放送通信委員会(放通委)のイ・ドングァン委員長候補が「保守理念戦士の教育と育成が必要だ」との立場を明らかにした。放送の公共性と公益性を守り、そのために独立的に運営されるべき放通委の委員長候補が、特定理念の「教育」と「育成」の意志を明らかにしたかたちであり、その資格をめぐる批判は避けられないとみられる。大統領府報道官時代には、(選挙の際に)与党の公認推薦後の対策まで提案するなど、報道官室の業務範囲にとどまらず国政全般に影響力を行使したことも明らかになっているため、イ候補の率いる放通委の今後に対する懸念も高まっている。
16日に共に民主党のイ・ジョンムン議員室がイ候補から提出を受けた書面答弁書によると、イ候補は「著書『平等の逆襲』で『保守理念戦士の教育と育成はもはや遅らせることのできない課題』だと記していることについて、現在も同じ意見なのか」という質問に「今も考えに変化はない」と答えている。続けて「政党と市民団体の教育訓練を通じた力量の強化が必要だと考える」と述べている。
放通委は放送の自由、公共性、公益性を高めるための合意制の行政機関であり、委員長をはじめとする常任委員の政治的独立性を特に重視する。放通委法10条で「政党の党員」、「選出職の公務員退職から3年以内の者」、「大統領引き継ぎ委の委員退職から3年以内の者」などは放通委員になれないと規定されているのもそのためだ。イ候補は李明博(イ・ミョンバク)政権時代に、政権の意に沿わない公共放送局の記者やPDを「左偏向ジャーナリスト」と規定して追い出したメディア掌握の責任者として、野党とメディア団体から名指しされてきた人物でもある。
イ候補が大統領府報道官だった時代の報道官室は、国会議員選挙への対応策まで提示していた。イ・ジョンムン議員室が入手した2008年3月15日付の「週刊主要メディア報道分析」と題する文書によると、報道官室は「ハンナラ党公認関連」という項目で、「(公認)脱落者の出馬に伴う精密な民意の動向の把握が必要であり、無所属出馬を思いとどまらせる適切な人事対策を講じる必要がある」と記している。公認から脱落した与党関係者の無所属出馬を防ぐために、大統領府が彼らのポストを設けるべきだと提言しているのだ。
イ候補の妻に対する人事請託未遂事件に関し、国会で虚偽の答弁をした疑惑も持ち上がっている。人事請託を試みた疑いなどで起訴されたA氏の判決文によれば、A氏はポストを得るためにイ候補の妻に現金2000万ウォンと履歴書を渡し、その後、イ候補に会って人事請託の進行状況を問い合わせた。しかしイ候補は「人事請託を依頼してきた当事者と会ったことがあるか」と民主党のチョ・スンレ議員に問われ、「会ったことはない」と答えている。
イ候補はこの日、盆唐(プンダン)凶器振り回し事件の報道の背景に自身の写真を用いたYTNの役職者と社員を刑事告訴するとともに、3億ウォンの損害賠償請求訴訟も起こした。YTNは放送事故後、「視聴者とイ・ドングァン候補に深い遺憾の意を伝える」と表明しているが、イ候補側は「放送事故で受けた候補の精神的傷は深く、委員長候補指名前後にYTNは候補に対する『傷つけることを意図した一方的報道』を行ってきただけに故意の疑いがある」として法的対応を強行した。