(マポ)マンション再建築組合が初めて再建築を推進した。1964年に竣工された麻浦マンションの容積率は87%だったが、再建築推進当時は250%に増えた状態だった。世帯数が増えると、既存の家主たちは一般分譲を通じて建築費を充当でき、建設会社としては宅地を別途用意する負担がなくなった。住宅建設200万戸計画を明らかにした政府としても、ソウル市内に住宅供給を増やすことができるので歓迎できるものだった。再建築産業が出発とともに規制緩和一辺倒で規模を拡大することになったのはこのような背景からだ。

 1992年、マンションの棟と棟の間の離隔距離規定が6メートルから3メートルに大幅に減り、容積率は事実上300%に上方修正された。1995年には、再建築世帯の75%以上を国民住宅(専用面積25.7坪)以下の規模で作り、40%以上を18坪以下で建設しなければならない規定が廃止された。規制が撤廃された1995年、ソウルの再建築物量は1万1357世帯に達した。直前5年間の承認物量(1万2895世帯)に匹敵するほど、再建築が爆発的に増えたのだ。

■金大中の「都整法」、盧武鉉の「超過利益還収」

 超高密度の再建築が流行のように広がると、「住居環境の改善ではなく都市破壊」という批判が起こり、投機の兆しまで感知された。規制緩和にばかり突っ走っていた再建築にブレーキがかかったのは、世紀が変わってからだった。2001年上半期、ソウルのマンション価格が7.74%急騰すると、金大中(キム・デジュン)政府は同年7月、「小型住宅建設義務制」の復活を決定した。ソウル市も再建築の容積率を250%以下に制限すると明らかにした。2002年12月には「都市および住居環境整備法」(都整法)が制定される。再建築を都市計画の一環として編入させ、安全診断程度に止まっていた政府の再建築審査の範囲を広げたのだ。

 ソウル江南の再建築マンションが周辺の不動産価格の上昇をあおるという現象が明らかになり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は、再建築の規制をさらに引き締めた。2003年、再建築マンションの後分譲制を導入し、投機過熱地区での再建築組合員の分譲権転売を禁止した。ソウル市も、20年で一括適用されていた再建築許容年限を、1991年以後に建設されたマンションは40年がたってから再建築が可能になるよう条例を改正し、政府と歩調を合わせた。

 2005年には再建築で増える容積率の25%は必ず賃貸マンションに配分するように都整法が改正された。2006年には「再建築超過利益還収に関する法律」(再建築利益還収法)まで制定し、家主と建設会社が独占する開発利益の一部(「超過利益」が3千万ウォンを超えると、最大50%)を政府が徴収する強気の姿勢を示した。2006年9月25日以降に管理処分認可(移住・撤去・着工直前の段階)を申請した団地から適用されたため、実際に再建築超過利益還収は完成した後入居が終わった2010年10月になって実施された。

■李明博・朴槿恵「再建築規制はなかったことに」

 10年ぶりの政権交代に成功した李明博(イ・ミョンバク)政府は、再建築の規制撤廃に政策方向を完全に変えた。「雇用創出のためには再建築の活性化が必要だ」というのが、建設会社社長出身である李大統領の持論だった。2008年、8・21対策を通じて再建築安全診断を2回から1回に簡素化し、再建築の一般供給分の後分譲規制を廃止した。また、再建築組合員の地位譲渡も可能にした。政権末期の2012年12月には、法律改正を通じて再建築超過利益還収を2年間猶予した。朴槿恵(パク・クネ)政府は2014年、9・1対策で再建築の許容年限を40年から30年へと10年短縮した。2014年12月31日までだった再建築超過利益還収の猶予を、再び3年延長した。李明博・朴槿恵政府において再建築規制緩和は建設景気を浮揚させるための政策手段だった。

■再建築の反撃に「分譲価格上限制」のメス入れ

 再び9年ぶりに政権交替した文在寅(ムン・ジェイン)政府は、2018年1月1日から再建築超過利益還収制を復活させた。李明博・朴槿恵政府が特例の形で5年間法律の適用を停止したため、別途の立法手続きは必要なかった。2018年3月には、再建築安全診断手続きを強化した。構造安全性の項目の比重を高め、竣工して30年が過ぎれば事実上可能だった再建築の要件をより厳しく引き締めた。開発利益が減り再建築の要件が厳しくなったことで、ソウル江南を中心に強い反発が起こったが、住宅価格を抑えるには再建築事業を適切に規制しなければならないというのが文在寅政府の確固たる方針だ。キム・ヒョンミ国土交通部長官が、企画財政部や与党の慎重論にもかかわらず民間宅地の分譲価格上限制を強行したのも、昨年の9・13対策で下方安定傾向を維持していた住宅価格が、今年のソウル江南の再建築事業と同時に上昇傾向に変わったという判断からだった。キム長官は先月13日、ラジオのインタビューで、分譲価格上限制を導入した理由を「国土部の調査の結果、高い分譲価格がソウル江南の再建築団地に集中する需要の原因であり、これが全体の不動産市場の価格上昇を率いていることが確認されたから」と説明した。

 国土部は、都市環境の改善と新規住宅供給という再建築の順機能を認めながらも、住宅市場の安定のために放置してはならないという考えが強い。国土部の高位関係者は「得られる収益が非常に大きいと認識されれば、実際の需要よりは投資目的が多く介入するのが再建築市場だ」とし、「かつて再建築市場が先に市場不況期に動き、一般マンションに拡張される状況を何度も経験したため、良かれ悪しかれ再建築市場は住宅市場のベンチマークだ。再建築市場の価格安定は政府が住宅政策で考慮しなければならない重要な部分だ」と強調した。

キム・テギュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/property/908494.html韓国語原文入力:2019-09-05 09:45
訳C.M

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