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[社説]「反ロ戦線」あらわにした尹大統領のウクライナ訪問

登録:2023-07-17 02:09 修正:2023-07-17 08:51
尹錫悦大統領が15日(現地時間)、ウクライナの首都キーウの大統領官邸のマリインスキー宮で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との首脳会談後、共同メディア発表を行っている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がロシアと戦争中のウクライナを電撃訪問した。北大西洋条約機構(NATO)との軍事協力強化方針を明らかにしたのに続き、ウクライナまで訪問することで、反ロシア基調をあらわにしたわけだ。

 尹大統領は15日(現地時間)、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との首脳会談で、「韓国の安全保障・人道・再建支援を包括するウクライナ平和連帯イニシアチブを共に進めていく」と明らかにした。首脳会談では1億5千万ドル(約210億円)の資金支援をはじめ、「ウクライナ回復センター」の建設事業への参加などについて協議した。尹大統領の訪問が両国関係を強固にし、ウクライナ戦争後に行われる再建事業への韓国企業の進出への足掛かりを築くためだという見方もある。首脳会談では「ウクライナが必要とする軍需物資の支援」も言及された。ただし、以前とは異なり「非兵器システム」を前提としておらず、今後の殺傷兵器の供与につながる可能性もあるという懸念の声もあがっている。

 尹大統領のウクライナ訪問は、自由陣営との連帯を最優先する「価値観外交」の延長線上にある。尹大統領は首脳会談で「必生即死、必死即生(生きようとすれば必ず死ぬものであり、死ぬ気になれば必ず生き残るという意味で、戦争において決然とした意志を示す)の精神で我々が強く連帯して共に戦っていけば、必ず自由と民主主義を守り抜けるだろう」と述べた。大統領室も「価値観外交と責任外交の実践基調が、アジアを越えて欧州までを含む立体的かつグローバルなレベルで緊密に連帯しているといえる」と説明した。今回のウクライナ訪問で米国と同盟国を主軸にした反中・反ロ基調の強化に韓国政府が積極的に参加することで、ロシアの「敵対国」であることを自ら標榜した格好だ。

 しかし、北朝鮮の核問題の解決など朝鮮半島情勢を管理するためには、周辺国の中国やロシアとの協力が欠かせないのは言うまでもない。尹大統領の「西側への肩入れ」は、これらの国が北朝鮮とより密着する口実を提供する恐れがあり、懸念すべきことだ。さらに、中国は韓国にとって交易量が最も多い国であり、ロシアも主要経済協力国に浮上している。今回のウクライナ訪問で、ロシアに進出した韓国企業と在住同胞の安全を懸念する声もあがっている。

 尹大統領は国内の洪水で人命・財産被害が増える中、歴訪期間まで延長してウクライナを訪問した。新冷戦構図の中、尹大統領の露骨な西側密着型外交は周辺国を刺激し、朝鮮半島の経済・安全保障における不安を高めている。歴代大統領がなぜ「バランス外交」を通じて周辺国を刺激しないよう努めたのか、何が国益を守る道なのか、尹大統領は今一度熟考しなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1100352.html韓国語原文入力:2023-07-16 18:48
訳H.J

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