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「極右歴史否定勢力の攻撃の激化とともに『慰安婦』被害者らの苦しみも深まった」

登録:2025-02-28 10:03 修正:2025-03-01 09:48
正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長が24日、ソウル麻浦区の戦争と女性人権博物館に設けられた「慰安婦」被害者追悼館で、最近死去したキル・ウォノクさんの追悼スペースを眺めている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 「故人を見送る際にも、あんなに無道に振舞っていましたね」

 ソウル鍾路区(チョンノグ)の旧日本大使館付近で19日に開かれた第1688回日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモは、3日前に亡くなったキル・ウォノクさんの追悼祭を兼ねていた。キルさんの遺志を記憶に留める行事が行われる間、隣では「慰安婦法廃止国民行動」の関係者たちが「キル・ウォノクは金を稼ぐために自ら(慰安所に)行った」など、日本軍性奴隷制を否定するスローガンを叫んでいた。彼らは全国の「平和の少女像」に「撤去」と書かれたマスクをつけたり黒いビニールをかぶせてたりして侮辱する「少女像撤去チャレンジ」も2年以上続けている。

 日本政府の公式謝罪と賠償が遠く及ばない状況で、韓国政府に登録された日本軍「慰安婦」被害者のうち生存者は7人となった。一方、歴史的事実を否定し、被害者を攻撃する声は日増しに高まっている。三一節(独立運動記念日)を控え、24日にソウル麻浦区(マポグ)の正義記憶連帯(正義連)の事務室でインタビューに応じたイ・ナヨン理事長(中央大学社会学科教授)は、「この5年間、水曜デモで目の当たりにしてきた歴史否定勢力は、今(ソウル西部地裁の暴動などで)目撃する極右の浮上の兆候だった」とし、「これ以上この問題を放置してはならない」と語った。

 2020年5月の任期開始時から歴史否定勢力を目撃したイ理事長は、水曜デモを妨害する人々が集まり、「慰安婦と労務動員労働者の銅像設置に反対する会」(銅像反対の会)などの組織を作ったのは2019年末だと説明した。同年7月、落星台経済研究所のイ・ヨンフン所長をはじめとするニューライト理論家たちは、日本軍の性奴隷制、朝鮮人強制動員の歴史を否定する『反日種族主義』を出版した。同書の共著者である落星台経済研究所のL研究員は銅像反対の会を主導し、2023年「慰安婦詐欺清算連帯」の共同代表を務めた。「デモ現場で日の丸や旭日旗を振って暴言を吐く『アスファルト極右』や国内の研究者・研究団体、極右メディアだけでなく、日本政府と日本の右翼団体および研究者などを通じて、グローバルな歴史否定勢力ネットワークに注目しなければなりません」

正義記憶連帯と日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんが2024年5月22日、ソウル中区の駐韓ドイツ大使館前で記者会見を行っている(上)。同記者会見場から30メートルところでは極右勢力が「少女像を撤去せよ」と叫んでいる=キム・ガユン記者//ハンギョレ新聞社

 イ理事長は、日本軍「慰安婦」被害者を「自発的売春婦」と主張した米国ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授の2021年の論文事件が、「突然飛び出した一回限りの事件ではなく、日本の極右ネットワークが米国まで拡大した結果」であるように、韓国内の歴史否定勢力の浮上も長年にわたる組織化の結果だと指摘する。イ理事長は「国内極右の『歴史戦争』は2004年にニューライトが公式化した時から20年以上続いてきた」と語った。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に登場したニューライトは、李明博(イ・ミョンバク)政権時代と朴槿恵(パク・クネ)政権時代の「建国節」記念推進(大韓民国政府樹立日である1948年8月15日を記念すべきという主張で、3・1運動で建設された1919年臨時政府の法統を否定すると批判された)や歴史教科書の修正などを試みた。『反日種族主義』の著者たちが主導した李承晩(イ・スンマン)学堂の創立が2016年、ユーチューブチャンネル「李承晩TV」の開設が2017年のことだ。

 日本軍「慰安婦」の歴史を否定する勢力の多くは12・3内乱を擁護し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾反対運動にも先頭に立っている。日本軍「慰安婦」と関連して「公式的な娼婦村」などの妄言を吐いた「サラン(愛)第一教会」のチョン・グァンフン牧師が代表的な人物。「母親部隊」や「新自由連帯」、「国民啓蒙運動本部」などもある。2022年、水曜デモに参加した正義連の活動家たちに「北朝鮮の喜び組になりたいお嬢さん」などと発言し、侮辱罪で罰金刑を言い渡されたY氏(サラン第一教会の特任伝道師)は、西部地裁暴動現場で尹大統領支持者たちを扇動した容疑で拘束された。4年前から慰安婦詐欺清算連帯集会などを生配信し、被害者たちを攻撃してきたユーチューバーのC氏も、西部地裁に侵入した疑いなどで拘束された。イ理事長は「特定の記憶を消し去ろうとする極右歴史否定勢力は、民主主義の中心となる価値を否定する点において内乱犯と同じだ」と語った。

 さらに「尹政権発足後、極右勢力の主流化が深刻になった」と説明した。キム・テヒョ国家安保室第1次長、キム・ヨンホ統一部長官、キム・ヒョンソク独立記念館館長、キム・ナギョン韓国学中央研究院長、パク・イテク独立記念館理事、イ・ベヨン国家教育委員長、キム・グァンドン真実和解委員長など、ニューライト運動に関わった人々が大勢登用された。対日外交も問題だった。イ理事長は「尹政権は(強制動員被害者の賠償金を国内企業などによる財団基金で支払う)『第三者弁済』方式を推し進めるなど、自国の被害者たちの権利を奪い、日本政府の肩を持って極右歴史否定論に便乗してきた」と批判した。

 日本軍「慰安婦」被害者の苦しみも深まった。イ理事長は「市民が水曜デモに参加できなかったコロナ禍などを経て(極右勢力の)攻撃がますます激しくなった」と語った。慰安婦法廃止国民行動などは、被害者たちが日本軍「慰安婦」ではないにもかかわらず虚偽証言をして補助金を不正受領したと主張し、警察に告発(全て却下)するまでに至った。

全国の「平和の少女像」に「撤去」と書かれたマスクを付けたり、黒いビニールをかぶせたりして侮辱する「少女像撤去チャレンジ」を実行に移したことを示す写真の一部=ソーシャルメディアよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 イ理事長はこのような攻撃の拡散に立ち向かい「これからは最小限の法的装置を用意する必要がある」と語った。平均年齢95.7歳である生存の慰安婦被害者たちとの家族が、侮辱や名誉毀損などにいちいち法的対応をするのは現実的に難しい。「死者名誉毀損罪は親族だけが告訴できるが、多くの被害者には遺族がおらず、告訴さえ不可能な状況」だ。正義連は2021年の法律政策諮問委員会を経て「日帝下の日本軍慰安婦被害者に対する保護・支援および記念事業などに関する法律」(「慰安婦」被害者法)の改正を求めている。「慰安婦」被害者法における被害の定義を見直し、被害を否定する虚偽事実の流布者に対して5年以下の懲役または5千万ウォン(約515万円)以下の罰金を科すことができるようにしようということだ。第22代国会には関連法案が多数発議されているが、一部はホロコーストの否定を法律で禁止・処罰した外国の法律を参考にし、少女像の毀損を禁止・処罰する条項を盛り込んだ。イ理事長は「韓国社会は独裁を経験し、表現の自由に敏感だ」としながらも、このような法改正は歴史をきちんと記憶に留めるための「最小限の安全装置」であると強調した。昨年11月、市民5万人余りが国民同意請願に参加し、これに関する請願が国会女性家族委員会に付託された。

 歴史否定勢力の存在は逆説的に「記憶の力」が強いことを示している。正義連が「デジタルアーカイブ」作業に力を入れている理由でもある。イ理事長は就任後、アーキビスト(記録管理士)を数人雇用した。2023年「戦争と女性人権アーカイブ」のホームページを作り、デジタル化が完了した資料を順次公開している。イ理事長は「歴史を記憶しようという理由は、似たような状況が再び訪れた時、同じ行為を繰り返さないためだ。『再発防止』はそれほど簡単なことではなく、過去を絶えず現在化する実践を必要とする」と強調した。「歴史的事実を巧みに歪曲する歴史否定論に対応することは容易ではありません。日本軍『慰安婦』問題も歴史、政治、外交、ジェンダー、人種などの問題がすべて絡んでいるうえに、80年余り蓄積されたストーリーがあるじゃないですか。私たちがすべきことの中で最も重要なのは、日本軍『慰安婦』問題をどのように記憶に留め、記録するかだと思います」

キム・ヒョシル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/1184670.html韓国語原文入力: 2025-02-2808:10
訳H.J

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