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【インタビュー】「米中、新冷戦終わらせ『戦略的安定』へ…パワーバランスに変化」

登録:2026-05-20 08:27 修正:2026-05-20 09:57
15日、米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席が、北京にある中国最高指導部の官邸・執務室となっている中南海で言葉を交わしている/ロイター通信

 「この10年間、米国は米中関係を戦略競争と新冷戦の観点からみていたとすれば、今や米中関係は競争の中にあっても衝突を避け、協力を拡大する方向へと移った」

 米国のドナルド・トランプ大統領の訪中と米中首脳会談について、北京大学の王勇教授(国際関係学院)は18日、ハンギョレの取材に対し「予想を超える成果をあげた」として、「中国が米国と対等な立場で協力、競争する地位についたことを示した」と語った。同氏は最も重要な成果として、米中両国が「建設的・戦略的安定関係」という新たな方向性に合意したことをあげた。

 14日の米中首脳会談で習主席が示した新たな方向性に対し、トランプ大統領は特に反応を示さなかったが、米ホワイトハウスは17日(現地時間)に公開したファクトシートで、両国首脳が「戦略的安定にもとづく建設的な関係を構築すべきだということで合意した」ことを認めた。王教授は北京大学米国研究センターの長を務める、中国を代表する米中関係の研究者の一人。

 王教授は、トランプ大統領の認識の変化に注目した。「トランプ大統領は力を尊重する現実主義的な指導者だ」と考える王教授は、「昨年の貿易・関税戦争などを経て、中国が崩壊するどころかむしろ強くなったことを認めたと思われる」と主張した。2017年のトランプ第1期政権時代の訪中以降、10年近くの対立を経て、米国は「中国と共存し協力してこそ米国にも利益になる」ということに気づいたというのだ。

 経済・貿易分野の交流拡大は、両国関係の回復の基盤になるとの見通しを王教授は示す。同氏は「米国は中国との協力を通して物価の安定と雇用創出という実質的な利益を期待している」として、「中国も、米国との経済関係が完全には断ち切れない関係であることを確認した」と説明した。ホワイトハウスは、中国は2028年までにさらに毎年最低170億ドル(約25兆4000億ウォン)規模の米国の農産物を購入することに合意したと明らかにした。ボーイングの航空機200機も中国の購入リストに加えられ、貿易委員会と投資委員会の設立にも合意した。

 トランプ大統領の掲げる、成功する米中取引のカギとして、王教授は「台湾問題」をあげた。王教授は、米国による台湾への武器売却問題は経済・貿易協力と連動する可能性が高いとみている。「トランプ大統領は台湾への武器売却のことを『良い交渉材料』と評したが、中国も経済・貿易協力と結びつけている」、「米国が今後どのような態度を示すかによって、中国の大規模な購入契約の履行状況も変わり得る」というのだ。さらに王教授は「現在、中国はレアアース分野で米国の先端産業のチョークポイントを締め上げうる位置に達している」とし、「両国のパワーバランスはかつてとは異なる」と述べた。

18日、北京大学の王勇教授(国際関係学院)兼米国研究センター長が、ハンギョレのインタビューに応じている=北京/イ・ジョンヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 習主席がトランプ大統領に対し、台湾問題は米中関係のレッドライン(限界線)だと公に警告したことについて、王教授は「台湾問題を建設的・戦略的安定関係と直接結びつけた」と解釈した。米国が台湾独立を支持すると安定は保てないということを明確にしたということだ。同氏は「トランプ大統領は帰国後、『台湾独立が戦争を誘発することを望まない』という趣旨の立場を表明した」とし、「これは中国にとって重要な成果だ」と主張した。ただし米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表は放送局でのインタビューで「米国の台湾政策に変化はない」とし、「台湾海峡の現状維持が最も重要だ」と語った。ホワイトハウスもファクトシートで、台湾問題に特に言及していない。

 王教授は、取引的思考に慣れたトランプ大統領が台湾問題に対する米国の従来の立場を揺るがし、韓国をはじめとする米国の同盟国を不安にさせているという解釈について、「脅威ではなく機会」だと反論した。「米中関係が悪化する中で、韓国や日本、東南アジア諸国は米中の間で選択を迫られている」から、両国の緊張緩和により「各国はより広い外交および経済協力の余地を確保できるようになるだろう」という。

 王教授は、米国・イスラエルとイランの戦争において中国が緊張緩和の役割を果たすと明言したことは、米国の立場からすれば「重要な戦略的成果」だと述べた。対話と協力の下での解決という原則的立場を再確認したこと以外に中国の具体的な協力策はないのではないかという指摘に対しては、「中国は米国の側に立つのではなく、平和と安定の側に立っている」と主張した。ホワイトハウスはこの日、米中は「ホルムズ海峡の通行料徴収を許すべきではないということで一致した」と明らかにした。中国はイランに速やかな海峡の開放を求めるというところから米国の立場に一歩近づいたのではないかという解釈について、王教授は「米国だけでなく、多くの国の利益と一致するもの」だとして拡大解釈に警戒感を示した。

14日、中国の子どもたちが、習近平国家主席との会談のために北京の人民大会堂に到着した米国のドナルド・トランプ大統領を、花と米中の国旗を振りながら歓迎している/UPI・聯合ニュース

 王教授は、今回の会談以降の米中の軍事コミュニケーションチャンネルの回復に注目すべきだと強調した。同氏は「2022年のナンシー・ペロシ元米下院議長の台湾訪問後に途絶えていた中国の中央軍事委員会と米国の統合参謀本部との連絡、東部・南部戦区とインド太平洋軍との連絡、第一線の艦艇や空軍同士の直通通信システムなどが一部回復する可能性がある」として、「軍事コミュニケーションの復元は戦略的安定関係の要となる要素」だと述べた。続けて「偶発的な衝突を防ぐためにも、両国の軍当局同士の直接連絡システムの復元は不可欠」だと付け加えた。

 王教授は、2017年の第1次トランプ政権時の訪中後、米中関係が急激に悪化した前例が繰り返される可能性があるという見方について、「リスクは存在するが、可能性は低い」との見通しを示した。同氏は「今年は9月の習主席の米国国賓訪問を含め、両国首脳は最低でも4回対面する可能性がある」とし、「このような首脳外交日程の集中は、関係が急激に悪化するリスクを軽減するだろう」と語った。

 トランプ大統領が国内外で直面している政治・経済的圧力も、米中関係にプラスに働くと語る。王教授は「イラン戦争だけでなく、ロシア・ウクライナ戦争の問題も解決されていない」とし、「中国は米国が外交的成功を収めるためのほぼ唯一の部分となり得る。そのため、トランプ大統領が訪中後に米中関係を大きく後退させることはないだろう」と述べた。

北京/イ・ジョンヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/china/1259312.html韓国語原文入力:2026-05-19 07:00
訳D.K

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