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ソウルの宗廟前に142メートルのビル建設?…「世界遺産取り消しの可能性も」

登録:2025-11-07 06:50 修正:2025-11-07 07:57
ソウル市が勝訴した最高裁判決に文化財界から懸念の声
宗廟から退渓路一帯の世運再整備促進地区の開発完了後の予想図=ソウル市//ハンギョレ新聞社

 ソウル市が国家遺産庁長と協議せず、文化遺産保護区域外の再開発を規制する条例条項を廃止したことをめぐる裁判で、違法ではないという最高裁判所(大法院)の判断が出た。今回の判決で、ソウル市がユネスコ世界遺産である宗廟(チョンミョ)前の世運(セウン)4区域に、ユネスコや文化財当局との協議もなく高層ビル建設などの再整備計画を進める可能性が高くなったものとみられる。これに対し、文化財界で懸念の声が高まっている。

 最高裁1部(主審・シン・スクヒ最高裁判事)は6日、文化体育観光部長官が「ソウル市文化財保護改正条例案」の議決を無効にしてほしいとし、ソウル市議会を相手に起こした訴訟で、原告の請求を棄却した。

 ソウル市議会は2023年9月、「文化財の半径100メートル以内の歴史・文化・環境保存地域の外でも、文化財に影響を及ぼすことが確実だと認められれば、許認可を再検討しなければならない」という市文化財保護条例第19条第5項を「過度な規制」という理由で削除した。これに対し文体部は同年10月、ソウル市議会が文化財庁長(現国家遺産庁長)と協議せず条例を改正したことは、上位法の「文化遺産の保存および活用に関する法律」(旧文化財保護法)違反だとし、削除の無効を求める訴訟を起こした。最高裁は「文化財保護法と同法施行令で、この事件の条例条項を改正するために国家遺産庁長との協議を経るよう規定しているか、この事件の条例条項と同じ内容(保護区域外開発規制)を必ず設けるよう定めているわけではない」として、ソウル市議会とソウル市に軍配をあげた。

 これに対しソウル市は直ちに歓迎の意を表明した。ソウル市は「歴史文化環境保存地域以外のところに対する規制がなくなり、20年余り滞っててきた世運4区域の再整備事業に弾みが付くことになった」と述べた。今回の判決で、ソウル市が推進中の宗廟前の世運4区域の再開発事業にも拍車がかかる見通しだ。ソウル市は先月30日、鍾路(チョンノ)周辺の高さ制限を55メートルから98.7メートルに、清渓川(チョンゲチョン)周辺は71.9メートルから141.9メートルに上方修正する「世運再整備促進地区および4区域再整備促進計画決定」を告示した。

 一方、文化財界は、今回の判決がこれまで国家遺産庁と地方自治体の間で暗黙的に作動してきた協議関係を事実上破る結果をもたらすと懸念している。条例の改定は、文化遺産周辺の建築・開発の際に外部の近隣領域にも適用された「保存影響の検討」条項を削除する内容であり、これにより地方自治体が一方的に再開発の推進に乗り出す可能性があるということだ。

 最高裁はこのような懸念について「歴史文化環境保存地域の外で行われる建設工事に対して、一律的に文化遺産の保存影響検討義務を課さなくても、文化遺産法第12条により、国家遺産庁長はその建設工事が文化遺産を損ねる懸念などがある時には、建設工事施行者に対して必要な措置を取ることができる」とし、「この事件の条例条項を削除しても文化遺産または歴史文化環境の保護に支障がもたらされるとはみられない」と説明した。

 ソウル市が今回の判決を掲げて、ユネスコ世界遺産の宗廟からわずか180メートルの距離の世運4区に超高層ビル群の建設をユネスコや国家遺産庁との協議なしに推進した場合、世界遺産の保存管理のための協議体系が事実上崩れ、宗廟が危険遺産に指定されるか、登録自体が取り消される最悪の状況まで考えられるという懸念の声があがっている。ホ・ミン国家遺産庁長はこの日、国会予算決算特別委員会で、キム・ジェウォン議員(祖国革新党)の「ソウル市が開発工事を強行した場合、どうなるのか」という質問に「(登録が)取り消される可能性もなくはない」とし、「非常に遺憾だ」と答えた。

 最近、ユネスコなどの国際機関や世界文化遺産学界では、自然文化遺産の保存のため、公式な保護区域のほか周辺の外部領域(ワイドセッティング)まで包括して遺産に実際の影響を及ぼすかどうかを把握し、対応措置を勧告する方向で審議と規制要求を強化する傾向を示している。ユネスコの遺産影響評価がますます重視される世界的な流れを無視して電撃的に公示されたソウル市の世運4区域高層開発案は、最高裁の判決を受けたことで、ともすればソウル市の独走となり、さらに敏感な波紋または破局をもたらしかねないという見方もある。

 これと関連し、振り返るべき国内外の前例がある。ドイツ・ドレスデンのエルベ川渓谷は最悪の事例に挙げられる。この渓谷はルネサンス・バロック時代の都市遺跡と緑地空間が川と調和した自然文化遺産複合地帯で、2004年に世界遺産に登録された。その後、市政府は遺産固有の価値に悪影響を及ぼしうるというユネスコの警告を無視して、川を横切る4車線の橋梁建設を強行し、2009年に初めて世界遺産登録が取り消される不名誉を被った。当時、現地裁判所が橋梁建設をめぐり合法という判決を下したが、世界遺産登録の取り消しを止めることはできなかった。一方、忠清南道公州市(コンジュシ)は数年前、世界遺産の百済公山城(ペクジェ・コンサンソン)近くの錦江(クムガン)に新しい鉄橋の建設を計画した中で、規模や形、デザインまでユネスコの遺産影響評価の審議を受けて確定し、円満に事業を推進した模範事例を残した。

 ソウル市が世界遺産の追加登録を推進中という点も変数だ。ソウル市は2017年に登録が挫折した前歴のある漢陽都城に北漢山城まで加え「朝鮮王朝の首都防衛システム」として2027年にユネスコ世界遺産に登録するという目標を立てた。このような状況で、既存の世界遺産である宗廟の景観に対してユネスコが勧告した影響評価を無視し、世運4区の再開発を強行するのは矛盾に映りうる。文化遺産委員のカン・ドンジン京城大学都市計画学科教授は「漢陽都城の世界遺産登録を推進するソウル市が宗廟の前に超高層ビル群再開発を推進するというのは、二律背反的な動きであり、追加登録に悪影響を及ぼす」と指摘した。

 一方、国家遺産庁はこの日「宗廟が世界遺産の地位を失うことがないよう、関係機関と緊密に意思疎通しながら必要な措置を整えていく計画」だと述べた。

ノ・ヒョンソク、オ・ヨンソ、チャン・スギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1227840.html韓国語原文入力:2025-11-06 22:19
訳H.J

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