尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は26日にサウジアラビアとカタール歴訪を終えて帰国するやいなや、最初の日程として朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の追悼式に参列した。現職大統領としては初の参列だ。尹大統領は一方、29日に開催される梨泰院(イテウォン)惨事1年追悼大会には参加しないことを決めたと大統領室は発表している。遺族だけでなく野党4党による共催であることをあげ、追悼式ではなく政治集会だから行かないと理由付けした。全国民が共に悲しんだ惨事から1年を迎え、犠牲者を追悼するとともに遺族の痛みを癒す場だが、誰が主催するかが尹大統領にとってはそれほど重要だったのか。
尹大統領は与党のソウル江西(カンソ)区長補欠選挙での惨敗直後、就任後初めて「反省」という言葉を使った。また、「理念論争をやめ、民生だけに集中しなければならない」、「国民はいつも無条件に正しい」とも言った。しかし、わずか数日で前と少しも変わらない姿勢を示している。
尹大統領は、やはり朴元大統領の追悼式に参列した朴槿恵(パク・クネ)元大統領に対し、「子としての悲しみに対して深い哀悼の意を表する」と述べ、並んで墓参もした。20日に保守の票田である大邱(テグ)・慶尚北道でも大統領支持率が50%を割ったという報道があった直後だ。来年の総選挙を見据えた、大邱・慶尚北道などの尹大統領の最後の支持層である強硬保守勢力に対する切ない求愛だとみられる。
一方、遺族が直に尹大統領を招待している梨泰院惨事追悼式への参列は拒否した。今、大統領から慰められるべきは大統領による赦免で釈放された朴槿恵元大統領なのか、これまで一度たりとも大統領の謝罪を聞けていない梨泰院惨事の遺族たちなのか。
野党4党の共催を口実にしたのは実に稚拙だ。尹大統領はこれまで、イ・サンミン行政安全部長官らの指揮責任を先頭に立って否定してきた。大統領に従って政府与党も、遺族による「梨泰院惨事真相究明特別法」制定要求を一蹴してきた。追悼式が野党との共催で行われることになったのも、尹大統領と与党が一貫して無関心と無視の態度をし続けてきたからだ。野党による共催が本当に問題なら、与党も主催者となればよいではないか。梨泰院惨事に対する尹大統領の不満と心の狭さばかりをあらわにしているのだ。
尹大統領の言う「統合」とは結局、味方だけに対する半分だけの統合ということがはっきりした。総選挙が近づいている。状況が不利だと思ったら、その時は何と言って「統合」を語るか見ものだ。