ロシア内部で軍事反乱を起こしわずか1日で撤回した民間軍事会社「ワグネル」とその代表のエフゲニー・プリゴジン氏が、一時掌握したロシア南部の都市ロストフナドヌーから、市民の歓呼のなか撤収する姿が映像で捉えられた。
25日、ワグネルの兵士たちがロストフナドヌーから撤収する様子を撮影した動画がテレグラムに公開された。動画には、ワグネルの戦車を取り囲む群衆の様子や、撤収する兵士に歓呼する市民たちの様子などが映っている。市民らは街頭に出て戦車に載っている傭兵の写真を撮り、プリゴジン氏は黒い大型車の後部席に座り、窓の外に手を振った。市民たちは車に近寄ってプリゴジン氏に握手を求めた。プリゴジン氏は車の中から市民らと写真を撮ったりもした。街頭からは誰かが「最善を尽くして」と叫ぶ声が聞こえた。前日の24日、クレムリンとの交渉を受け、モスクワに向かう兵士の撤収を発表した後、プリゴジン氏が大衆の前に姿を現したのは今回が初めて。プリゴジン氏が現在どこに向かっているのかは不明。米国CNN放送は、テレグラムに掲載されたこの動画が撮影された時刻は確認できなかったと報じた。
一時はロストフナドヌーを掌握したワグネルに対し、市民たちは警戒心ではなく親しみを示した。24日に撮影されたタス通信やAFPなどの写真をみると、街頭に出てきた市民たちは、戦車に乗った傭兵を珍しがるかのように取り囲み、写真や動画を撮影した。若い女性も戦車に上り、傭兵と肩を組んで自撮りを楽しんでいる様子だった。ウラジーミル・プーチン大統領が24日、国民に向けた演説で「背後に刃物が刺さっている状況」だと述べ、ワグネルを「武装反乱軍」と規定したにもかかわらず、ロシアの市民たちは傭兵に対して恐怖を感じていない様子を示した。
一方、反乱がわずか1日で終わった後、ロシア国内の状況は安定を取り戻している。25日、ロシアのタス通信は、ロストフナドヌーの市内の中心街の状況は25日午前0時頃に安定したと報じた。ロストフ州のバシリー・コルベフ知事は、ワグネルの傭兵は戦車や装甲車などとともに都市郊外近くの野戦キャンプに戻ったと述べた。また、ロシア連邦道路庁も25日、声明を通じて、ロシア内のすべての高速道路について制限措置が解除されたと明らかにした。前日24日、ロシアの高速道路を運営する国営企業アブトドル(Avtodor)は、運転者にロシア南部の主要な高速道路である「M-4」を迂回するよう勧告していた。高速道路を利用してロストフナドヌーからモスクワに進撃するワグネルの傭兵を避けるため、両側通行が止められもした。