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アシアナ航空の有力買収候補が相次いで買収説を否定する理由とは?

登録:2019-05-06 03:16 修正:2019-05-06 07:33
「勝者の呪い」の教訓のためか、「煙幕作戦」か 
SKや韓火、CJ「競争力と相乗効果に疑問」 
済州航空を保有する愛敬だけが「関心を持って検討」 
 
錦湖による大宇建設・大韓通運の買収失敗の教訓 
熊進も資金難…現代自動車も韓電敷地の買収めぐり議論に 
外形の拡大より競争力・事業構造の再編に重点 
買収額の上昇を防ぐための意図的な否定という見通しも
政府が産業競争力の強化に向けた関係長官会議で、アシアナ航空の経営正常化の推進方策などを公開した先月23日、ソウル江西区のアシアナ航空本社//ハンギョレ新聞社

 「勝者の呪い」の教訓のためか、過熱競争を防ぐための「煙幕作戦」なのか。

 5日、アシアナ航空を買収する候補として、SKや韓火、CJ、新世界、愛敬など様々なグループが取り沙汰されているが、これらのグループはほとんど買収説を否定している。なぜだろうか。

 買収金額は最大2兆ウォン(約1910億円)と予想される中、最も資金が豊富とされるのはSKだ。しかし、SK側は「グループレベルで、買収しないことを公式に返答せよという指示があった」とし、積極的に一線を引いた。SKテレコムのパク・ジョンホ社長も買収説を否定した。韓火も「買収は検討していない」と断言した。韓火グループの役員は「免税店事業と相乗効果を強調する報道もあるが、すでに(韓火は免税店事業からの)撤退を発表した」とし、「ロッテカードの買収に参加しなかったことで、資金が確保されているというのも、報道とは異なる」と話した。韓火は公式な企業説明会(IR)を通じて否定する案まで検討しているという。CJも「最初から(買収を検討したことが)全くないのに、メディアが確認もせず記事を書いている」と否定した。

 買収の意思を明らかにしたのは済州航空を保有する愛敬だけだ。愛敬の役員は「関心を持って検討している」と明らかにした。愛敬は、イ・ドンゴル産業銀行会長の最近の発言が、自分に有利に働くものと期待している。イ会長は「買収候補を選定する際、経営における成功の経験とグループ内の相乗効果などを総合的に判断する計画だ」と述べた。

 買収前に距離を置くグループは、口をそろえてアシアナ航空の競争力と相乗効果が低いことを挙げている。SKは「老朽化した飛行機が多く、負債が6兆ウォン(約5700億円)以上(負債比率814%)であり、航空産業の特性上、飛行機事故などリスクのレベルも高い」と説明した。韓火も「航空機エンジンの生産との相乗効果が取り沙汰されているが、制作とサービスは異なる分野であり、アシアナが飛行機を多く購入するとは思えない」とし、「アシアナが大韓航空とLCCとの狭間で苦戦する恐れもある」と話した。最近、買収合併を通じて、未来に向けた成長エンジンの確保に積極的に取り組んでいるCJも、従来の物流事業との相乗効果は大きくないと判断している。CJ側は「アシアナは旅客が中心で、貨物市場におけるシェアが大韓航空より少ない」と評価した。

 これは、買収合併市場に“大物”が出ると、財閥が先を争って参入し、買収価格が跳ね上がっていたかつての状況とは全く異なる。企業は成功的な買収合併を通じて、一気に新たな成長エンジンを確保することができる。SKがハイニックス半導体を買収し、半導体分野で“大当たり”を出したのが代表的な事例だ。しかし、逆に無理な買収でグループ全体が不安定化し、「勝者の呪い」に陥ったケースもある。錦湖が2006~2008年、大宇建設と大韓通運の買収に10兆ウォン(約9500億円)以上を投じたが、流動性危機に陥ったのが代表的な事例だ。熊進も2007年以降、極東建設やセハンなどを相次いで買収したが、結局、会社更生手続きを申請した。企業買収ではないが、現代自動車グループが2014年に韓電の敷地を10兆5500億ウォン(約1兆5400億円)で買収したのは、今にいたるまで論議の的になっている。

 韓火の役員は「創業世代や2世の時には拡張が中心だったが、今は事業成功の可能性や価格の適正性などが重視される」と話した。公正取引委員会も「昨年審査した企業結合件数は、最近10年間で最大規模だったが、企業結合の金額はむしろ2017年より22兆ウォン(約2兆円)減った」とし、「企業が大型買収合併と関連し、過去のように単純な外形の拡大より、核心競争力の確保と事業構造の再編に重点を置いている」と分析した。

 しかし、財界では、有力候補らが完全に手を引いたとは言い切れないと見ている。10大グループのある役員は「過熱競争により、アシアナの買収価格が跳ね上がるのを防ぐための“煙幕作戦”である可能性もある」とし、「実務者が買収について否定的意見を出しても、トップの一言で180度方針が変わるのが現実」だと話した。韓火の役員も「買収説を否定するグループの中では、本物と偽物が混ざっているだろう」と予想した。ロッテなどダークホースが浮上する可能性もある。錦湖アシアナとの売却主幹社のクレディ・スイス証券は最近、売却日程と方向を協議し、早ければ7月から買収意向書を受け付けることにした。買収候補たちの本音は、まもなく明らかになるものとみられる。

クァク・ジョンス記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/892708.html韓国語原文入力:2019-05-05 20:46
訳H.J

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