イスラエル軍が、ガザ地区北部への陸海空軍による合同攻撃の準備に着手したとして、住民に退避を繰り返し求めているなか、ガザ地区北部の住民110万人のうち約40万人が、南部に向かい命がけの避難に乗りだした。
15日(現地時間)、英国BBCは「イスラエル軍の撤収命令に従い、ここ48時間の間にガザ地区北部の住民110万人のうち40万人が、サラ・アル・ディーン通りを通って南部に向けて避難を始めた」というハマス側の話を引用して報道した。国連スタッフは「多くの人たちが南に脱出しようとする過程で『大惨事』が起きている」と状況を説明している。
避難の道には危険が各所に潜んでいる。イスラエル軍が安全を保障すると明言したサラ・アル・ディーン通りで13日、住民70人あまりが爆撃で死亡した事件をめぐり、誰の仕業なのかについて攻防が続いている。犠牲者には女性と子どもが多く、2歳の乳児もいた。ハマスはイスラエルが爆撃をしたと主張し、イスラエル軍は否定している。
避難民が多くの辛酸と苦難の末にガザ地区南部に到着しても、南部も大混乱であることには変わりない。ガザ地区は、360平方キロメートルの面積に約220万人が住む人口密集地域だ。ガザ地区南部に全人口の5分1に近い人たちが一度に集まって来ているため、大混乱が起きている。BBCは、ガザ地区南部の都市ハンユニスに向かう人たちを取材した記事で、「(南部側の)都市は、人口が一晩で2倍に増える準備ができていなかった」として、「すべての部屋、路地、道路が人でいっぱいで、他に行くところもない。(部屋を見つけられなかった人たちが)道路にあふれている」と説明した。南部の都市の各所もイスラエル軍が爆撃している。崩壊した建物や残骸のあいだでは、食料や燃料だけでなく商店でさえ水を入手できない「大惨事の状況」が南部にも広がっているということだ。医師たちが「患者にさえ1日300ミリリットルの水以外に与えられるものはほとんどない」と言うほど、医療の状況も切迫しているという。
ガザ地区の住民たちがガザ地区から抜け出す方法は、事実上ない。細長い形のガザ地区は、西側は地中海に面しており閉ざされている。東側と北側はイスラエルが設けた壁があり、壁の向こう側には、ガザ地区への進入のために待機しているイスラエル軍が陣取っている。南側のエジプトに接するラファ検問所が、ガザ地区から抜け出せる唯一の通路だ。しかしエジプトは難民の大規模な流入を懸念し、ラファ検問所を通じてガザ地区の住民が越境してくることを厳格に統制している。
ガザ地区の住民の人道主義的な危機に対して、懸念の声がますます強まっている。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は15日、イスラエル軍の空爆によって、ガザ地区で少なくとも2670人が死亡し、9600人以上が負傷したとして、「前例のない人道的大惨事」の状況だと懸念した。パレスチナ当局は、空爆による行方不明者も1000人を超えると主張した。イスラエル側の犠牲者も1400人を超えた。