本文に移動
全体  > 文化

[書評]民族主義たち-韓国の民族主義の展開と特性

登録:2019-07-29 06:18 修正:2019-08-04 21:36
チョン・ジェホ作/イマジン・1万6000ウォン//ハンギョレ新聞社

 外部の刺激により内部は結集する。日本の輸出規制に触発された今の反日感情も、やはり同じである。日本製品の不買運動から日本旅行予約のキャンセル、自発的な日本糾弾ろうそく集会まで、時間の経過とともにその熱気が盛り上がる様相である。一連の動きが下から組織された自発的大衆運動の形態を帯びている点も特徴である。

 状況がこのように展開したのは、その相手が日本という点が重要に作用した。日本は北朝鮮と共に「韓国の民族主義」を動かしてきた二大駆動軸だからである。韓国の民族主義は、外勢(主に日本)の刺激に応じて胎動し、植民地支配と分断、戦争を経て分化した。政治学者のチョン・ジェホが書いた「民族主義たち」は、この過程を体系的に整理した「韓国の民族主義の系譜学」である。理念・議論の分岐点を整理することに留まらず、誕生と発展、分化過程に絡む権力の作動機構を一緒に分析するという点で、この本の系譜学は多分に「フーコー的」である。

27日夕方、596団体が集まった「安倍糾弾市民行動」が準備した「歴史歪曲、経済侵略、平和を脅かす安倍政権糾弾第2回ろうそく文化祭」がソウルの光化門広場で開かれた=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 この本が把握した韓国の民族主義は、国権が危ぶまれた状況で登場しただけに、自由主義と結合した西欧の「市民的民族主義」とは異なり、初めから国家主義的性格を強く帯びた。この過程で重要な役目を果たしたのが、20世紀初頭の知識人である。彼らは「中国の歴史の代わりに『朝鮮史』を構成して、外勢を退けた人物を『民族英雄』として発明し、ハングルを『民族言語』として定着させ国土に対する関心を喚起し、言論媒体の発行と教育を通じて民族アイデンティティを強調」した。その結果、20世紀初めに至り「民族の始祖としての檀君と、血統的同質性に基づいた『単一民族』意識が確立」されたと言うのが著者の診断である。

 重要なのはそれ以後だ。植民地支配と分断、戦争と戦後復旧、経済開発と世界化の時期を経て、韓国(大韓民国)の民族主義も亀裂・分化する姿を見せたためである。国権の喪失と日本の支配は、朝鮮人が自分を「日本民族と区別される朝鮮民族」として認識させるようにしたが、この過程で民族の「種族的要素」(言語・文化・宗教など)が「市民的・政治的要素」(民族構成員という主観的意志)を圧倒するようになった。しかし、戦争を経験して分断体制が強固化すると、種族的民族概念は弱化して政治的民族概念が浮上した。特に1960~70年代の急速な経済成長は「大韓民国」に対する肯定的認識を吹き入れ、それが国家に対する忠誠心と政治的アイデンティティを強化することにより、「反共に基づいた大韓民国の発展」が韓国の民族主義の核心議論として浮び上がるようになったとこの本は記述する。

 この本は、ベネディクト・アンダーソン、アーネスト・ゲルナー、エリック・ホブズボームの見解に従い、民族主義を「政治的単位と民族的単位が一致しなければならないという原則を基礎として、民族の統合と発展、自負心の高揚を志向する理念、運動、議論」と定義する。しかし、著者がさらに重要として踏み込む点は「民族主義は独立や発展という志向性を持つのみで、その目的を達成する具体的方法は欠如」しているという事実である。したがって民族主義は、その「方法」を持つ他の理念と結合するという点で「二次的イデオロギー」の性格を帯びると言うのが、著者の考えである。民族主義が結合する他の理念は、自由主義であったり、社会主義であったり、反共国家主義であったりもする。本の題目が「民族主義たち」である理由だ。

 この本に収められたもう一つのメッセージは、民族主義に対する「規範的」理解から抜け出すことである。複数の民族主義の議論が存在できるだけに、特定の目標と結合した議論だけを民族主義と定義するのは、民族主義の複数性を見逃す「間違った」認識ということである。統一に微温的であるとか日本に敵対的でないからと言って、相手にむやみに「反民族」「親日」の烙印を押してはならないという話だ。

イ・セヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/903442.html韓国語原文入力:2019-07-26 06:01
訳M.S

関連記事