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「一時は年俸王」麗水産業団地の工場が稼働停止…「中国からの供給過剰のせい」=韓国

登録:2025-08-20 08:34 修正:2025-08-20 10:04
先月14日、全羅南道麗水の国家産業団地の夜景。工場の明かりは華やかだが、いつまでも消えずにいられるのだろうか=キム・ジンス先任記者//ハンギョレ新聞社

 今月14日午後2時ごろに訪ねた全羅南道麗水市(ヨスシ)の国家産業団地(32平方キロメートル)は、非常に閑散としていた。何よりも冷却塔(クーリングタワー)から水蒸気があがっていないことに驚いた。大企業3社の10の工場が稼動を臨時中断したことと無関係ではなさそうにみえた。昨年のLG化学とロッテケミカルに続き、今月8日に麗川NCCが第3工場の稼動を臨時中断した。麗水産業団地内のある社員は「工場設備の熱を冷ますクーリングタワーは24時間稼動しており、工場を最小限に回しているという証拠」だと話した。

 第3工場の稼動を中断した麗川NCCは、麗水産業団地に国内最大のエチレン生産設備を有している。かつては1兆ウォン台の営業利益をあげ、わずか5~6年前までは業界の「年俸キング」だった。ところが2022年から赤字が3年続き、最近の不渡り危機もかろうじて乗り越えた。全羅南道は「麗川NCCがいつ稼動を再開するかはまだ決まっていない。1979年に稼動を開始した麗水産業団地は韓国の石油化学製品の生産量の40%を占めるほど活況を呈したが、今は大きな危機に直面している」と語った。

14日、全羅南道麗水市の麗水国家産業団地内の麗川NCC第3工場前は、稼動の臨時中断で閑散としていた=チョン・デハ記者//ハンギョレ新聞社

 中国からの供給過剰は麗水産業団地を直撃した。韓国は2021年の時点では年間1270万トンのエチレンを生産し、規模では世界4位だった。だが中国は2021年に大規模な投資に乗り出し、2019年には2711万トンだったエチレンの生産能力は、2023年には5174万トンへと、わずか4年で倍増。麗水商工会議所のチェ・ジュニョル事務局長は、「麗水産業団地はエチレンなどの汎用製品中心という構造的な限界があらわになり、大山(テサン)や蔚山(ウルサン)の石油化学団地よりも直接的な打撃を受ける地域」だと語った。

 エチレンなどの汎用製品は技術力の差がつきにくいため、高付加価値の化学製品とは異なり競争力が弱い。

 麗水産業団地の不況は地域経済の低迷につながっている。大企業の発注金額は2022年の2兆145億ウォンから昨年は1兆1195億ウォンへと44%も減少。大企業の発注金額が減ると、それは協力会社の売上の減少と労働者の契約解除(解雇)につながる。麗水産業団地の入居企業は316社(大企業25社)で、麗水産業団地の稼働率は2021年の96%から今年1月には77.6%へと18.4ポイント低下。昨年の麗水市の法人所得税収は67%以上減り、地方所得税収も49%減少。麗水市のチョン・ジェギョン化学素材産業チーム長は、「麗水産業団地の景気低迷は雇用不安、小商工人や関連企業の経営難につながっている」と語った。

14日、全羅南道麗水市の舞仙地区の店舗に空き店舗広告が貼り出されている。閉店した店の主は「個人的な事情で営業を中止する」という案内文を掲げていた=チョン・デハ記者//ハンギョレ新聞社

 雇用も縮小しつつある。昨年第1四半期には2万5123人だった麗水産業団地の雇用は、2025年第1四半期には2万4686人と大きくは減っていないが、協力会社の下請け労働者として働くプラント建設業の従事者は、昨年9月時点の8783人から今年1月には1780人へと80%も減った。全国プラント建設労組麗水支部のチャン・チャンファン事務局長は、「下請け労働者が第一の解雇対象。5~6カ月間も家に金を入れていない組合員たちはタチウオ漁船に乗ったり、バイク便や運転代行をしながら耐えている」と語った。

 麗水産業団地から最も近い市街地、禾長洞(ファジャンドン)や仙源洞(ソンウォンドン)一帯の舞仙(ムソン)地区食堂街は、退勤時間も閑散としていた。この日午後6時50分、舞仙地区のある食堂で働くチョ・ヒョンジンさん(21)は、「工業団地の景気が悪くなって会食も減った。飲食店の売り上げは半分になった」と話した。この食堂の予約リストには、夜7時の1組だけが記されていた。舞仙地区商店街では、「空き店舗」広告と営業終了を知らせる案内文の貼られた建物が多く見られた。昨年第3四半期基準で、麗水市の旧都心の中・大規模商店街の空室率は24%で、全国の2倍にのぼる。

全国化学繊維食品産業労組光州全南支部のキム・ソンホ支部長が14日、同労組の事務所で、大企業の一方的な構造調整に反対することを表明している=チョン・デハ記者//ハンギョレ新聞社

 対策としては、構造調整と産業構造の高度化があげられる。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は先月初めに国会で開催されたフォーラムで、業界の共倒れを防ぐためには麗水産業団地の7つのエチレン工場のうち2~3つを整理すべきとする報告書を発表した。与党「共に民主党」のチュ・チョルヒョン議員(麗水市甲:選挙区名)が代表発議した「石油化学産業の競争力強化および支援に関する特別法案」には、石油化学産業の構造調整や買収合併のために事業再編承認を受けた場合は独占規制の例外とする、という規定などが含まれている。チュ議員は「産業構造の高度化、高付加価値化およびエコロジカル構造への転換政策を推進するには、特別法を制定しなければならない」と強調している。

 労働組合は、構造調整が行われるかどうか鋭意注視している。全国化学繊維食品産業労組光州(クァンジュ)全南支部のキム・ソンホ支部長は、「コロナ禍でも好況だった麗水産業団地の大企業は、エチレンなどの汎用製品を中心として『キャパ』ばかりを拡大し、価格競争力を失った」として、「ビジョンも提示せず、会社が厳しいと言って労働者に責任を押し付けようという態度は、受け入れられない」と述べた。

チョン・デハ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/honam/1214079.html韓国語原文入力:2025-08-19 17:54
訳D.K

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