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「IAEAの汚染水報告書、2・3回目の試料を見ずに作成…非常に不可解」=韓国

登録:2023-07-07 02:48 修正:2023-07-18 08:03
6日午前、ソウル中区のフランシスコ教育会館で開かれた「放射性汚染水関連IAEA報告書の問題点に関する専門家分析記者懇談会」で、ソウル大学保健大学院のペク・ドミョン名誉教授が挨拶をしている/聯合ニュース

 福島第一原発の汚染水の海洋放出計画が「国際安全基準に合致する」という結論を下した国際原子力機関(IAEA)の最終報告書に対し、韓国の放射能専門家たちが「科学的ではなく、生態系の複雑性を考慮していない」と批判した。核心となる内容の検証がまともに行われていないうえ、「基準より低い放射能数値が出た」からといって「潜在的な危険性」がないとは限らないと指摘したのだ。

 日本の放射性物質汚染水海洋投棄阻止 共同行動は6日、ソウル中区(チュング)のフランシスコ教育会館で、IAEAの最終報告書の問題点に関する専門家分析記者懇談会を開いた。

 「原子力安全と未来」のイ・ジョンユン代表とソウル大学物理学科のチェ・ムヨン名誉教授、ソウル大学保健大学院のペク・ドミョン名誉教授はこの日の懇談会で、IAEAが放射能核種をろ過する多核種除去設備(ALPS)の性能について検討していないうえ、生態系に及ぼす影響に対する総合的な評価を行わなかった点などを批判した。

 原発設計専門家のイ代表は、「報告書の最大の問題はALPSの性能に関する話が全くないこと」だとし、「(ALPSを通じて)トリチウムを除くすべての放射性物質を除去すると主張しているが、それを裏付ける信頼できるデータがない」と述べた。

 イ代表は原発汚染水の試料のうち、1回目の試料のみ分析して最終報告書をまとめたことも問題だと指摘した。また「2回目と3回目の試料の分析結果はまだ発表もされていない」として、「なのに最終報告書を発表したのは非常に不可解なこと」だと語った。信頼できる値を得るために通常は3回にわたって分析を行う。IAEAが自ら信頼を崩したという指摘だ。

 ペク教授もやはり、IAEAが放射能環境影響評価など主要な段階の検証を行わなかった点を問題に挙げた。また「IAEAの文書によると、ある施設やプログラムを分析する際には敷地評価から始まり廃炉(寿命が尽きた原子炉の処分)まで全体の段階を分析すべきとなっているが、IAEAが行ったのはコミッショニング(試運転)に対する分析だ。統制された海洋放出と主張しながら、最も重要な検証の段階を全く分析せず検証を終えた」と批判した。

 チェ教授は、汚染水の海洋放出後に生態系に及ぼす複雑な影響を考慮しなかった点を指摘した。また「セシウム、ストロンチウム、トリチウムなど核種(数値)一つ一つを独立的に計算して(基準より少ないからといって)『安全だ』とは言えない」とし、「複雑系(生態系)は完璧に安定した状態とはいえず、外部からの影響があった場合は予想できなかった結果が出る可能性があるため、統合的な考察が必要だ」と強調した。さらに「(放射能汚染数値と関連し)基準値より小さければ安全だと考えやすいが、基準値は『安全』そのものではなく、現実的な『管理基準』を指す」とし、「危険との関連関係が確実ではない場合は、判断を留保し『潜在的危険性』として注視しなければならない」と付け加えた。

 イ代表は、このようなIAEAの最終報告書を根拠に汚染水の海洋放出が認められた場合、「今後汚染物質を水で希釈して濃度を下げるだけで何でも捨てられるようになる」と批判した。ペク教授も「共有地を文字通り公共のものだと捉え、ゴミをむやみに投棄する場合もある」とし、「(IAEAの最終報告書は)国際社会に皆で『耳をおおうて鐘を盗もう』と言っているようなもの」だと語った。

キ・ミンド記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1099077.html韓国語原文入力:2023-07-06 19:45
訳H.J

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