地球以外の他の天体における生命体の存在の有無を探求する研究分野を、宇宙生物学と呼ぶ。米国の古生物学者、ジョージ・ゲイロード・シンプソン(1902~1984)は1964年、宇宙生物学について「現時点ではそのテーマの対象が存在することを証明できていない」と酷評した。それから60年が過ぎた現在でも、科学者たちは依然として地球外生命体の存在の有無については正確に分からずにいる。
しかし、その後、宇宙観測と探査技術の発展により、宇宙船が相次いで直接探査できる天体が増え、太陽系外惑星が次から次へ発見され、地球外生命体の発見に対する期待感は徐々に高まっている。今では、宇宙に数多くある天体のどこにも生命体がないのであれば、むしろ驚くべきことだと言っても過言ではないほどになった。
地球外生命体の存在の有無は、人間の存在の根源に対する哲学的な質問にもつながる。地球外生命体の存在が確認されたならば、これは地動説や進化論などに続き、人類に新たな認識の地平を切り開く革命的な事件になるはずだ。
■知的生命体の存在には10人中6人が肯定
宇宙生物学者を含む科学者たちは、はたして宇宙人の存在について、どのような考えを持っているのだろうか。
英国ダラム大学の哲学者が、宇宙生物学者521人と、生物学や物理学など他分野を研究する科学者534人を対象に、2024年2~6月、地球外生命体の存在の可能性に関する電子メールによるアンケート調査を通じて確認した研究結果を、国際学術誌「ネイチャー天文学」に発表した。
研究チームが聞いた質問は3つだ。1つ目は、地球外に基本的な形態以上の生命体が存在する可能性、2つ目はバクテリアよりはるかに大きく複雑な生命体が存在する可能性、3つ目は人間と同等または優れた認知能力を備えた地球外生命体が存在する可能性だ。2つ目と3つ目の質問は宇宙生物学者だけに質問された。
質問の結果、宇宙生物学者の間では、地球外生命体が存在するという確固たる合意または共感があることが明らかになった。宇宙生物学者の86.6%(451人)は、宇宙のどこかに最小限の基本的な形態の生命体が存在する可能性が高いことに同意した。同意しなかった人は2%(10人)に過ぎず、残りの12%(60人)は中立的な意見を表明した。宇宙生物学者ではない科学者たちも、宇宙生物学者と同様に88.4%が地球外生命体の存在に同意した。
宇宙生物学者だけに与えられた質問、すなわち、複雑な形態の地球外生命体や知的な宇宙人の存在については、それぞれ67.4%、58.2%が同意した。より発展した形態の生命体の存在の可能性については肯定的な回答が多かったが、その割合は有意に低下した。この質問に対する回答率も37~38%で低かった。
■科学的な証拠は10点満点で7点
科学における合意は、証拠に基づく場合にのみ意味がある。地球外生命体の存在に対する科学者の合意は、証拠に基づいているのだろうか、あるいは、単なる推測に過ぎないのだろうか。
研究チームは「地球外生命体が存在するという間接的または理論的な証拠は多くある」とし、地球外生命体の存在の可能性を、科学的証拠ではなく推測に基づいたものだと判断している科学者は、中立の意見を表明した12%に過ぎないとみなせると明らかにした。
例えば、太陽系だけについても、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスの地下の海を含め、生命体が生存可能な環境を持っている天体はいくつもある。火星の表面には、遠い昔に水が流れて形成された川と湖、三角州の跡がそのまま残っている。
研究チームはしたがって、視野をさらに広く宇宙に拡大すれば、膨大な数の居住可能な天体があると考えることが合理的だと明らかにした。地球も初めから生命体が存在したわけではなく、生命体が生存可能な環境であれば、生命体の歴史が始まる確率は0ではないということだ。
科学者は現時点で、現在の科学が有する地球外生命体の間接的または理論的証拠がどれほど強力なものと評価しているのだろうか。研究チームが、英国宇宙生物学センターの専門家4人に評価を依頼した結果、4人が付けた証拠の点数は10点満点で7点だった。
研究チームは今後、5年ごとに同じアンケート調査を継続し、科学界の意見がどのように変化するかを追跡する計画だ。
*論文情報
Surveys of the scientific community on the existence of extraterrestrial life.
Nat Astron (2025).
doi.org/10.1038/s41550-024-02451-0