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朴槿恵元大統領の愚行をまた繰り返した尹錫悦前大統領【コラム】

登録:2025-08-12 09:03 修正:2025-08-12 09:50
尹錫悦前大統領が昨年11月、ソウル龍山大統領室庁舎のブリーフィングルームで開かれた国民向け談話や記者会見で、取材陣の質問に答えている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)元大統領と尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領はいずれも弾劾された。二人には共通点が多い。

 両大統領は在任中、総選挙で勝利を収めると思っていた。2016年の総選挙を控え、「共に民主党」とアン・チョルス議員の「国民の党」が分離し、与党の「セヌリ党」の圧勝が予想された。当時ほどではなかったが、昨年の総選挙でも選挙2カ月前までは与党「国民の力」の勝利を予想する人も少なくなかった。ところが、選挙終盤「真朴(槿恵)鑑別士」、「ラン・ジョンソプ問題」など、自ら墓穴を掘った。結果は記録的惨敗だった。ところが、2人とも惨敗後も自らを省察したり、振り返ることもなく、独善と我執の政治を続けた。むしろ敗北を取り戻すつもりで、国政壟断と戒厳などの悪手に悪手を重ねた。結果は破局だった。

 前回の総選挙を振り返ってみると、尹錫悦政権は総選挙1カ月後の3月4日、海兵隊C上等兵殉職事件の重要関係者であるイ・ジョンソプ前国防部長官(当時)を駐オーストラリア大使に任命した。「ファン・サンム(市民社会首席)問題」(刺し身包丁を使った過去のテロ事件に触れ、特定の報道機関を脅かした問題)が3月14日に相次いで発生した。二つの悪材料で批判が高まっている渦中に、「長ネギ問題」が起きた。尹大統領が3月18日にスーパーの「ハナロマート」を訪問し、(格安の長ネギを)「合理的価格」と発言し、さらに世論を沸騰させたのだ。結局、3月20日にファン首席が辞任し、3月29日にはイ・ジョンソプ大使が辞意を表明するなど、大統領室は遅ればせながら鎮火に乗り出した。ところが、4月1日、「医学部2000人増員」という一方的な国民向け声明を発表したことで、事実上総選挙での敗北が確定してしまった。

 問題はこのようなことが内部でなぜ全く制御されなかったのかという点だ。その一つ目の理由は、(大統領も、周りの人たちも)皆同じ人たちだったからだ。朴槿恵元大統領は「真朴」だけを集めており、尹錫悦前大統領の側近はソウル大学法学部が中心だった。パク・ソンジェ法務部長官、イ・サンミン行政安全部長官、キム・ジュヒョン民情首席、イ・ワンギュ法制処長などが皆ソウル大学法学部か検察出身だった。まさに同種交配の恐ろしさだ。二つ目の理由は、たとえ異なる意見を持っていたとしても、苦言を呈することができない雰囲気だった。朴元大統領も無言で「レーザー(鋭いまなざし)」を放ったが、尹前大統領はC上等兵事件で明らかになったように、怒号をあげたという。検察時代から荒々しく罵詈雑言を浴びせることが多かったが、大統領選挙キャンプでも「目玉を抜き取るぞ」など、聞きなれない言葉に一生優等生として生きてきた「国民の力」の政治家たちが度肝を抜かれたという。三つ目の理由は、共犯になったからだ。「え?え?」と言っているうちにすでに深くはまってしまったため、正面突破以外には道がなかったのだ。3つが重なれば、権力首脳部は(陸との)橋が切れた「孤島」になる。

 金泳三(キム・ヨンサム)政権時代ははるかに権威主義的な社会だったが、「同志的一体感」があったため、参謀たちが身を投げて引き止める時もあった。金大中(キム・デジュン)政権で公報首席秘書官を務めたパク・チウォン議員は、「金大中政権は側近たちを大統領府に入れなかった。私がほとんど唯一だった。首席会議では、様々な所から来た人たちが気楽に意見を述べるほど、言路が開かれていた。尹大統領は上命下服の検察組織文化をそのまま『龍山』(大統領室)に持ち込み、組織が硬直していた」と語った。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代は首席秘書官の下の秘書官まで、大統領と忌憚なく意見を交わした。同じ保守政権であっても、李明博政権の初期には(尹政権とは)ずいぶん違っていた。企業家出身の李元大統領が意見を述べるように促しており、多様な背景を持った人々の中で比較的リベラルな人たちがかなり多かった。李明博政権初期に首席秘書官を務めたある人物は、「融和派と強硬派に分かれ、いつも意見を戦わせていた。室長の発言の途中で突然自分の意見を述べるかと思うと、テーマとは関係のない話をしたりもした。あまりにも首席秘書官同士の議論が白熱しすぎて、大統領が『さあ、さあ、そこまでにしましょう』と引き止めたこともある」と話した。「衆口調え難し」と言われたのもそのためだ。

 しかし、尹錫悦政権は違っていた。さらに「Vゼロ」(夫人のキム・ゴンヒ女史)の影響力のせいで会議の翌日、「考えてみたんだけど」として決定を覆すのが日常茶飯事だったという。「言っても無駄だ」という経験が重なると、口を開かなくなる。さらに「59分」というニックネームのように、終わりなく一人で語り続けるから、参謀たちが自分の意見を述べる隙がない。尹前大統領は検事が最も賢いと信じている。捜査をすれば、その分野の専門家になれると思っている。検事の前で身が縮む被疑者たちをあまりにも多く見たからだ。唯一彼を制御できる人が夫人のキム・ゴンヒ氏だった。問題は、キム氏もやはり至らないという点だ。大統領選挙キャンプ時代、ある関係者が「(キム)女史は展示関連会社を運営した経験があるからって、自分が広報の専門家だと勘違いしている。本当に頭が痛い」と言ったことがある。その話を聞いてからしばらくして、「犬謝罪問題」(尹前大統領がクーデターを起こした全斗煥氏を擁護する発言したことに対し、批判が高まったことを受け、申し訳ないとお詫びしたが、キム氏がソーシャルメディアにペットの犬に韓国語で謝罪と発音が同じのリンゴをあげる写真を投稿した問題)で物議を醸した。グラビアを彷彿とさせる順天湾(スンチョンマン)の写真、麻浦(マポ)大橋の巡視写真などフ次を醸した写真を誰が選んだだろうか。何でも「はい」と言う人たちに囲まれていると、専門性が育まれない。だからこそ、特検の取り調べでも誰もが分かるような嘘で、自ら罠にかかるのだ。

 尹前大統領とキム・ゴンヒ氏は罪を償うことになるだろう。聖書に「犬が自分の吐いたものを再び食べるように、愚か者はその愚かさを繰り返す」という箴言がある。朴槿恵元大統領が吐いたものを尹錫悦前大統領がまた食べた。これ以上愚かさを繰り返してはならない。

//ハンギョレ新聞社
クォン・テホ論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1212677.html韓国語原文入力:2025-08-11 21:15
訳H.J

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