韓国大衆音楽学会(会長・キム・チャンナム聖公会大学教授)が8日、ソウル清渓川路(チョンゲチョンロ)のCKL企業支援センターで開いた第24回定期学術大会には、ひときわ多くの人が集まった。旅行用スーツケースを引いてきた外国人も目立った。この日の企画セッションのテーマが「BTSシンドロームの現在と展望」だったからだ。「伝統音楽の大衆性、あるいはその可能性」、「大衆音楽とジェンダー」などのテーマを取り上げてきた学術大会で、特定アイドルグループを前面に出したのは異例のことだ。防弾少年団(BTS)が学界でも研究対象になるほど重要な現象になったという傍証だ。
韓国ジョージメイソン大学のイ・ギュタク教授は、「BTSの成功を通じてみた音楽産業のイシュー」という発表を通じて「防弾少年団はデビュー初期の2013~2014年までは国内での反応は大きくなかった。中小企画会社の所属グループの限界のためだったが、海外市場で懸命に努力し、国内よりもよい反応を得た。今年5月、ビルボード・アルバムチャート1位となり、メディアと大衆を驚かせたが、これは突然のことではなく、2015年から着実に積み上げてきた成果だ」と説明した。
彼は、防弾少年団の成功要因として、ユーチューブ、V Live、SNSなどの效率的な活用、欧米人たちが聞き慣れていながらも異国的な要素を結合した音楽とパフォーマンス、ファンとの直接的な疎通などを挙げた。特に、初期から忠誠度の高いグローバル・ファンダムの確保に成功したことで、PSYの「江南スタイル」の一発成功例とは異なり、持続性を持つようになったと強調した。「防弾少年団は『ファンの皆さん』ではなく『A.R.M.Y(ファンクラブ名)の皆さんに感謝しています』という。不特定多数ではなく、『われわれを支持してアルバムを買ってくれるあなた』を指して連帯感を強化する。こうしたファンは少数でも強力な行動力を発揮し、デジタル中心に多角化した音楽市場で大きな力として作用している」と分析した。
延世大学のキム・ジョンウォン講師も「BTSトライアングル:防弾少年団、A.R.M.Y、ビックヒットの間の権力構図と葛藤を中心に」という発表を通じて、防弾少年団とファンダムの関係に注目した。彼は「防弾少年団が昨年5月のビルボード授賞式で、A.R.M.Yを一番前に掲げた受賞の感想発言が興味深かった。防弾少年団は常にA.R.M.Yについて言及する」と語った。
彼は、防弾少年団、所属会社のビックヒットエンターテインメント、A.R.M.Yが垂直的ではなく、相互に影響を与え合う水平的な関係だという点を強調した。「2016年の江南駅殺人事件以後、女性嫌悪問題が浮上し、20代女性のA.R.M.Yが防弾少年団の歌の歌詞の一部に対して女性嫌悪として問題を提起した。防弾少年団と所属会社は1カ月以上沈黙し、メディア報道後になってようやく謝罪した。しかし、9月に右翼・女性嫌悪性向の作詞家とコラボするという発表にA.R.M.Yの反発が激しくなると、今回は直ちにコラボを取り消して謝罪した。ファンの影響力が大きくなったのだ」と彼は説明した。続いて「最近、光復節(日本植民地支配からの解放記念日)のTシャツ、ナチスのマークの帽子をめぐる論争の時、企画会社は謝罪し、ファンたちは日本軍慰安婦被害者と原爆被害者に寄付をするなど、良い協力関係を示した。防弾少年団・ビッグヒット・A.R.M.Yの関係を見るとき、生産者・消費者や、スター・所属会社・ファンという関係だけで見るのではなく、各自の役割を果たし、時には助け合い、時にはけん制する構図に注目すべきだ」と強調した。
続いて行われた討論は「防弾少年団の成功をKポップの成功と見ることができるか」をめぐり集中的に行われた。イ・ギュタク教授は「これまでのKポップアイドルや音楽関係者らの努力がなかったら、防弾少年団がここまで大きく成功することは難しかっただろう。ただ、今の防弾少年団はKポップの枠を超えているようだ」と語った。「アイドロジー」のミミョ編集長は「海外のファンたちは、美しく華麗な群舞を武器にしたKポップを好みながらも、このために幼い時から猛訓練をするなど人権問題を知ってからは良く思っていなかったが、それを覆したチームが防弾少年団だ。防弾少年団がKポップのアンチテーゼに近いと見る理由だ」と述べた。ソウル大学のホン・ソッキョン教授は「(Kポップの)Kにだけ重点を置くのは正しくない。韓流自体が日本、中国など東アジアの場で形成されたのだ。防弾少年団の歌『IDOL』には、国楽だけでなくアフリカの要素もある。限定して見てはならない」と主張した。