北朝鮮の経済動向把握に必要な「入手可能な情報・指標の獲得」が、対北朝鮮経済制裁と新型コロナで一層制限され脆弱になった状況で、人工衛星と人工知能(AI)技術を活用して北朝鮮経済のデータを把握しようとする試みが最近若手の北朝鮮経済研究者の間で旺盛に進められている。夜間の照度データと昼間の映像をコンピュータ機械学習で数値化したデータ構築、環境衛星を活用した北朝鮮の大気汚染物質と産業活動動向把握、海洋船舶データ(AIS)とテキストマイニングなどビッグデータを利用した分析まで「非伝統的データ」を活用して北朝鮮経済統計を新たに発掘・構築しようとする多様な方法論が興味を引く。
3日、韓国開発研究院が発行した「北韓経済レビュー」6月号によると、新型コロナウイルス感染症以後、北朝鮮経済の研究環境は一層困難に陥っている。2020年初め、北朝鮮当局が中国との陸上国境を封鎖してからは、北朝鮮内部の状況に対する観察情報が大きく制限され、北朝鮮駐在外交官や国際機関の職員も全員撤収したためだ。国境取り締まり強化で脱北者も大幅に減り、中朝間の貿易制限と貨物列車および人的往来の中断で北朝鮮経済資料の入手も大きな困難に直面している。
こうした状況の中で、30~40代の研究者がデジタルコンピューティング技術を土台に新しい北朝鮮経済データの発掘・構築に乗り出している。例えば人工衛星の映像を活用した北朝鮮の夜間照度データ研究は、平壌など特定地域に集中して北朝鮮のマクロ経済の傾向と対北朝鮮経済制裁の影響力、地域別経済格差などを調べる試みだ。ただ、北朝鮮が慢性的な電力難に陥っているため、夜間照度が北朝鮮経済の実状を正確に把握できず、昼間の経済活動を含んでいないという限界もある。このため、昼間の衛星画像データを北朝鮮経済に適用する試みも続いている。昼間に人工衛星で撮影した映像を活用して様々な時点の写真の違いを分析・発見する方式だが、最近はバスの移動を観察し開城工業団地の稼動事実を明らかにしたりもした。
機械学習の活用によるアルゴリズムを人工衛星撮影映像に適用し、北朝鮮の地域別建築活動および都市化指数を算出した研究もある。韓国開発研究院のキム・ギュチョル研究委員は、「2010年以後、ほとんどの国際船舶に衛星データを利用した船舶自動識別システム(AIS)が装着されている。この船舶活動情報データと海運デジタル技術を結合し北朝鮮船舶資料を構築した後、北朝鮮の公式・非公式貿易を分析した研究もある」と話した。
環境衛星が観測した北朝鮮の主要大気汚染物質(二酸化窒素など)と北朝鮮の産業・経済活動を関連付けて調べる研究も活発だ。季節(夏・冬)と地域(ソウル・平壌)によって二酸化窒素の濃度は異なるが、これを通じて北朝鮮の特定地域(市・郡)の産業生産がどれほど活発かを間接的に把握できる。また、北朝鮮の経済政策の変化像は主に「経済研究」や「労働新聞」など北朝鮮の公式資料に基づいて、ワードクラウドおよび単純頻度数の他にも様々なテキスト(文字・単語)マイニング技法を活用して分析している。ソーシャルネットワークサービス(SNS)のデータを含むオープンソース出典の北朝鮮テキストデータを定量的数値データに転換し、大量データを管理・分析する研究もあり、2016年には輸出入貿易データや船舶活動のようなオープンソース情報ビッグデータを活用して北朝鮮の制裁回避戦略を実証研究した報告書も発表された。キム研究委員は「北朝鮮経済研究ばかりはその特性上、韓国が最前線をリードしている。米国の官僚や学者たちも韓国の報告書を英語に翻訳して参考にしている」とし、「新しい方法論を活用した分析が、北朝鮮経済の実状把握で不十分な部分を解消する突破口になりうる」と話した。