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[コラム]大邱・慶尚北道と「70代以上」が守る「落ち着いた」大統領

登録:2023-10-19 08:39 修正:2023-10-19 09:20
尹錫悦大統領が17日午後、青瓦台迎賓館で行われた国民統合委員会の晩さんで、同委のキム・ハンギル委員長、国民の力のキム・ギヒョン代表、ハン・ドンフン法務部長官、ユ・インチョン文化体育観光部長官ら参加者たちと記念写真を撮っている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 大統領支持率と大統領候補支持率は、同質のものとして比較することは困難だ。ただし流れは読める。韓国ギャラップによる世論調査で、大統領選挙直前の2022年3月6~7日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の支持率と、先週(10月10~12日)の尹大統領の支持率を比較すると、49%対33%だ。大統領選挙前の支持層の3分の1(16ポイント)が離れていったのだ。地域別に見ると仁川(インチョン)・京畿道が50%から30%と、下落が最も激しい。大邱(テグ)・慶尚北道が唯一過半数(58%、2022年62%)を保っており、下落幅も4ポイントに過ぎず、「最後の」砦として強固に持ちこたえている。年齢別に見ると20代が40%から16%へ、30代が42%から21%へと、半分以上が離れていっている。「70代以上」が唯一、過半数(58%)が支持している(詳細は中央選挙世論調査審議委員会参照)。

 就任1年あまりで、このようにドラマチックに墜落したケースはなかった。ソウル江西(カンソ)区長補欠選挙以降、保守メディアの社説やコラムは連日、大統領に対して「スタイルを変えろ」と述べ、焦燥感を隠さない。だが「誤りは修正できても限界は克服できない」(政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表)。

 保守メディアの指摘は大きく3つある。耳の痛いことを言ってくれる人物をそばに置け▽コミュニケーションを取れ▽国民の暮らしに目を向けよ、だ。尹大統領はかつて「人には忠誠を尽くさない」と述べた。しかし、本人は自分に対する忠誠を求め、忠誠を尽くさない人物は排除し続ける。だからもう苦言を呈する人物は彼に近づかない。李明博(イ・ミョンバク)がハンナラ党の大統領候補の座をめぐって争っていた時、最初の先頭走者は朴槿恵(パク・クネ)だった。李明博候補には政治経験も組織も、明確な政治的指向もなかった。だから当時、汝矣島(ヨイド)周辺では李候補陣営に集まる人々を「ベンチャー投資家」と呼んだ。そのかわり、候補時代には陣営の雰囲気が実用的・脱権威的だったので、気楽に率直な意見が交わされた。その李明博も、大統領になってからは壁が高く、そして厚くなった。今、尹大統領の周りは「安全資産投資家」ばかりなのではないか。支持率が30%台に落ちても、大統領室の参謀たちの総選挙での候補公認の話ばかりが聞こえてくる。そのなかで、首都圏の厳しい選挙区から出馬するという話はない。

 2つ目に、検察出身者にコミュニケーションを期待するのは難しい。検事は罪状を暴き出すことで正義を求める人々だ。いつも罪人たちを見てきたし、人の言うことをむやみに信じてはならない。そして、弁護士と戦って勝たなければならない。今「部長検事」尹大統領は「捜査検事」である長官たちに注文しているのではないか。ハン・ドンフン法務部長官の国会答弁の態度は、法廷で争っているように見える。野党議員の質問の意図を把握してシンプルに回答すればよいものを、丸め込まれるものかというような態度で言葉をひねり、むしろ反撃を加える。今までこのような国会答弁をする長官はいなかった。大統領が「戦え」と太鼓をたたくものだから、今やソウル中央地検長に至るまで、誰も彼もが真似をしている。これでどうやってコミュニケーションが成立するのか。その剛直な「信念」は、なぜ野党議員の前だけでひけらかすのか。

 最後に、国民の暮らしの問題。就学年齢5歳騒動、大学入試のキラー問題騒ぎに続き、医学部増員問題をみても、やり方が粗雑で拙い。医学部の定員増加は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に試みられたが、医師諸団体の反発で実現されなかった。全国民が苦しんでおり、だから支持する。だがこれは、江西区長選挙の直後に唐突に浮上したものだ。大統領選挙公約、国政課題の一つだったが、これまで何をやっていて、今になって500人、1000人、3000人などの、何か賭け事をするかのように、駆け引きするように、未確認の数値ばかりが出回っている。ところが医師団体の反発が激しくなるとためらう。医学部の定員拡大は、保守政党としてはより危険を甘受しなければならない。そのため、精巧かつ周到綿密にアクションプランを立てなければならない。与党の一部には、「それでも物議を醸しているのは理念ではなく民生問題だから」とそれさえも幸いに思っている人々もいる。尹錫悦政権に対する与党内部の期待水準だ。

 尹大統領は「公正と常識」のために大統領になったわけではない。昨年の大統領選挙翌日(3月10日)に韓国ギャラップが「尹錫悦に投票した理由」を尋ねたところ、最も多かった回答(2つを自由選択)は「政権交代」(39%)で、続いて「対立候補が嫌いだったから」(17%)だった。候補個人の要素である「信頼感」(15%)、「公正」(13%)はその次だった。先週の韓国ギャラップによる大統領の職務遂行についての調査では、肯定評価の理由で「信頼感」は1%、「公正」も1%だった。両調査の間に尹大統領が変わったわけではない。

 尹大統領は選挙惨敗後の13日、国民の力に対して「選挙結果から教訓を見出し、落ち着いて賢く変化」することを注文した。17日の国民統合委員会の晩さんでは、委員に対して「『数十年官僚生活をしてきた自分の方が専門家だから、外部がとやかく言わなくても自分はすべて分かっている』という考えを持って」はならないと述べた。尹大統領が言われたのではなく、言ったのだ。今後も問題が生じれば「落ち着いて」やり過ごすか、部下ばかりが「きっちりと」責任を取ることになるだろう。

//ハンギョレ新聞社

クォン・テホ|論説委員室長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1112694.html韓国語原文入力:2023-10-18 19:31
訳D.K

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