「これに対し、裁判官全会一致の意見で主文を宣告します。主文。被請求人の大統領朴槿恵(パク・クネ)を罷免する」
2017年3月10日、憲法裁判所はこのように朴元大統領の罷免を決めた。過去の大統領弾劾事件は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾裁判の見通しを立てる判例になる。憲法裁は2回にわたる大統領弾劾事件で、大統領が憲法・法律に違反したか▽違反行為が憲法守護の観点から重大な意味を持つか▽国民の信任に背いたかを判断し、弾劾の可否を決めた。
2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と2017年の朴槿恵元大統領弾劾裁判で認容の可否を分けたのは「憲法違反の重大性」だった。
憲法裁は盧元大統領の弾劾裁判で、職務執行における憲法・法律違反があり▽法律違反が罷免を正当化するほど重大でなければならないという要件を示した。当時、憲法裁は「(当時与党の)開かれたウリ党に票を与えられる道があるなら、法律に反しない限り尽力したい」という盧元大統領の発言が公職選挙法における公務員の中立義務に違反したが、記者の質問に対する受動的かつ非計画的答弁だったとし、自由民主的な基本秩序に対する積極的な違反行為には当たらないと判断した。
憲法裁は「罷免決定を通じて憲法を守護し、損傷した憲法秩序を再び回復することが求められるほど、大統領の法律違反行為が憲法守護の観点から重大な意味を持つとみることはできない」とし、「国民の信任を任期中に再び剥奪しなければならないほど、国民の信任に背いた場合に該当するともみられず、大統領に対する罷免決定を正当化する理由は存在しない」と判断した。
2017年の朴元大統領弾劾は、憲法裁が提示した「重大性の基準」を越える初めての事例だった。憲法裁は朴元大統領の訴追事由4種類のうち「私人の国政介入を許したことと、大統領権限の乱用」が法律違反であり大統領職を罷免するほど重大と判断した。
憲法裁は「国民から委任された権限を私的用途で乱用し、国家機関と組織を動員した点で、法違反の程度が非常に厳重だ」とし、「代議民主制の原理と法治主義の精神を損ねた行為で、大統領としての公益実現の義務に対する重大な違反」だと指摘した。
憲法裁は大統領の真摯さが見られない国民向け謝罪や非協力的態度も、「憲法守護の意志」がないという判断の根拠として挙げた。憲法裁は「(国民向け謝罪が)客観的事実と一致せず、真摯さが足りなかった」とし、「検察や特別検察官の調査に応じず、大統領府に対する強制捜査も拒否し、被請求人に対する取り調べが行われなかった」と指摘した。憲法裁は「この事件の憲法と法律違反行為は国民の信任に背いた行為であり、憲法守護の観点から容認できない重大な法律違反行為」だとし、「罷免によって得られる憲法守護の利益が、大統領罷免にともなう国家的損失を圧倒するほど大きい」とみた。
今回の尹大統領の弾劾審判でも憲法裁は12・3非常戒厳が憲法と法律に違反したのか、違反したとすれば、憲法守護の観点で重大な意味を持つのか、国民の信任に背いたのかなどを判断することになる。
先月18日の9回目の弁論で、国会代理人団のキム・ジンハン弁護士は、「状況に合わない非常戒厳宣布は独裁政治であり、これだけでも罷免を正当化できる重大な違憲行為」だとし、「国会侵奪、国会妨害の試み、非常立法機構の設立計画は全面的に憲法違反行為であり、民主主義を解体しようとする試み」だと指摘した。また「一連の重大な憲法違反行為は明らかに憲法守護の責任に背き、違反した行為であるだけでなく、国民の信頼を重大に損ねた行為」だとし、「『何の被害も与えなかった戒厳』という主張は、憲法守護の意志が全く見られないもの」だと述べた。尹大統領の非常戒厳宣布は重大な憲法違反であり、国民の信任に背く行為ということだ。