服を作る仕事「ファッション」は天然資源とエネルギーを大量に使用する産業だ。学部の衣類学科時代から一貫してファッションを学業としてきたマ・ジンジュの著書『明日の服』によると、ジーンズ1着に7千リットルの水が使用される。毎年1千億着の服が生産され、2.6tトラック1台分が毎秒捨てられて焼却される。世界中の航空輸送や海上輸送の炭素排出量よりもファッションの排出量の方が多い。この時代の服はそれゆえ、プラスチックと変わるところがない。技術とインフラ、大資本が結び付いて巨大産業化しているのだ。
プラスチックに対する解決策のように、服も生産、消費、廃棄を減らさなければならない。しかし、解決策はそれほど単純ではない。プラスチックと同様、服も人類の生活・行動様式と密接に結び付いているからだ。そのため米国のカリフォルニア美術大学(CCA)などでは、すべての在学生に倫理学、環境科学、人類学などを受講させ、ファッションの持続可能性を探求させる。
本書で紹介されている「メイク・ドゥ・アンド・メンド」(作って直して着る)も興味深い。第2次世界大戦時に英国情報部が発行したパンフレットで、戦争期間中にアパレル産業が軍服と軍需品の製造業へと転換したことで衣服が不足したことを受け、政府が服のリサイクル方法を提供したものだ。男性の服を女性の服に変えたり、カーテンをドレスにしたり、古いシーツを下着にしたり。パンフレットは今も再出版されている。
筆者も述べているように、「ファッションはそもそも、持続可能性との共存が難しいという運命を背負っている」が、隙間からくみ出した倫理的な苦悩が強調される。ファッション業界の従事者としての著者の個人的な体験と苦悩が語られていないことが惜しまれる。