ハマスの攻撃に報復するイスラエルがガザ地区への侵攻をほのめかす中、北側のレバノンを拠点とする武装組織ヒズボラなどが繰り返しこれを牽制する動きを見せた。ヒズボラの介入が本格化し「第二戦線」が開かれたら、イスラエルはハマスとヒズボラという二つの敵と同時に戦わなければならない。
ロイター通信など主要海外メディアは10日、レバノンとイスラエルの国境地域でイスラエルとヒズボラの衝突が続いたと報じた。ヒズボラはこの日声明を出し、イスラエル北部のアビビムに向かって2発の誘導ミサイルを発射し、イスラエル軍の車両を攻撃したと発表した。イスラエル国防軍(IDF)は報復に乗り出し、南部レバノンのいくつかの村を砲撃した。新華社通信は匿名の消息筋の話として、イスラエル軍がヘリコプターも動員し、複数の地域でヒズボラの観測所を攻撃したと報道した。
7日に行われたハマスの攻撃以来、イスラエルとレバノン国境地域では3日間、繰り返し小規模の衝突が続いている。ヒズボラはハマスの攻撃が行われた翌日の8日、イスラエル占領地のゴラン高原の国境地帯にある農地「シェバー・ファームズ」に砲撃を加えた。イスラエルもこれに対抗して爆撃を行った。ヒズボラはこの攻撃で隊員3人が死亡したと明らかにした。ヒズボラの高官のハシム・サフィ・アルディン氏は同日、ベイルート郊外のヒズボラ基地で開かれたパレスチナ戦士たちとの連帯行事で「われわれの歴史、われわれの銃、われわれのロケットはあなたたちと共にある。われわれのすべてのものがあなたたちと共にある」と連帯の意志を示した。
9日にもイスラエル北部地域で交戦が起きた。同日の衝突は、武装隊員らがレバノンからイスラエルに侵入したことから始まった。イスラエル軍はヘリコプターの支援を受けて彼らを射殺した。イスラエル軍はこの過程で自国の高位将校が死亡し、2人の武装隊員を射殺したと発表した。パレスチナのイスラム聖戦は同日の攻撃が自分たちによるものだとし、「アルアクサの洪水」作戦の一環だと明らかにした。アルアクサの洪水は、7日未明に始まったイスラエルに対するハマスの大々的な奇襲攻撃の作戦名。
ヒズボラは2006年のイスラエルのレバノン侵攻の際、1カ月間戦争を繰り広げた。イスラエルはヒズボラを撲滅するため侵攻したが、激しい抵抗を受け、目的を達成できず撤退した。この戦争はイスラエルが建国後に行った様々な戦争の中で、事実上初めて敗北した戦争として知られる。
イスラエル領内深くを打撃できる長射程砲を持つヒズボラは、イスラエルが「レッドライン」(禁止線)を越えた場合、イスラエルとハマスの紛争に介入する意向を表明している。レッドラインはガザ地区に対するイスラエルの全面侵攻とみられる。米国の国防当局者は9日、記者団に対し、「我々はヒズボラが誤った決定を下し、この紛争で第二戦線を開く方向を選択をする可能性について深く懸念している」と述べた。