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[コラム]尹大統領の「負けたが、よくぞほっつき歩いた」外交

登録:2023-12-05 06:32 修正:2023-12-05 09:35
英国を国賓訪問した尹錫悦大統領が11月21日(現地時間)、ロンドンのバッキンガム宮殿に馬車で到着している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の2030釜山(プサン)世界博覧会(万博)誘致戦に動員されたある大手企業の関係者は、苦しい胸の内を打ち明けた。本来の業務を中断し、割り当てられた国を回っている間、困難な要求を突き付けられたという。彼は国々の政府関係者に会う度に「韓国は国の仕事を引き受けてくれる企業があって良いな」と言われ、釜山万博を支持すれば何をしてくれるのかという圧力を受けた。大規模な投資などを求められたという。当然、訪問する先々で受けたこのような投資の要求に全部応じるわけにはいかなかった。韓国が万博誘致のために企業を送り出した瞬間から、これらの国々が企業に見返りを要求したのも十分予想できることだった。

 韓国は企業まで動員して攻撃的な誘致活動を展開したが、それはかえって逆効果をもたらした。企業は万博誘致のための国家訪問日程を秘密にし始めた。彼らが訪問したという噂が流れると、直ちにライバル国のサウジアラビアがその国にさらなる対応を行った。企業が訪問した国に仕方なく何かを約束した事実が知られれば、サウジアラビアが直ちにこれを相殺する見返りを示したということだ。企業まで動員した誘致の試みが、むしろ韓国を支持すると言っていた国々までサウジの攻略対象にし、支持を撤回する結果を招いたと(誘致戦に動員された)企業らはみている。ローキー(low key)で対応していれば、釜山を支持していた既存の40票ぐらいは守れたのに、むしろ29票に減ったということだ。

 当初から2030年万博はサウジアラビアのものだった。2025年万博が日本の大阪で開かれるから、次の万博を隣の釜山で開催するのは大陸のバランスを見てもあまりふさわしくなかった。何より、もはや韓国は国際行事の誘致で成長や開発を刺激する開発途上国ではない。最近、オリンピック、ワールドカップ、万博など大型国際行事の経済的効果には疑問符が付いており、特に先進国では悩みの種となっている。

 朝日新聞は11月29日、「見過ごされた危機―大阪博覧会まで500日」という連載シリーズの一つ「万博が置き土産から『爆弾』に変わるまで 岸田官邸の薄かった危機感」という見出しの記事で、万博参加国の大部分が展示館建設を先送りしており、「延期論」が取りざたされる危機だと報じた。10カ国程度だけが展示館を建てる建設会社を確定し、残りの国々は費用問題などで展示館建設を先送りし、事実上日本政府に支援を求めていたという。岸田文雄首相は8月31日、万博関連会議後に「万博の準備はまさに胸突き八丁の状況にある。私は内閣総理大臣として政府の先頭に立って取り組む決意だ」と述べざるを得なかった。

 同紙は「『万博はやばいらしい』(首相側近)との認識が急拡大」し、「万博に関わる幹部官僚は『いつ、誰が延期を言い出すか』と怯える」と報じた。同紙によると、日本政府は日本国際博覧会協会に財務省と外務省高官を派遣し、建設費と運営費以外に新たに発生する警備費などを全額国費で賄うことにした。参加国の他の費用も日本政府がさらに負担することは明らかだ。大阪が万博を誘致した背景は釜山と似ている。東京に比べて大阪地域が立ち遅れているため、万博で景気と成長を刺激しようという意図だった。自民党政府は大阪地域の支持獲得のために誘致に積極的に乗り出したが、今や足を引っ張られている。

尹錫悦大統領が先月29日、ソウル龍山の大統領室庁舎のブリーフィングルームで、2030万博の釜山誘致失敗について謝罪している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦大統領は万博誘致の失敗に関する謝罪声明で、万博に対する釜山の「市民たちの熱望を目撃し、また政府支援の物足りなさと無関心に対する失望感も感じた」とし、「ソウルと釜山を2軸にする韓国のバランス発展を通じて飛躍的な成長を図るための試み」だったと述べた。国際行事を通じて当該地域の支持獲得と発展を成し遂げるという点は、大阪も釜山も変わらない。

 国際行事の誘致で何かを成し遂げようとする時代遅れのやり方に国力と外交をつぎ込んだうえに、その過程でも客観的な情勢判断が遮断された。与党からも、外交部や企業の客観的な情勢報告が大統領周辺ではなく大統領自身によって遮断されたという嘆きが漏れている。

 韓国は今回1票当たりなんと200億ウォン(約22億4900万円)を無駄にしたわけで、「負けたけど、よくぞほっつき歩いた」(「負けたけど、よくぞ戦った」に因んだもの)と皮肉を言われても、返す言葉がない結果となった。尹大統領が大統領選挙当時から中国に対して暴言を吐き、11月中旬に米サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で中国から韓中首脳会談を断られたのも同じ脈絡だ。就任後、尹大統領が外遊に出るたびに起きた外交的失礼と惨事はハプニングではない。客観的な現実、これに対する情勢判断ではなく、時代遅れの価値と理念に基づいた希望事項を精神的勝利法で貫こうとしたためだ。尹錫悦大統領は果たして変わることができるだろうか。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1119003.html韓国語原文入力:2023-12-05 02:09
訳H.J

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