国家人権委員会のキム・ヨンウォン常任委員が「日本軍性奴隷制問題は誰もが知っているのに、何度も(話を)持ち出して我々は何を得ようとしているのか」と述べたという。人権委員会が国連女性差別撤廃委員会に提出する報告書の内容を審議する11日の全員委員会で、韓国政府が日本軍「慰安婦」被害者に対する日本の公式謝罪と法的賠償を求める必要があるという部分を問題にして、そのように述べたというのだ。人権委員の言葉とは信じられないほどの妄言だ。
日帝が犯した「慰安婦」の蛮行が女性の人権を蹂躪した反人道的犯罪だということは、動かすことのできない歴史的真実であるだけでなく、それにともなう日本の法的賠償責任も、裁判所の相次ぐ判決で確認された。被害者や遺族が日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟では、2021年に勝訴判決が確定し、昨年末にも改めて日本政府の損害賠償責任を認める判決が下された。にもかかわらず、日本政府は誠意ある過去の歴史問題の解決の努力をまったく示さず、韓国政府も対日外交において一貫して屈辱的な姿勢を見せている。
このような状況のもとで「政府は日本政府に謝罪と法的賠償を求めなければならない」という指摘は、常識的な最小限の要求だ。国連女性差別撤廃委員会は5月に韓国政府を対象とする審議を進めるが、ここに提出する報告書にこうした要求が加えられることも、極めて当然のことだ。同委員会は、2016年の日本政府に対する審議でも「公式の謝罪と犠牲者が満足できる完全かつ効果的な賠償と補償を提供しなければならない」と勧告している。
しかし、キム常任委員は「韓国をとりまく国際情勢は北朝鮮、中国、ロシアからなるブロックがあり、それに効率的に対抗するためには日本という国が韓国には必要だ」として、報告書にこのような内容が含まれることに反対した。イ・チュンサン常任委員も同調した。外交状況を口実に、残酷な人権蹂躪を覆い隠そうとする反人権的な発想だ。国民の常識にも至らないだけでなく、人権擁護を最優先の責務とする委員会の要人としてはなおのこと低い水準の認識だ。
人権委員会は11人の人権委員のうち3人を常任委員とする。キム常任委員は大統領が指名し、イ常任委員は与党「国民の力」が推薦した。これに先立ち両委員は、公式会議の席上でさまざまな嫌悪・差別発言をしたという理由で、人権団体から国民権益委員会に告発されたこともあった。人権委員会の中心に位置しなければならない常任委員の席をこのような人物らが埋めているとは、嘆かわしいことだ。