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[レビュー]コロナ以降にやってくる米中新冷戦時代

登録:2021-03-13 07:05 修正:2021-03-13 10:40
2月9日、米空母「セオドア・ルーズベルト」と「ニミッツ」が南シナ海で合同訓練を行う様子=米海軍提供//ハンギョレ新聞社
『ムン・ジョンインの未来シナリオ:新型コロナ、米中新冷戦、韓国の選択』//ハンギョレ新聞社

 『ムン・ジョンインの未来シナリオ:新型コロナ、米中新冷戦、韓国の選択』 
ムン・ジョンイン著/チョンリム出版・1万7000ウォン

 韓国は新型コロナパンデミックとの戦いで善戦してきた。伝染病による経済的打撃も他国に比べて少なかった。しかし、パンデミックはあまりにも多くのことを変えてしまった。何より韓国は米中両大国の影響から自由ではないが、新型コロナで両大国の対決はさらに激化するものとみられる。政治的にも経済的にも韓国の立場は狭まる危機にある。

 理論と実務を兼ね備えたと評価される国際政治学者のムン・ジョンイン延世大学名誉教授は、著書『ムン・ジョンインの未来シナリオ』で、「国家単位の軍事的な安全保障に重点を置いた従来の安全保障概念から、世界レベルの人間の安全保障が新たなアジェンダに浮上し、コロナ禍が引き起こした経済的恐慌事態が1930年代のように世界大戦につながるのではないかという懸念」が高まっていると診断する。「自国優先主義がはびこって国際リーダーシップと協調が失踪」した場面も目撃されている。「1990年代初め以降、国際社会の支配的な言説として君臨してきたグローバル化パラダイムの終焉を示唆している」とムン教授は指摘する。

 ムン教授は現実主義や自由主義、構成主義(社会構成主義)の主要国際政治理論をあまねく取り上げ、コロナ禍で露呈した現実の国際政治における5つの主な盲点を示す。ウイルスの変則性に対応しきれない現実主義的安全保障の概念の適実さ、既存の人間中心の戦争と平和に新しい媒介変数として登場した自然要素、人種問題と文明衝突の蓋然性、消え失せた国際リーダーシップ、グローバル化の終焉だ。

 これを基に、ムン教授は国際秩序の5つの未来シナリオを提示する。まず米国と中国の間の緩い非対称二極体制が維持される「現状維持」、そして自給自足的経済体制と閉鎖社会に転換する「城郭都市と新しい中世」、覇権主義の終末と国連・多国間主義を通じて世界平和が到来する「パックス・ユニバーサリス」、世界警察の地位を取り戻した米国中心の単極体制である「パックス・アメリカーナII」、世界経済回復を元に中国が中心となる「パックス・シニカ」がそれにあたる。最も望ましいのはパックス・ユニバーサリスだが、実現の可能性が非常に低く、最悪は城郭都市と新しい中世である。ムン教授は近い将来、米国と中国の一方が勝機をつかむことは難しく、コロナ禍で米中対決が深刻化し、現状維持が悪化する現象がニューノーマルになると見通した。

 同書の目的であり結論でもあるが、最も重要なのは韓国の戦略的選択だ。ムン教授が提示する選択肢は5つだ。米国との同盟強化を通じて中国の浮上を牽制する▽浮上する中国に便乗する▽両国の影響力から抜け出して独り立ちする▽米国と中国の間で現状維持に徹する▽米中の陣営外交から抜け出して超越的な外交に乗り出す、などだ。何より同書の醍醐味は2部の4~9章と言える。5つの戦略的選択肢を検討する主な基準が提示されるが、ここに米中新冷戦の様相に対する細かな洞察が盛り込まれている。米中の競争を「新冷戦」と規定し、二つの大国の間で繰り広げられる競争と対決を地政学や地経学、技術民族主義、理念およびソフトパワーを基準に分析する。「進歩的現実主義者」としての顔を改めて確認できる。

キム・ジンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/986500.html韓国語原文入力:2021-03-1209:42
訳H.J

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