韓国政府の医学部定員増員に反発し、専攻医(インターン・レジデント)が大挙して辞表を提出すると、政府は業務開始命令を出し、応じなければ医師免許の停止に続き、取り消しまで考慮するという立場を明らかにしている。しかし、実際に医師免許の取り消しまで続くには司法府の判断が必要で、政府の意志だけでは容易にはできないという見通しが出ている。
保健福祉部は、20日時点で全専攻医(1万3000人)の55%にあたる6415人が辞表を提出したと把握している。政府は、このうち831人に業務開始命令を出し、専攻医が業務開始命令に応じなければ、医師免許の停止や取り消しなどの行政処分も考慮するという強硬な立場を示した。
しかし、専攻医が診療維持命令や業務開始命令などの医療法59条1項および2項にともなう政府の各種命令に従わないとしても、政府が取りうる措置は免許停止処分しかない。
医師免許の取り消しまで進むには、越えなければならない壁が多い。免許取消し要件は医療法65条に明記されているが、主に資格停止期間中に医療行為を行った者、3回以上資格停止処分を受けた者などが該当する。今回の事態に結び付けることが可能な条項は「禁固以上の刑を宣告された者」程度だ。
大挙して辞表を提出した専攻医が禁固以上の刑を受けるには、政府が医療法59条2項にともなう業務開始命令を出し、専攻医がこれに応じないことにならなければならない。その後、捜査と起訴を経て司法府の最終判断を受ける必要がある。
問題は量刑だ。医療法は、業務開始命令に従わなければ3年以下の懲役または3000万ウォン(約340万円)以下の罰金に処すと規定している。しかし、専攻医が業務開始命令に応じなかったという理由で刑事処罰を受けた前例はなく、実際に禁固刑以上の処罰が下されるかどうかは未知数だ。2020年に公共医大の設立に反対して専攻医の80%が集団休診に突入した際、政府が業務開始命令違反を理由に専攻医10人ほどを刑事告発したことがある。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行状況などを考慮して告発を取り下げ、捜査につながらなかった。