戦争が長期化して戦況が膠着するにつれ、ロシア・ウクライナ双方ともに、ミサイルとドローンを活用して相手側の後方を攻撃する姿勢をみせている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は30日、「戦争は徐々にロシアの領土に向かい、その象徴的な中心や軍事基地に戻っている」としたうえで、「これは避けられるものではなく、自然かつ絶対に公正な過程」だと述べた。
ゼレンスキー大統領のこうした言及は、この日早朝にウクライナが試みたとみられる、モスクワ中心街に対するドローン攻撃が実施された直後になされた。ウクライナはこれまで、ロシア本土に対して行われた攻撃が自分たちの仕業であることを公式には認めていなかった。今回の攻撃が事実上ウクライナの仕業であることをゼレンスキー大統領が認めたことから、今後、ロシア本土に対する攻撃が拡大するものとみられる。
ウクライナは、6月初めに開始した反転攻勢で成果を上げられず、最近になってロシア領内に対する攻撃を強化している。7月に入ってからのモスクワに対するドローン攻撃は4回で、5月以降ではあわせて5回だ。ロシア軍の集中力を後方に分散させようとする意図だと解釈される。
ウクライナは、戦争初期の昨年7月31日、クリミア半島のセバストポリにあるロシア黒海艦隊をドローンで攻撃したのを皮切りに、10月8日にはクリミア大橋を攻撃するなど、数回の攻撃を敢行した。続いて昨年12月5~6日には、モスクワから南東に200キロメートル離れたリャザン州のディアギレボ空軍基地と、カザフスタンに接するサラトフ州のエンゲルス第2空軍基地をドローンで攻撃するなど、ロシア本土に対する攻撃を始めた。
さらに5月2日夜には、ロシアの心臓部であるモスクワのクレムリン(ロシア大統領府)をドローンで攻撃し、全世界を驚かせた。続いて、反転攻勢の直前の5月23日には、国境地域であるロシアのベルゴロド州に「自由ロシア軍」などの親ウクライナ民兵組織を投入した。
戦争初期から優勢な空軍力でキーウなどの後方を攻撃していたロシアも、本土地域がウクライナの攻撃を受けるたびに、対応攻撃を強化する姿勢を示している。ロシアは17日、黒海経由のウクライナの穀物輸出を保障する黒海穀物協定の更新を拒否した後、オデーサなどの黒海沿岸の重要な港湾に対する攻撃を強化している。特に先週、オデーサを狙って行われた攻撃は、開戦後では最大規模と評されている。