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[書評]朴槿恵そのものがシンボル操作だった

登録:2016-12-23 01:34 修正:2016-12-25 07:55
チェ・スンシル-朴槿惠ゲート分析した4冊 
カン・ジュンマン「権力中毒の儀典大統領」 
チョン・ヨオク「チェ・スンシルプロダクションのアイドル」
左から『朴槿恵の権力中毒-“儀典大統領”の災い』(カン・ジュンマン著/人物と思想社)、『傲慢と無能-グッドバイ、朴の国』(チョン・ヨオク著/読書光)、『朴槿恵の言葉』(チェ・ジョンヒ著/ワンダーボックス)、『朴槿恵崩れる』(チョン・チョルウン著/メディチ)//ハンギョレ新聞社

 私たちは皆、朴槿恵(パク・クネ)について知りたいと思っている。チェ・スンシルの国政壟断が明らかになればなるほど、朴槿恵は“操り人形”と“王女”そして“独裁者”の間を右往左往する。みんな彼女から自分が見たいところだけを見出してきた。「指導者は俳優の役割さえうまくできればいいんだ。大統領はシステムに組み込めば、何とか機能するようになっています」。朴槿恵を大統領の座に押し上げたという大物重鎮議員の言葉だ。結局、自分たちの筋書き通りになるという自信がうかがえる。「チェ・スンシル(の存在)を知らなかった」という親朴の言い分は、「朴槿恵が操り人形になってくれると思っていた」と告白するようなものだ。結局、朴槿恵を知らなかったということだ。『朴槿恵の権力中毒』(カン・ジュンマン)、『朴槿恵崩れる』(チョン・チョルウン)、『朴槿恵の言葉』(チェ・ジョンヒ)、『傲慢と無能』(チョン・ヨオク)など、朴槿恵を取り上げた本が相次いで出版されている。大統領が国をいかに私有化したかを知りたいと思う人たちのための分析だ。

朴槿恵大統領を分析したカン・ジュンマン全北大学社会科学部新聞放送学科教授(左)とチョン・ヨオク元議員=カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 カン・ジュンマン全北大学教授(新聞放送学)は『朴槿恵の権力中毒』で、朴槿恵が「権力行使を通じて何をするのかという独自の議題とビジョンを持たず、権力の行使自体に意味」を置いたとして、外見資本を含めた優れた儀典能力で支持層を魅了した「儀典大統領」と命名した。「異性やみだらなことは考えたことすらなさそうな純粋に対する熱望や凶弾に両親を失ったか弱い女性に対する保護本能、歳を取ってもきれいで乱れることのない容姿に対する驚異感のようなものだ」。朴正煕(パク・チョンヒ)の七光りを纏って、陸英修(ユク・ヨンス、朴正煕元大統領夫人)の衣装を身に着けた朴槿恵は、自身が“シンボル操作”だった。「白玉注射」「プラセンタ注射」が登場する医療スキャンダルも、セウォル号事故が起きた日まで念入りにセットしたヘアスタイルも、「儀典資本」を守るためものだ。

 “シンボル”の実体を暴くことはタブーとされてきた。 「レーザー光線」に狙われるのはさておいて、大衆からもひどい目にあった。「朴槿恵は、朴正煕大統領のお嬢さんで高嶺の花のような政治家なんです。そんなに毒舌を浴びせたら浅はかな人に見えますよ」。ハンナラ党のスポークスマンとして当時朴代表の側近だったが、後に“裏切りのアイコン”となったチョン・ヨオク元議員が受けた非難の一つだ。彼女は『傲慢と無能』で、朴槿恵を「チェ・スンシルプロダクションのアイドル」と表現した。市場を訪れて拍手を受けることは好きだったが、学生たちの質問には(うまく答えられず)途方に暮れていたという。全国からおびただしい贈り物が届いた時は「ハウスキーパー」(家庭管理士)に消費期限が過ぎた牛肉をあげたこともあった。「侍女チェ・スンシル」に翻弄された「可憐な王女」ではなく、父から「権力意志」だけを譲り受けた、儀典を享受していたという暴露だ。

 ビジョンとコンテンツのない大統領は、何に向かって進んだのだろうか? カン・ジュンマン教授は、朴槿恵の「デフォルト値」(設定値)として権力中毒、父親、チェ・スンシルの三軸を挙げる。チェ・スンシルは朴槿惠政権の「未来」、「文化」、「創造」を担当した。朴槿恵氏が政治に入門する前に書いた日記を含めて、政治家として行った発言を分析した『朴槿恵の言葉』を見ると、この設定値と「権力の私有化」の糸口がすでに彼女の普段の言い方にあったことがわかる。著者のチェ・ジョンヒ氏は、朴大統領の言語習慣にチェ・テミンが及ぼした影響力などを分析した原稿を今年6月に脱稿した状態だったが、チェ・スンシルによる国政壟断が明るみになったことを受け、悩んだ末に新しい章を書き加えることなく、草稿の大きな枠組みをそのまま維持したという。それでも高尚かつ上品で(decent)、塵外孤標というその特有の“イメージ”とは裏腹に、俗物的な言葉を以前から時々使っていたことを統計で確認できる。

 メディア批評専門誌の「メディア今日」のチョン・チョルウン記者が発行した『朴槿恵崩れる』は、チェ・スンシルゲートの幕を開けた記者たちを前面に登場させた。「政府もメディアもグル」だと考える人から「朝中東(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)までがなぜあのような報道をするのだろう」と思った人たちまで、好奇心を満足させるような内容だ。「蛍光灯100本をつけたようなオーラ」だと、朴大統領の輝く姿を賞賛していたある報道機関関係者が、大統領の足りない国語の実力を指摘しながら“赤ペン”を持ち出すまで、何が起こったのかを聞かせてくれる裏話が興味深い。

 どうすれば鬱のような“スンシル病”を克服できるだろうか? カン・ジュンマン教授は「命令服従の義務にしたがって『理解できない業務』を随行するしかなかったことを告白せよ」と話す。「あなたの上司が指示した『理解できない業務』の情報を提供してください。今も指示されている変な業務を拒否してください。もし拒否するのが難しいのなら、“サボタージュ”で抵抗してください」。政府の無責任を、海運会社の不正を恐れることなく告発できる世の中だったら、セウォル号の悲劇は起こらなかったかもしれない。

チョン・ユギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/775805.html 韓国語原文入力:2016-12-22 19:24
訳H.J(2450字)

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