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AI時代のカギ、消費と分配【寄稿】

登録:2026-03-27 09:22 修正:2026-03-28 09:50
現代自動車グループが買収したボストン・ダイナミクスのロボット「アトラス」(左)と、テスラのロボット「オプティマス」/聯合ニュース、テスラ提供

 1992年の米大統領選挙で、クリントン陣営の戦略家ジェームズ・カービルは選挙事務所の壁に短い文を記した。「問題は経済だ、愚か者め(It's the economy, stupid)」。複雑な地政学的言説や華やかな外交のレトリックではなく、市民の生活が選挙の本質であることを見抜いた宣言だった。それから30年あまりが過ぎた今、私たちはこの文を書き換えるべき時に来ている。人工知能(AI)とロボットが生み出す前例のない製品やサービスを、果たして誰が、どのように消費するのか。私たちの時代の真の問いはまさにこれだ。「問題は消費だ、愚か者め」

 人口の高齢化は、こんにちの学界と政策当局が最も頻繁に使用する危機の言葉だ。合計特殊出生率が1未満に低下してからというもの、メディアは国家の消滅を警告し続けており、政府は2006年から2023年までの間に約380兆ウォンを少子化対策に投じた。生産年齢人口が減少すれば潜在成長率が低下し、財政基盤が崩壊するという論理は、すでに否定しがたい定説となっている。

 しかし、ここで私たちは痛烈な逆説に直面する。韓国社会は慢性的な若者の失業に苦しみながら、生産年齢人口の減少を懸念している。さらに、人工知能(AI)による雇用の消失を懸念しながら、働く人の不足で成長が止まるという恐怖にとらわれている。すでに存在する人的資源さえも労働市場に適切に受け入れられずにいるという構造的矛盾を抱えたまま、「人手不足」にばかりとらわれているのだ。果たして私たちは、正しく心配しているのだろうか。

 ここ数年でAIは法律の検討、医療診断、ソフトウェア開発などの高熟練分野を急速に掌握した。同時に「フィジカルAI」を搭載したヒューマノイドロボットは物流、製造、建設の現場で人間の肉体労働を代替しはじめている。テスラの「オプティマス」やボストン・ダイナミクスの「アトラス」が工場のラインに投入されているシーンは、もはやSFの中の想像ではない。彼らは疲れを知らず、電力が供給される限り24時間生産にまい進する。このような技術革新の流れを考慮すると、将来の経済における制約要因は、「誰が作るか」ではなく「誰がそれを買うのか」から生じる可能性が高い。

 AIやロボットが生み出す生産性の果実が資本を所有する少数にのみ集中すると、供給能力は飛躍的に高まる一方で需要基盤は急激に縮小する「技術的恐慌」が現実のものとなりうる。ケインズが警告した「有効需要の不足」が、技術革命というまったく別の道筋を通って復活するということだ。

 解決策の方向性は明確だ。技術の進歩の成果が社会全体の消費能力へと還流するよう、制度的な仕組みを設計するのだ。AIとロボットが本格的に付加価値を創出する時代に合わせ、いわゆる「ロボット税(Robot Tax)」の導入を検討するとともに、その財源を全国民に還元する「AI配当」や「ベーシックインカム」の議論を本格化する必要がある。今すぐ実施せずとも、急激な転換の流れに遅れることのないよう、先手を打って十分な社会的議論と制度化を通じた準備をはじめるべき時に来ている。労働と所得の結びつきが弱まる未来において、このような分配メカニズムは有効需要を支えるセーフティーネット、そして消費経済の新たなエンジンとなり得るだろう。

 近い将来、人類に課される真の課題は「どうすればよりうまく生産できるか」ではなく、「どうすればより広く分配し、持続可能な消費基盤を維持できるか」となる。結局のところ、問題は配分なのである。

//ハンギョレ新聞社

イム・ヒョンジュン|全南大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1251082.html韓国語原文入力:2026-03-25 18:07
訳D.K

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