国際原子力機関(IAEA)が、福島原発の汚染水海洋放出計画の安全性を検討するために当初3回行う予定だった汚染水の試料分析を1回だけにし、「環境試料」の分析結果もまだ出ていない状態で最終報告書をまとめたことが明らかになった。「今夏の海洋放出」を目指す日本政府の日程に合わせ、海洋放出を正当化するための報告書を急いで出したのではないかという疑念を抱かせる内容だ。こうした中、10~12日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議中の開催が予想される韓日首脳会談で、どのような議論が行われるかに注目が集まっている。
IAEAは4日に公開した最終報告書で、「(昨年10月に採取された2回目と3回目の)二つの試料に対する分析が含まれた報告書は、2023年後半に公開する予定」だと明らかにした。これに先立ち、IAEAは3回にわたり汚染水試料を採取・分析し安全性を検証すると発表したが、最初の試料の分析が終わった状態で最終報告書をまとめたのだ。昨年11月、海水と海洋堆積物、魚類、海藻類を対象に採取した「環境試料」の分析結果も抜けている。多核種除去設備(ALPS)の性能の検証、環境影響評価などもまともに行われなかったという指摘もある。
このような状況にもかかわらず、日本政府は8月の汚染水放出を既成事実化している。韓国政府は7日、福島原発汚染水の海洋放出の安全性に対する検討結果を公開する際、日本に対する提案なども出すという。しかし、この提案に対する国民の期待はあまり高くない。これまで「処理水は安全だ」という日本の主張を擁護することに力を入れて生きた韓国政府が、今になって日本に何をどれほど要求できるのか疑念を抱いているからだ。政府与党の言葉通り、汚染水の海洋放出が安全だとしても、これによって韓国が得られる国益は何もない。国民の健康と未来の海洋生態系に対するリスクがあるだけだ。にもかかわらず、日本に海洋放出の中止または延期、安全を求めるよりは(世論の悪化を)「怪談のせい」、「野党のせい」にして状況を乗り切ろうとしている。大統領室高官は6日の記者会見でで、「(福島原発汚染水を)福島原発処理水」と称した。これに関する記者団の質問に「韓国政府の公式名称は福島原発汚染水」だと釈明しつつも、「放出以降は処理水ではないか」と答えた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権のスタンスがどのようなものかを象徴的に示している。
韓日首脳会談で岸田文雄首相は汚染水の海洋放出について、尹錫悦大統領に理解を求めるだろう。尹大統領はその場で韓国国民の懸念を伝え、安全が確認されるまで放出を延期することを求めるべきだ。「国民の安全と徹底した調査を頼んだ」などのあいまいな言葉で済ませてはならない。