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最も近くから見た水星…初の165キロの近接撮影

登録:2024-09-20 07:49 修正:2024-09-20 10:30
クァク・ノピルの未来の窓 
ベピコロンボ、史上最接近で飛行 
2026年11月に水星の公転軌道に進入
ベピコロンボ探査機が9月4日に水星に最接近したときに撮影した写真。撮影時の水星との距離は177キロメートルだった=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 欧州と日本が共同で取り組んでいる水星探査計画「ベピコロンボ」の探査機から、史上最も近くから撮影した水星の写真が送られてきた。

 欧州宇宙局(ESA)は、ベピコロンボ探査機が4日(韓国時間5日)に太陽に最も近い惑星である水星から165キロメートルの距離まで近接飛行し、128枚の写真を撮影したことを明らかにした。

 今回の飛行は計6回予定されている近接飛行の4回目。ESAの飛行力学チームが宇宙船の経路を調整したため、本来の計画より水星にさらに35キロメートル接近した。

 フライバイ(スイングバイ)と呼ばれるこの近接飛行を行う目的は、水星の軌道の進入に先立ち、水星の重力を利用して飛行スピードを下げ、宇宙船の太陽公転周期を水星に近くなるように合わせるためだ。

 今回の飛行でベピコロンボ探査機は、初めて水星の南極地域を近接撮影した。ESAは「宇宙船が水星の軌道に進入した後には、このような位置と角度で水星を観測する機会はない」と明らかにした。

水星の赤道付近のビバルディ・クレーター。ベピコロンボ探査機が水星から355キロメートル離れた地点から取った写真。左側の下が北極になる=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■水星独特の二重リング状の衝突盆地

 探査機はこの日、水星の夜に該当する地域から水星に近づき、3台の宇宙船モニタリング用カメラ(M-CAM)で水星をそれぞれ別の角度から撮影した。

 探査機は最接近の距離を通過し、4分後に水星独特の「ピーク・リング(peak ring)盆地」を相次いで撮影した。小惑星や彗星の衝突によって形成された二重リングのかたちのこの盆地は直径が約130~330キロメートルで、平たい底に輪形の峰が突き出ていることから付けられた名前だ。

 最初に撮影されたのはビバルディ・クレーターで、直径は210キロメートルと推定される。探査機が日の出のころに近付いたため、地形が鮮明にあらわれた。リングに若干のきずが生じているが、これは溶岩がクレーターの内側に流れていったためだとみられると、ESAは明らかにした。

ベピコロンボ探査機が撮影した水星のストッダート・クレーター。水星から約555キロメートルの距離のときに撮った写真=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 数分後には、幅155キロメートルの新たなピークリング盆地を捉えた。ESAの科学者らは、この盆地にストッダート・クレーターという名前を付けた。ストッダートは花の絵で有名なニュージーランドの画家マーガレット・オルログ・ストッダート(1865~1934)から取られた名前だ。

 二重リングの形のピークリング盆地がどのように形成されたのかについては、今もベールに包まれている。科学者らは小惑星や彗星との衝突過程で何らかの反発力が作用した結果だと推定している。

 水星にあるピークリング盆地の相当数には、火山の溶岩が流れた跡がある。ビバルディとストッダートにもそのような跡がある。

ベピコロンボ探査機が最近接飛行を終えた後、水星から遠ざかって3459キロメートル離れた地点で撮影した写真=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 ベピコロンボ探査機の次の水星近接飛行は、2024年12月1日、2025年1月8日にそれぞれ予定されている。

 探査機はこれを通じてさらにスピードを下げ、2026年11月に水星軌道に進入した後、2027年から本格的な探査活動を行う。探査機の推進機の問題で、軌道投入の時期は当初の計画より11カ月延期された。

 ベピコロンボは、ESAの「水星表面探査機」(MPO)と日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「水星磁気圏探査機」(MMO)の2つの探査機で構成されている。水星の軌道に進入すると2つの探査機は分離し、高度480~1500キロメートルの楕円軌道を回り、それぞれ1年ほどの間、独立して水星探査を行う。

水星に向かって飛んでいるベピコロンボ探査機を描写した図=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■水星探査機を送ることが難しい理由

 水星は地球の直径の約3分の1の大きさで、平均5800万キロメートルの距離で太陽を公転する。太陽を2回公転する間に3回自転する。

 ベピコロンボの基本任務は、水星の表面を撮影して磁場を分析することだ。水星の巨大な核を形成している鉄成分も分析する。水星は全体の64%が鉄によって構成されている。

 水星が核が大きく地殻が薄い惑星になったのは、巨大な天体が水星と衝突してマントルの大部分を飛ばしてしまったためだと、科学者らは推定している。

 水星は太陽系惑星のなかでは太陽の重力の影響を最も強く受けるため、公転速度も秒速47キロメートルで、地球の1.5倍の速さだ。また、地表温度が昼間には400度、夜にはマイナス170度となり変化が激しく、宇宙船が水星の軌道に安定的に進入し、着陸することは容易ではない。そのため、これまで宇宙探査では後回しにされていた。

 2018年10月に地球を出発したベピコロンボ探査機は、1970年代の米国のマリナー10号、2000年代の米国のメッセンジャーに続く3番目の水星探査機だ。

 米国ジョージア工科大学のユン・ボグォン研究員(物理学)は、地球との距離がはるかに遠い木星や土星に比べ水星軌道船が遅れたのには、3つのハードルがあったためだと語る。

 1つ目は、太陽に最も近い惑星である水星を探査するためには、太陽の放射熱と太陽風から探査機を保護する装備が必要だという点だ。2つ目は、それによって探査機の重量がより大きくなるため、発射体もさらに強力でなければならないという点だ。3つ目は、水星の周囲を回る軌道に進入するためには、反動エンジンで減速しなければならないが、減速しなければならない速度が非常に大きいという点だ。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1158774.html韓国語原文入力:2024-09-19 22:10
訳M.S

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