本文に移動
全体  > 文化

小食は禁煙に匹敵する効果…老化を遅らせる証拠見つけた

登録:2023-04-01 01:03 修正:2023-04-01 09:29
老化の指標である「DNAメチル化」の進行を抑制 
カロリー摂取を2年間25%減らしたら 
老化速度が2%鈍化…禁煙に匹敵する効果 
動物ではなく人間を対象にした実験書の初めて確認
2年間カロリー摂取量を25%減らした食事を持続的に実践した結果、老化のスピードが2~3%遅くなった=ピクサーベイより//ハンギョレ新聞社

 少なく食べること、すなわち小食が健康な成人の老化を遅らせるという生物学的証拠が発見された。

 米国コロンビア大学コロンビア老化センターの研究陣は、長期間にわたる食事実験を通じて、カロリーを制限した食事が老化指標の一つであるDNAメチル化を抑制するということを明らかにし、国際学術誌「ネイチャー・エイジング」に発表した。

 これによると、2年間カロリー摂取を25%減らした食事を取り続けた結果、老化のスピードが2~3%遅くなった。研究陣は「老化を2%鈍化させるのは死亡のリスクを15%減らすことに該当するもので、これは禁煙に匹敵する効果」だと説明した。

 小食が老化を遅らせ、健康寿命を延ばすという研究は以前にもいくつか発表されたが、動物実験ではなく人間を対象にこれを確認したのは今回が初めてだと研究陣は明らかにした。筆頭著者のダニエル・ベルスキー教授は「ミミズ、ネズミ、ハエでは、カロリー制限が老化の生物学的過程を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があった」としたうえで、「今回の研究の目標は人間を対象にこれを確認することだった」と話した。

 今回の研究は、「カロリー制限が健康寿命を延ばす」という仮説を検証するために米国立衛生研究所(NIH)が進める「カロリー摂取減少の長期的な効果に関する総合評価」(CALERIE)の第2段階だ。

 第1段階の研究はイェール大学研究陣が担当し、昨年2月、国際学術誌「サイエンス」に発表した。これによると、カロリー制限は様々な代謝や免疫反応を起こし、健康寿命を延ばすことが分かった。研究陣は「カロリー制限がミトコンドリアのエネルギー生産と身体の抗炎症反応などを促進する方向で脂肪細胞に影響を及ぼした結果」だと説明した。同研究では、2年間カロリー摂取量を14%(1日当たりマフィン1個分)減らした。

第1段階の研究では、小食が脂肪細胞を通じて免疫反応を促すことが分かった=ピクサーベイ//ハンギョレ新聞社

遺伝子の発現を抑制する「メチル化」

 コロンビア大学の研究陣による第2段階の研究では、普通体重または過体重気味(BMI22.0~27.9)の成人男女220人を無作為に2つのグループに分け、一般食とカロリーを25%減らした制限食をそれぞれ提供した。研究陣は実験開始前と実験から12カ月および24カ月後に実験参加者から血液を採取し、血中白血球から抽出したDNAのメチル化を分析することで、カロリー制限食が老化のスピードを遅らせたことを確認した。

 DNAメチル化とは、DNAにメチル基がくっついた状態をいう。メチル基は後性遺伝(エピジェネティック)物質の一つで、DNA塩基部に取りつき、遺伝子の発現を抑制する役割を果たすため、老化の程度を測定する指標として使われる。これを後性遺伝物質とみる理由は、先天的に生まれつきの塩基配列そのものを変えないまま遺伝子の発現を制御するためだ。DNAメチル化が「後性遺伝時計」と呼ばれる所以でもある。

DNAメチル化は自動車のスピードメーター

 研究陣は1次分析でDNAメチル化の3つの指標に焦点を合わせた。

 二つの指標、すなわちフェノエイジ(PhenoAge)とグリムエイジ(GrimAge)は生物学的年齢または暦年齢を推定する指標だ。自動車で言えばオドメーター(積算走行距離計)に例えられる。二つの指標は特定時点での死亡リスクを予測するために開発された指標だ。

 もう一つは老化のスピード、すなわちメチル化程度を測定するダニーデンペース(DunedinPACE:Pace of Aging、Computed from the Epigenome、エピゲノムから計算した加齢のペース)で、自動車で言えばスピードメーターに当たる。ダニーデンペースはデューク大学とオタゴ大学の研究陣が開発したアルゴリズムだ。ニュージーランドのダニーデンで生まれた1千人を20年間追跡観察して得た19個の生体指標の変化率をDNAメチル化程度と結び付け、老化のスピードの測定指標とした。

 分析の結果、ダニーデンペースの値は2~3%低くなったが、他の2つの後性遺伝時計にはカロリー制限の影響は現れなかった。共同筆頭著者のカレン・ライアン博士は「このような違いは、ダニーデンペースのような動的な『老化のスピード』の測定の方が、静的な『生物学的年齢』の測定よりカロリー制限効果により敏感だということを示唆する」と語った。

 ライアン博士は「今回の研究は、カロリー制限が人の老化を遅らせるという証拠を発見したという点で重要だ」とし、「この研究で、ファスティングのような食事調節法でどんな効果が現れるかを推定できるだろう」と語った。

 研究陣は実験参加者に対する後続調査を通じて、カロリー制限が長期的に老後の健康にどのような影響を及ぼすかを調べる計画だ。従来の研究では、ダニーデンペース値が低くなると心臓病、脳卒中、認知症のリスクが減ることが明らかになっている。研究陣はまた、実験期間中に現れたカロリー制限の効果が老化関連の慢性疾患の減少につながったのかも調べる計画だ。

*論文情報

https://doi.org/10.1038/s43587-022-00357-y

Effect of long-term caloric restriction on DNA methylation measures of biological aging in healthy adults from the CALERIE trial

Nature Aging

DOI: 10.1126/science.abg7292

Caloric restriction in humans reveals immunometabolic regulators of health span

SCIENCE

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1085997.html韓国語原文入力:2023-03-31 22:16
訳H.J

関連記事