本文に移動

AI技術の跳躍と新たな野蛮【寄稿】

登録:2026-09-14 06:53 修正:2026-09-14 10:27
人工知能(AI)のイラスト/ロイター・聯合ニュース

 ユヴァル・ノア・ハラリは「2030年までに世界は見分けがつかなくなるだろう(By 2030, the World Will Be Unrecognizable)」と題する講演で、人工知能(AI)の発展が人間の生活にどのような影響を及ぼすのかについて展望している。

 ハラリはこれまで人間の時代が終わったことを繰り返し警告してきたが、ここでは不思議なほど楽観的だ。ハラリは2030年を、個人が故人やデジタル人格とも情緒的な関係を築くことができる時代として描く。今でも多くの人がChatGPTと対話しているが、今後システムがさらに発展していけば、記憶やその他の物質的な痕跡をもとに再構成された故人の仮想人格とも対話できるようになるだろう。ここで決定的な問題は、誰がこのゲームをコントロールするのかということだ。自分の知らない間に何らかの考えや偽りの記憶を植え付けられるようなコントロールが行われるとすれば、それは計り知れないほどの危険に他ならない。他人の考えは読んで操作できるが、自分自身は神経ネットワークに接続されていないためアクセスされる危険にさらされていない者は、新時代の支配階級になるだろう。

 ハラリは、個人が科学者や詩人といった特定の人々の集団的精神に自由に参加できるようになると想像する。しかし、このような幻想は、新時代においてはたして個人性が生き残れるのかという問題を過小評価している。接続を調節する埋め込み装置が機械装置であるかぎり、統制権はそれを接続したり切断したりする者に帰属する。AIはもっぱら社会的な活用方法によってその結果が左右される中立的な機械ではなく、形式的な構造自体にすでに技術的なコントロールと支配の傾向が刻み込まれている。あらゆる人の精神が結びついている世界では、もはや他者は理解しがたい固有の存在ではなくなるため、性的欲望も、冗談も、真のコミュニケーションも消えてしまうだろう。このような世界を幸せで解放された人間共同体とみなすのは難しいのではないか。

 重大な技術的跳躍はつねに新たな野蛮へと向かう道を開き、一見すると解放的にみえる技術の力は、結局のところ、ハーバート・マルクーゼが「抑圧的脱昇華」と呼んだものに帰結する。後期資本主義において、抑圧は禁止ではなく許容を通じて機能する。あらゆる快楽は商品化されたかたちで許され、欲望は解放されるが、その結果、より効果的に管理されることになる。かつては否定的にみられたポルノグラフィー、セックスワーク、ドラッグ文化、ゲイ文化、トランス文化、ぜいたくな生活を含め、いかなる欲望やアイデンティティも、いまや地下に追いやられることも、烙印を押されることもない。むしろ承認され、称賛され、まさにそうした称賛が資本主義を永続させる。

 AIエージェントの爆発的な成長は、このような抑圧的脱昇華を前例のない水準に引き上げている。真実と虚構、公的空間と私的空間の境界を崩壊させ、人間の思考と行為に対するデジタル統制を強化する。AIアルゴリズムなどによって機能するAIメディアは、過去10年間、公的な政治の言説に残酷さや破廉恥さが入り込むのにも大きな役割を果たした。ドナルド・トランプやベンヤミン・ネタニヤフといった者たちは、かつてなら私的な会話や電子メールでしか言及しなかったような内容まで、恥じることなく公表する。これは、純粋なかたちの抑圧的脱昇華であり、尊厳を守っていた制約をすべて取り払うという点で「脱昇華」であり、同時に、自分たちが敵とみなす者に極端な暴力を振るうと宣言しているという点で「抑圧的」だ。

 これは、AIが作動する特定の社会状況の産物だ。デジタル新封建主義、自由主義的ファシズム、ネオ・ボナパルティズムなど、まだ適切な名称は定まっていないが、明らかなのは、このような状況が現実に存在し、私たちは皆それがもたらす重圧を感じているということだ。結局のところ、AIの働きを理解するためには、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、ピーター・ティール、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグという有害な五人組に象徴されるデジタル新封建主義をめぐる階級闘争にも目を向けなければならない。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1277577.html韓国語原文入力:2026-09-13 18:50
訳M.S

関連記事