10月10日、ソウルの高尺(コチョク)スカイドームで開かれた2023KBOリーグのサムスン・ライオンズとキウム・ヒーローズの試合。観客席には、サンフランシスコ・ジャイアンツのゼネラルマネージャーであるピート・プティラ氏がいた。シーズン後の米国行きを宣言したイ・ジョンフ(25)のキウム・ヒーローズでの最後の試合を観るために来たのだった。イ・ジョンフは足首の手術後のリハビリ中であるため、1打席しか立たなかったが、それだけで十分だったようだ。サンフランシスコはイ・ジョンフに積極的に求愛し、ついにイ・ジョンフを獲得した。
「ニューヨーク・ポスト」や「ジ・アスレチック」などの米国現地メディアは13日(韓国時間)、消息筋の話を引用し「イ・ジョンフはサンフランシスコに行く。契約規模は4年後のオプトアウト条項を含む6年1億1300万ドル(年平均1883万ドル)」だと報じた。イ・ジョンフは、今シーズンに先立ちメジャーリーグ進出を宣言し、シーズン後のポスティング(非公開競争入札)を申請した。来年1月4日までメジャーリーグの全球団と交渉可能だった。メディカルテストなどが残っているため、サンフランシスコ球団とイ・ジョンフ側は、13日午後の時点では公式の発表を行っていない。
契約総額だけをみると、ポスティングを通じてメジャーリーグに進出したアジア出身の野手のなかでは最高額だ。これまでは、2022年にボストン・レッドソックスと5年9000万ドル(年平均1800万ドル)で契約した日本人外野手の吉田正尚が最高額だった。投手まで含めれば、2014年にニューヨーク・ヤンキースと7年1億5500万ドルで契約した田中将大に次いで多い。韓国選手をみると、リュ・ヒョンジン(2013年LAドジャース、6年3600万ドル)とキム・ハソン(2021年サンディエゴ・パドレス4年2800万ドル)の契約を軽く越える。SPOTVのイ・チャンソプ解説委員は「契約規模でみれば、サンフランシスコがシーズン序盤に、リーグへの適応の有無に関係なく、無条件でイ・ジョンフを主力外野手として使おうとしているようだ」と明らかにした。
「風の息子」ことLGツインズのイ・ジョンボム元コーチの息子であるイ・ジョンフは、2022年に親子そろって初めてKBOリーグの最優秀選手(MVP)に選ばれるなど、7シーズンで打率0.340、出塁率0.407、長打率0.491、65ホームラン、515打点、69盗塁、581得点を記録した。バットコントロール能力に優れており、三振が少ないことが最大の長所だ。イ・ジョンフは、7シーズンでの3947打席のうち三振は383回だけだった。ESPNは「サンフランシスコは、25歳のイ・ジョンフがメジャーリーグのオールスターに選抜されるほどの才能を持っていると評価している。サンフランシスコが書く最上のシナリオは、大リーグ進出後に2シーズン苦戦し3年目の今年になって浮上したキム・ハソンとは違い、イ・ジョンフがすぐに大リーグに適応して、平均以上の出塁率と0.300に近い打率を得ること」だと報じた。
現在のサンフランシスコには、主力として確実に前面に出せるほどの中堅手がいない。今シーズンは、ルイス・マトスがチーム内で最多の76試合に中堅手として出場したが、打率0.250、2ホームラン、14打点で終わった。サンフランシスコのボブ・メルビン監督がシーズン後に「中堅手が必要だ」と語ったのはそのためだ。ロサンゼルス・ドジャースやサンディエゴなどとともにナショナルリーグ西地区に属するサンフランシスコは、2年連続でポストシーズン進出に失敗(今シーズンは地区4位)し、戦力補強が必要な状況にあった。大谷翔平が最近ドジャースと契約し、イ・ジョンフはキム・ハソンや大谷とともに打席で対決する見通しだ。
カン・ジョンホ(引退)、パク・ビョンホ(KTウィズ)、キム・ハソンに続き、イ・ジョンホまでポスティングシステムでメジャーリーグに進出したキウム・ヒーローズは、多額の移籍料を得ることになった。韓米選手契約協定によって、ヒーローズは1882万5000ドル(約27億円)程を補償金として受け取ると予想される。2018年にポスティングシステムが改正され、リュ・ヒョンジン(2573万7737.33ドル)までは得られないが、それでも韓国の野手では最高額だ。ヒーローズはこれに先立ち、カン・ジョンホ(500万2015ドル)、パク・ビョンホ(1285万ドル)、キム・ハソン(552万5000ドル)を大リーグに送り出し、合計で2337万7015ドルの補償金を得た。イ・ジョンフまで含めれば、累積額は4220万2015ドル(約60億円)に達する。
ヒーローズの場合、内野手のキム・ヘソンもまた、来シーズン後のメジャーリーグ進出を宣言している状況だ。イ・ジョンフがヒーローズに残す最大の遺産は、かつてカン・ジョンホ、パク・ビョンホ、キム・ハソンがそうだったように、「夢」であるということだ。