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ドキュメンタリー映画『慰労工業団地』ヴェネツィア・ビエンナーレ銀獅子賞受賞

登録:2015-05-10 22:02 修正:2015-05-11 08:21
 “シタ”の息子イム・フンスン氏が母に捧げた映像作品
 韓国人作家として初の栄誉
 アジアの女性労働者の疎外された人生を扱う
アジアの女性労働者の疎外を扱ったドキュメンタリー映画『慰労工業団地』でヴェネツィア・ビエンナーレ銀獅子賞を受賞したイム・フンスン氏が9日、授賞式の舞台でトロフィーを掲げて笑っている=韓国文化芸術委員会提供 //ハンギョレ新聞社

 「40年間、縫製工場の“シタ”(補助工。下仕事・雑用を受け持つ最底辺の労働者、日本語の“下”に由来し、今でも使われている)として働き続けた母親に対する感謝を込めて」

 40年も縫製工場でシタとして人生を消尽した母親は、貧しい美術家になりたいという息子のこだわりを妨げなかった。「自分がしたいとおりに生きることが人生」と話した彼女の言葉は、息子の脳裏に強く焼き付いた。絵から映像・共同体美術に、独立ドキュメンタリー映画へと芸術家のイバラの道を歩いていった息子の人生を、母親は黙って見守り応援し続けた。

 そんな母親の人生を見ながら成長したドキュメンタリー芸術家が世界を泣かせた。最高権威の国際美術祭であるヴェネツィア・ビエンナーレの本展示で、アジアの女性労働者の生活を扱った長編ドキュメンタリー『慰労工業団地』(Factory Complex)を出品し、9日、韓国人作家として初めて銀獅子賞を受賞したイム・フンスン氏(46)。 イム氏は「私の映画は40年間、シタとして働き続けた母と、デパートの衣料品売場で40歳を超えるまで仕事をして面倒を見てくれた妹の人生から全面的にインスピレーションを受けたもの」と打ち明けた。

https://www.youtube.com/watch?v=Y_KWHLfGqF8

 2年余りを費やした『慰労工業団地』は、労働の苦痛と直接向き合った家族の体験を基に、アジアの女性労働者約20人とのインタビューや闘争現場などを如実に見せる95分の長編ドキュメンタリー映画だ。映画はカンボジアの工業団地で起きた労組員に対する警察と軍の暴力的鎮圧場面から始まる。 韓国と東南アジアの衣類工場、大型スーパーやコールセンターなどで働く女性労働者の疎外された人生と彼女たちが抱いた夢と挫折を静かに語りかける。 ナレーションはないが、話しながら目に涙を浮かべる女性労働者の姿と、合間合間には工業団地のある村の空の叙情的な風景、バイクに乗って出勤する東南アジア工業団地労働者のスペクタクルな映像、そして歴史的事件などのイメージと共に構成して“ファクト”に対する共感を増幅する。

 「私を応援してくれた母親と妹に対する感謝を伝えようとして始めた作業です。労働と人生、日常は芸術と常に一体だということもです。 話やイメージが簡易で、強烈さはないと思います。 女性労働者の現実と言葉に心を動かす感性的部分もあったし、そういう点が審査委員の評価につながったのだと思います」。

イム・フンスン作家のドキュメンタリー映画『慰労工業団地』の一場面=韓国文化芸術委員会提供 //ハンギョレ新聞社

 映画作品である『慰労工業団地』が美術の祭典であるビエンナーレで受賞作になったのは、世界化、二極化時代の労働問題に直接的でありながらも歯をむかずにアプローチした特有の映像美学が大きな役割を果たしたと思われる。 イム氏はキョンウォン大学(現 嘉泉大)美術学部を出て社会参加的性格の映像製作に没頭してきた。 2000年代初めに「ミックスライス」というプロジェクト美術グループを結成し、移住労働者の話を色々な角度から映像で解きほぐした彼は、衿川(クムチョン)芸術工場などで住民たちと映像製作教室、設置展示などを共にして社会的美術の可能性を模索してきた。 2013年に済州(チェジュ)4・3事件と江汀マウルの話を重ね合わせた映画『ピニョム(願い)』を最初の長編ドキュメンタリー映画として完成させ注目を浴びた彼は、今年初めヴェネツィア・ビエンナーレ本展示に韓国作家としては6年ぶりに招請された。

 現在はアラブ首長国連邦シャルジャ美術展と米国ニューヨーク近代美術館(MoMA)の作業空間PS1で、ベトナム戦争やイラク戦争犠牲者の母親の苦しみを扱ったドキュメンタリー映像『転生』を上映中のイム氏は、この作業を長編バージョンとして準備している。『ピニョム』の後続作として、済州の歴史に関する新作もリリースする計画だ。イム氏は「どのように労働を大衆に説明するか、労働は今どのように変わり、それが人間にどんな影響を及ぼすかを念頭に置いて作業している」と話した。

イム・フンスン作家のドキュメンタリー映画『慰労工業団地』の一場面=韓国文化芸術委員会提供 //ハンギョレ新聞社

ヴェネツィア/ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/690538.html 韓国語原文入力:2015-05-10 19:59
訳J.S(2004字)

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