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トランプ大統領の関税・習主席のディープシーク、韓国は…【特派員コラム】

登録:2025-02-07 06:44 修正:2025-02-08 10:10
ドナルド・トランプ米大統領の就任日に公開されたディープシークは、関税を持って帰ってきたトランプ大統領に対し、習近平主席が切り出した会心のカードだ/ロイター・聯合ニュース

 2025年1月20日、太平洋を挟んで大きな事件と小さな事件があった。太平洋の向こうの米国では、ドナルド・トランプが米国の第47代大統領として、4年ぶりに返り咲いた。コロナ禍に対する最悪の対処や議事堂暴力事態など様々な悪材料を乗り越え、もう終わったと思われた人物が世界最強国のハンドルを再び握ったのだ。

 向かい側の中国では、職員が200人にもならない小さなスタートアップ会社が、コンピュータプログラムを一つ公開した。生成人工知能(AI)モデルのディープシークだ。公開当初は注目する人があまりいなかったが、すぐに世界の視線が集まった。先端半導体がなくても、世界最高水準の米国AIモデルの5〜10%に過ぎない費用で開発されたにもかかわらず、それらに劣らない性能を実現したためだ。その上、誰でも使えるようにソースを公開した。

 「米国の利益を最優先する」としたトランプ大統領は、公言した通り、就任するやいなや「関税」という刀を抜いた。世界最強の経済力に裏打ちされたトランプ大統領の刀は、すぐに効果を発揮した。不法移民者問題をめぐり争っていたコロンビアがひざまずき、カナダとメキシコも米国に流れ込むフェンタニル問題の解決に向けて努力するとして、一歩退いた。トランプ大統領は欧州など同盟国に対しても、貿易赤字を理由に関税賦課を計画している。常識と論理ではなく力と度胸が勝負を分けるトランプが引き起こす世界のジャングル化だ。

 中国はトランプ大統領が中国製輸入品に10%追加関税を賦課したことを受け、米国製の一部製品に対する報復関税と鉱物輸出統制、企業制裁など多重措置で対抗した。米国のパンチよりは弱いが、様々な措置を織り交ぜながら「中国はカナダやメキシコとは違う」ことを示した。トランプ大統領は「屈服しなければ、さらに関税を引き上げる」と脅しているが、中国は序盤の神経戦で押されるわけにはいかないと言わんばかりに、びくともしない。

 中国の習近平国家主席は5年前、トランプ大統領の強攻に押され、米国製品を2千億ドル分購入することで、やや屈辱的な合意をしたことがある。トランプ大統領の「臥薪嘗胆」と同じくらい、習主席も切歯腐心し、トランプ大統領との一戦に備えてきた。約10年前の中国が家電、造船、自動車などの分野にこだわっていたとするなら、2020年代の中国は未来の中心技術である情報通信(IT)、宇宙航空、半導体、AIに集中した。ジョー・バイデン政権がデリスキング(危険除去)政策を前面に掲げ、中国に対する先端技術制裁を強化すると、習近平は科学技術の自立を口癖のようにわめきたてた。

 意図したかどうかは不明だが、ディープシークはトランプ大統領の就任日に公開された。関税を持って帰ってきたトランプ大統領に習主席が切り出した会心のカードであるわけだ。ディープシークの登場で、米国があれほど守ろうとした半導体、AI分野の優位が揺らぐとみられている。

 トランプ大統領と習主席が世界の覇権をかけて第2戦に突入する時、米国の同盟国であり、中国の隣国である韓国は何をしているのか。弾劾訴追された大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)は、選挙管理委員会システムのパスワードと中国政府の電話番号が「12345」で同じだとし、不正選挙疑惑に中国を引き込む主張を展開している。尹大統領の忠岩高校同門のチョン・ジェホ前駐中国大使は先月末、密かに離任式を行った後、静かに帰国した。「大統領の友人」という後ろ盾で駐中大使になったチョン大使は、大統領のとんでもない反中認識に対する記者たちの質問を恐れたのだろう。

 2025年1月20日の歴史は、トランプ大統領の帰還とディープシークの登場のどちらを上段に記すだろうか。残念なことに、韓国の歴史はその頃を裁判所暴力事態(1月19日)と記録するだろう。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ヒョンジュン | 北京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1181175.html韓国語原文入力: 2025-02-06 21:32
訳H.J

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