新婚の会社員Kさん(33)は、先日伝貰(チョンセ:契約時に高額の保証金を貸主に預けることで月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)物件を探していたところ、結局4億ウォン(約4200万円)のローンを組んで京畿道水原市八達区(スウォンシ・パルダルグ)のマンションを購入した。伝貰物件自体がほとんどなく、あったとしても高すぎたためだ。Kさんは「元利金の返済で毎月300万ウォン以上かかる状況は負担だが、住宅価格が恐ろしい勢いで上昇するのを見て、このままでは永遠にマイホームを手に入れることができないかもしれないという不安の方が勝った」と語った。住宅価格の上昇に取り残されないよう、無理をして家を購入したのだ。
半導体分野の業績好調による株式市場の活況で膨らんだ金融所得や、大企業の億単位の成果給(業績賞与)が不動産市場へと流れ込んでいる。資産家や高所得層が株で得た利益や成果給などを元に高価格の住宅を買い漁り、不動産市場に火をつけている。韓国社会における富の最終的な集積地が不動産であるという認識が再確認される中、ソウルと首都圏の主要な立地で住宅を所有する有住宅者と無住宅者の間の資産格差が構造的に拡大する可能性があるという懸念の声があがっている。
■株で稼いだ1兆3千億ウォンでソウルに家を購入
22日、祖国革新党のチャ・ギュグン議員室が国土交通部から提出を受けた資金調達計画書(外国人・法人を除く)の資料を分析したところ、今年第1四半期(1~3月)にソウルの住宅購入に活用された株式・債券の売却代金は1兆3883億ウォンで、1年前の同四半期(9684億ウォン)より43.4%増加した。ソウルの不動産市場に流入した株式・債券の売却代金の規模は、2023年に1兆427億ウォン、2024年に2兆2088億ウォン、昨年は3兆8580億ウォンと、年々兆単位で規模を拡大してきた。今年の第1四半期を通じて続いたKOSPI(韓国総合株価指数)の急騰が一息つく局面に入れば、期待収益の変動に伴い、株式市場から不動産市場への「マネームーブ」が本格化する恐れがある。
株式市場が上昇しても、不動産を購入できるほどの資本利益を得る投資家はごく少数だ。韓国預託決済院によると、昨年末時点で全株式投資家(1446万5千人)のうち60.4%(874万4千人)は、上場株式を1千万ウォン未満しか保有していないことが分かった。上場株式を10億ウォン以上保有する「株式富豪」は0.5%にあたる7万9千人にすぎなかったが、彼らが占めるKOSPI時価総額の割合は全体の半分を超えた。KOSPIが連日、史上最高値を更新する「強気相場」を示しても、それによる金融所得は最上位のごく少数の富裕層に集中しているということだ。
半導体分野での億単位の成果給も、不動産市場を揺さぶっている。サムスン電子、SKハイニックスなどの半導体企業の労働者が好む地域では、すでに住宅価格の急騰が見られている。今年のマンション価格の累積上昇率を見ると、半導体企業のシャトルバスが運行され「シャトルバス圏」と呼ばれる地域の華城市東灘(ファソンシ・トンタン)(9.6%)、龍仁氏水枝(ヨンインシ・スジ)(9.0%)、城南市盆唐(ソンナムシ・プンダン)(7.4%)が、ソウル(4.5%)を大きく上回った。市場では、SKハイニックスに続き、サムスン電子の半導体部門の成果給が支給される来年第1四半期に残金の支払いが行われる取引が今年下半期から集中的に行われ、不動産市場に資金が集中するとみている。
韓国社会において、不動産は単なる資産の集中にとどまらず、階級格差を「固定化」させる主なルートだ。資産家や高所得層の金融所得や成果給などが不動産市場に流入することで、実物資産の格差が深刻化し、この過程で資産価値が労働所得では追いつけないほど上昇し、再び不平等を増幅させる構造となっている。江原大学のチョン・ジュンホ教授(不動産学)は、「チャンスとリスクが共存する資産価値の急騰期には、資産格差が構造的に拡大することになる。一部の成功事例によって資産不平等の深刻さが覆い隠されないよう注意しなければならない」と指摘した。
KB不動産データハブによると、先月のソウルのマンション平均売買価格は15億7120万ウォン(約1億6600万円)に達し、2年前より32.7%も上昇した。不動産市場の上昇サイクルに乗った住宅所有者が資産価格の上昇による恩恵を享受し、それを再び投資に活用する一方で、「マイホーム取得」に失敗した人々は、家賃などの住居費で所得の相当部分を消費し、資産形成の第一歩さえ踏み出せないという懸念が高まっている。
専門家たちは、韓国社会が資産を通じた富の増殖が、労働を通じた富の蓄積よりも格差を深刻化させる「多重格差」の分岐点に差し掛かったと診断している。明知大学のウ・ソクチン教授(経済学)は、「すでに資産の保有の有無は、単に現在の不平等問題にとどまらず、住居、教育、結婚、出産、老後など、生涯にわたる機会を左右している」とし、「半導体ブームによって増殖した富が再分配へと流れる道を用意しなければ、2026年は資産不平等の拡大の元年として記録されるだろう」と述べた。