「授賞式に出席するかどうかをめぐり、以前は年末年始だけ頭を悩ませていましたが、今は一年中困っています」
ある芸能事務所の関係者はため息をついた。ここ数年で雨後の筍のように増え、年間20余りに上る大衆音楽授賞式の問題で頭を抱えているためだ。最近5年間に新しくできた授賞式だけで5つを越え、今年も3~4つが新設される予定だ。スポーツ新聞やオンライン芸能メディアなど報道機関の間では授賞式を作るのが流行りのように広がっている。授賞式が乱立しているため、競争を避けて開催時期を変更することもある。4月にもある新しい授賞式が開かれる。
問題はかなりの数の授賞式が賞の権威より収益事業に没頭していることにある。主催側は収益を上げるために開催場所を海外に移し、世界のファンを対象に有料人気投票も実施する。場所はK-POPファンの多い日本やタイ、インドネシア、フィリピンなどが好まれる。昨年、公共放送の「韓国放送」(KBS)まで既存の「歌謡大祭典」を「ミュージックバンク・グローバルフェスティバル」に名前を変えて日本で開いた。国内の音楽授賞式に国内ファンが疎外される状況になったのだ。
主催側が海外での開催にこだわる理由は、チケット価格を大幅に引き上げることができるからだ。最近、東南アジアで開かれたある授賞式のチケットは59万ウォン(約6万6千円)まで高騰したという。その国の1人当りの年間所得が600万ウォン(約68万円)水準であり、主な観客が10~20代であることを考えると、かなりの大金と言える。チケット価格が高くなり、海外ファンの不満が高まれば、それだけK-POPの未来は暗くならざるを得ない。
コスト削減と経験不足による運営問題も浮き彫りになっている。最近、一部の授賞式では出演アーティストが舞台から転落し、客席でもみ合いが起きるなど、安全問題が発生した。2月に国内で開かれたある授賞式では、スタンディング席の観客がトイレに間に合わず、その場で用を足したという投稿がオンラインに広がったりもした。今年1月、タイで開かれたある授賞式の司会を務めたアーティストはソーシャルメディアへの投稿で、「これまでで最悪の音響システムだった」と書いた。今年初め、タイで開かれる予定だったある新しい授賞式は、開催2週間前に突然中止となり、出演アーティストやファン、業界関係者など、皆を困惑させた。
出演対象の芸能事務所やアーティストも不満を漏らす。あらかじめ決まった日程や健康問題などで、授賞式への出席を拒否したくても、それができないという。多くの主催側が報道機関であり、「報復報道」を恐れているためだ。授賞式という名目で出演料をまともに払わない場合もある。ある芸能事務所の関係者は「多くの授賞式で、主客転倒して公演をするために賞を与えている。公演を行わないなら賞を与えないという。だから賞の権威があるはずがない」と皮肉った。
ついに音楽界内部でこのままではいけないという声が高まった。レコード制作会社、配給会社などが集まった社団法人「韓国音楽コンテンツ協会」(音コン協)は26日、「無分別に開催されるK-POP授賞式に反対する」という題名の声明を発表した。音コン協は声明で、「最近、一部のK-POP授賞式は収益を追求するための手段となっており、公正性と客観性もますます失われている。K-POPの成功とファンダムに便乗するショー中心の一回性のイベントになってしまった授賞式を懸念する」と明らかにした。
音コン協のチェ・グァンホ事務総長は「急増する授賞式でアーティストの健康が脅かされ、深刻な出演の確保をめぐる競争でアーティストとマネジメント会社は出演強要に苦しめられている。乱立するK-POP授賞式がむしろK-POPの発展を妨げているという共感が会員企業の間で広がっており、協会レベルで行動に出ることになった」と話した。
音コン協は警鐘を鳴らすために、自分たちが運営してきた授賞式であるサークルチャート・ミュージックアワードを無期限延期することにした。また、アーティストを保護し、ビジネス紛争を予防できる授賞式の出演契約書とガイドラインを今年上半期中に作り提示すると発表した。
これについて、ある芸能事務所の関係者は「いろいろな会社が集まった団体で先頭に立って行動に出たのは鼓舞的なことだ。ただし、他の授賞式の主催社が同調するかどうかは不透明だ。授賞式への出演契約書とガイドラインを作っても、これに従うという保障はない。民間の自律でできないのなら、政府が乗り出してでも乱れた秩序を正してほしい」と語った。