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[社説]梨泰院特別法案、真相究明なしの遺族支援を主張する韓国与党

登録:2023-12-23 07:55 修正:2023-12-23 11:36
10・29梨泰院惨事遺族協議会の会員と宗教・市民社会団体の活動家が18日午前、国会のまわりで五体投地をおこなっている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 梨泰院(イテウォン)惨事特別法案は21日の国会本会議を通過できなかった。キム・ジンピョ国会議長が与野党合意を強調して仲裁案を示したが、与党は真相究明反対の立場を曲げていない。惨事の原因と収拾の過程などで発生した問題を明らかにし、再発防止策を立てるべきだとする遺族の要求には耳を塞いでいる。

 与党「国民の力」のユン・ジェオク院内代表兼党代表権限代行は22日、野党「共に民主党」の推進する梨泰院特別法について「政争を誘発し、政治的に悪用される恐れがある」として反対の意思を重ねて示した。特別法案に含まれている特別調査委員会の設置案に向けられたものだ。国民の力は、梨泰院惨事の原因と責任の究明は警察の捜査で終わっているため、さらなる調査は必要ないとの態度を固守している。ユン院内代表は「遺族と生存する被害者に対する支援と追悼事業に集中することが正しい方向性」だと述べた。国民の力は最近、遺族の支援および補償の強化などを骨子とした梨泰院特別法案をイ・マンヒ事務総長の名義で提出している。

 遺族が寒波の中で断食座り込みと五体投地(地面に額、両ひじ、両ひざをつけて伏す、仏教で最も丁寧な拝礼)までおこなっているのは、「より多くの補償」を引き出すためではないということは、与党も知らないはずはない。梨泰院惨事は政府の不在のせいで発生した社会的災害だ。関連諸機関は予防、惨事への対応および収拾、後続措置など、すべての面で失敗した。にもかかわらず、刑事的責任に限定された検察と警察の捜査は現場にいた実務級に対してのみ「尻尾切り」のごとくなされたに過ぎない。指揮責任者であるイ・サンミン行政安全部長官、ユン・ヒグン警察庁長、ソウル警察庁のキム・グァンホ庁長らは、法的責任はもとより、政治的責任も取らず健在だ。独立的な特別調査委を設置し、事実関係と責任の所在を明確にすべきだというのが遺族の一貫した要求だ。

 キム・ジンピョ国会議長は前日、特別調査委の設置を前提として特検条項を削除したうえで、法の施行時期を来年4月以降に延期する内容の仲裁案を与野党に提示した。与党は与野党合意処理を強調しながらも、「政争誘発」の懸念を掲げて真相究明反対ばかりを繰り返している。政府の責任が明らかになることを恐れ、かばいたてばかりしているとの批判は避けられない。梨泰院特別法は社会的惨事が起きた構造的原因を確認し、国の責任と課題をあぶり出すことを趣旨としている。市民の命と安全を守るのに与党も野党もない。与党は遺族の声に耳を傾け、真相究明のための特別法案処理に直ちに応じるべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1121527.html韓国語原文入力:2023-12-22 17:53
訳D.K

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