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[寄稿]ガザ地区の惨状

登録:2023-12-11 05:08 修正:2023-12-11 08:33
6日(現地時間)イスラエル軍が大規模な地上戦に突入したパレスチナ・ガザ地区のハンユニスで煙が広まり始めている/EPA・聯合ニュース

 イスラエルの情報機関は10月7日の攻撃の1年前、ハマスがイスラエルとガザ地区を隔てるセキュリティ・フェンスを破壊する詳細な計画が記された40ページの文書を入手した。これは情報機関と軍で広く回覧されたが、イスラエル政府は動かなかった。7月にハマスがこの文書の内容に似た内容の訓練を行っているという情報分析官の警告も無視した。攻撃2日前、イスラエル軍の特殊部隊がガザ地区境界からヨルダン川西岸地区側に再配置された。

 こうした驚くべきニュースでさえ、自分と自分の極右政策だけがイスラエルを安全にさせると言い張っていたベンヤミン・ネタニヤフ政権を倒せずにいる。ネタニヤフ政権は、ハマスの計画を阻止できず、イスラエル人数千人を危険に陥れた。10月7日は攻撃への対応で後手に回った。その後はパレスチナ人を無差別的に攻撃し、ハマスが拉致した人質の生命も危険にさらした。

 ネタニヤフが10月7日より前にはそれなりに保っていた人気はほぼ消失した。11月の世論調査では、イスラエル人の4%だけが自分たちの首相を信頼するとしている。ネタニヤフは、ガザ地区への攻撃についても国際的な非難を受けている。ガザ地区保健省の集計によると、2カ月間でパレスチナ人1万7000人以上が死亡し、6000人が行方不明となった。死亡者のほぼ70%が女性と子どもだ。パレスチナ人の死亡者の規模は、すでに10月7日に亡くなったイスラエル人の数(約1200人)の10倍以上になる。

 ガザ地区の死亡者が多いのは、何よりイスラエル軍が人口密集地域にばく大な量の爆弾を投下したためだ。さらにイスラエルは、少数の救援物資の搬入以外はガザ地区を封鎖し、多くの人たちを危険に陥れている。ジャバリア難民キャンプ1カ所だけで10万人が飢餓に直面している。イスラエル軍はガザ地区の住民に、攻撃が加えられる地域を離れるよう言っているが、住民はイスラエルの作戦範囲が拡張されたため、行き場を失っている。

 トルコの指導者レジェップ・タイップ・エルドアンは、ネタニヤフを「ガザの虐殺者」と呼び、彼はセルビアの独裁者スロボダン・ミロシェヴィッチのような運命をたどるだろうと述べた。コロンビア政府はネタニヤフを国際刑事裁判所に提訴することを明らかにした。ハマスも10月7日に犯した殺人行為に対して戦争犯罪容疑で起訴されるだろう。しかしイスラエルは、国家としてその行為に対して非常に強い処罰を受けなければならない。イスラエルは国際刑事裁判所の規程締約国ではないが、パレスチナが2015年に加盟したので、その方からイスラエルが犯した行為は起訴が可能だ。

 イスラエルは、安全保障のためにハマスという脅威を除去しなければならないと主張する。しかし、無差別攻撃によってパレスチナの新しい世代を過激にさせている。米国は、パレスチナ自治政府がハマスに代わってガザ地区を統治することを望んでいる。しかし、パレスチナ人の87%はパレスチナ自治政府は腐敗していると考えているという世論調査の結果もある。

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は最近、ガザ地区での戦争は世界平和を脅かすとして、国連憲章第99条を発動した。しかし残念ながら、ネタニヤフ政権には攻撃の継続で失うものはない。支持率がさらに低くなることはありえない。一方で、多くのイスラエル人がハマス破壊の試みを支持している。米国の議員の一部がイスラエルに対する軍事援助に条件を付けることを要求したり、米国のユダヤ教のシナゴーグや数百のユダヤ人団体がバイデン政権に休戦の支持を求めているが、米国の大統領はネタニヤフを捨てるというシグナルを示せずにいる。

 パレスチナ人は、必死のハマスと断固たるイスラエル軍の中間で、十字砲火を浴びている。現在の危機に対するいかなる解決策においても、パレスチナ人を意思決定の中心に置かなければならない。パレスチナ人には、被害者の立場を抜け出し自分たちの人生の設計者になる機会が与えられなければならない。

//ハンギョレ新聞社

ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1119817.html韓国語原文入力:2023-12-11 02:40
訳M.S

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