韓国開発研究院(KDI)は、数十年にわたり上昇し続けてきた韓国の国内総生産(GDP)比家計負債の割合は高齢化などの人口構造のために5年以内にピークに達し、その後は下落傾向に入るだろうとの見通しを示した。KDIは、家計負債の管理方式を従来の総量規制ではなく、借主の返済能力中心に変えなければならないと提言した。
5日にKDIが発表した報告書「人口構造の変化が家計負債に及ぼす影響」によれば、韓国のGDP比家計負債の割合は1990年代後半から傾向的に上昇し、今年第1四半期末基準で90.3%となり世界5位の水準だ。
主要国に比べて急速に増加した韓国の期待寿命が家計の資産蓄積の動機を大きく高め、家計負債の構造が深刻化したというのがKDIの分析だ。この20年間(2003~2023年)に期待寿命は6.2歳(77.3→83.5歳)延びた。期待寿命が延び、老後に備えようとする中・高齢層は金融資産を好み、住宅購入が喫緊の問題である青年層は住宅資産に対する需要が大きい傾向を見せている。この時、高齢層が資金を供給する役割を遂行し、青年層がこれを借入れて住宅を得て、家計負債が発生するということだ。
期待寿命の延びが停滞区間に進入した中で、年齢別人口構成の変化が急速に進んでいる。30~40代が人口構造の中心となる時は借入れ需要が膨らみ、家計負債が増加する傾向があらわれるが、少子化が続き人口の多数が高齢層で構成されれば借入れ需要は縮小し、家計負債も減少する傾向を見せるだろうという意味だ。
実際、KDIが経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)加盟国など35カ国を中心に分析した結果、期待寿命が1歳延びれば、GDP比家計負債の割合は約4.6ポイント上昇すると推定された。その反面、資金需要者である青年層(25~44歳)の比重が1ポイント減り、高齢層(65歳以上)の比重が1ポイント増えれば、家計負債の割合は約1.8ポイント下落することが分かった。
これを基にKDIが過去20年間(2003~2023年)の韓国のGDP比家計負債比率の上昇幅(33.8ポイント)を分析したところ、28.6ポイントは期待寿命の増加によるものと説明された。4.0ポイントは年代別の人口構成の変化によるものだ。
KDIのキム・ミル研究委員は「このかんの家計負債増加の相当部分が構造的な人口要因に起因している」として「今後、期待寿命の増加傾向の鈍化と高齢化の進行を考慮すれば、家計負債比率は5年以内にピークに達し、下落局面に転換するだろう」との見通しを示した。2070年には高齢化による下落効果(-57.1ポイント)が期待寿命増加の上昇効果(29.5ポイント)を圧倒し、現在より家計負債比率が27.6ポイント低くなると推定した。
KDIは、家計負債を現行のように任意的な総量管理でアプローチする代わりに、DSR(債務元利金返済比率)など借主の返済能力の評価および金融機関の健全性管理を中心に政策を設計しなければならないと提言した。人口構造の変化により家計負債比率が下落傾向に転じることになれば、例外的な状況を除けば総量管理が資金市場をむしろ歪曲する恐れがあるためだ。