本文に移動

ドイツ「中国は体制のライバルでありパートナー」…経済政策と「安保」の結合を強調

登録:2023-06-16 06:16 修正:2023-06-16 07:43
ドイツのオラフ・ショルツ首相(中央)が14日(現地時間)、ドイツのベルリンで開かれた記者会見で、連立政権の閣僚らとともに出席し、同日発表した国家安保戦略文書を持って写真撮影に応じている/ロイター・聯合ニュース

 ドイツ政府が史上初めて発表した国家安全保障戦略で中国を「競争相手」、「体制のライバル」と規定しつつも、「パートナー」として協力は避けられないと明示した。ロシアに対しては「最も重大な脅威」だと規定し、今後の国防費支出を国内総生産(GDP)の2%まで引き上げるとした。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は14日(現地時間)午前、ベルリンで記者会見を開き、このような内容を骨子とする国家安保戦略を発表した。ドイツの安全保障政策の方向性を盛り込んだ同戦略文書は、ショルツ首相が昨年2月末、ロシアのウクライナ全面侵攻直後に「時代の転換」を宣言してから約16カ月後に発表されたもの。ショルツ首相率いる「信号連立」(社民党、緑の党、自由民主党)に属する主な閣僚らが出席し、記者会見に臨んだ。

 76ページに及ぶ戦略文書で、ドイツはこの数年間、中国に関してライバルであり競争的要素が増えた点に言及し、中国との関係を「パートナー、競争相手、体制のライバル」と複合的に定義した。また、現在の世界秩序に「多極性」が高まっている点を指摘し、中国が「ルールに基づいた既存の国際秩序を再編しようと多方面で努力し、より積極的に地域の支配的地位を主張し、我々の利益と価値に反する行動を繰り返している」と指摘した。このため、「地域の安定と国際安保がますます圧迫を受け、人権が無視されている」としたうえで、中国が政治的目標を達成するために経済的影響力を「意図的に利用」していると批判した。中国はドイツにとって最大の交易国だ。

 さらに、ドイツは中国との関係で競争的属性があるが、協力が避けられないと再度強調した。同文書は「中国なしにはグローバルな課題と危機を解決できない」とし、「そのために我々はこのような分野(気候協力など)で協力できる選択肢と機会を把握しなければならない」とした。ショルツ首相は同文書が北京にどのようなメッセージを送っているのかを尋ねる記者団の質問に「中国は経済的に成長し続けるであろうと見込み、中国が世界貿易と世界経済に統合されることが損なわれてはならないというのが主な内容」だとし、「デカップリング(切り離し)ではなく、デリスキング(危険回避)を望んでいる」と答えた。

 同文書は、20日に予定されている中国の李強首相のベルリン訪問を控えて発表された。当初、ドイツは今年初めに対中国戦略を発表する計画だったが、連立政権内部の意見の相違のため公開されていない。

 戦争を起こしたロシアに対しては「現在、欧州と大西洋地域の平和と安全に最も重大な脅威」だと規定した。アナレナ・ベアボーク外相(緑の党)は、ドイツがロシア産ガスに過度に依存したことで脅威にさらされたとし、「今後、我々は経済政策を決定する際、安全保障により焦点を合わせる」と述べた。経済協力を通じてロシアや中国など権威主義国家を変化させるというドイツ特有の「東方政策」が事実上廃棄されたといえる。

ドイツのオラフ・ショルツ首相(中央)が14日(現地時間)、ドイツのベルリンで開かれた記者会見に連立政権を組んでいる党の主な閣僚とともに出席している=ベルリン/ノ・ジウォン特派員//ハンギョレ新聞社

 ドイツ史上初めて作られたこの文書を通じて、ショルツ首相が宣言した「時代の転換」の意味が具体化されたといえる。ドイツは新型コロナウイルス感染症の大流行とウクライナ戦争を経て、マスクなどの医療機器の過度な対中依存、ガスの過度な対ロ依存が国家安保に及ぼす影響を痛感した。また、ウクライナ戦争の開戦直後、軍備増強に消極的だった従来の立場を大転換している。国防費をこれまでより増やし、中国やロシアと関係を再調整するとともに、一国に対する過度な依存を減らすなどドイツが置かれた安保環境を「体系的・総合的に分析」し、統合された安保(integrated security)政策を打ち出したのだ。

 今後の国防予算規模に関しては、これまで北大西洋条約機構(NATO)の支出目標(国内総生産の2%)に及ばなかったもの(2022年1.44%)を「多年間平均的に」2%に引き上げると明らかにした。クリスティアン・リンドナー財務相(自由民主党)は同日の記者会見で、「来年(2024年)から国防費支出2%目標に到達できる」と述べた。ひとまず昨年、ドイツ連邦軍の現代化のために投入することにした特別基金1千億ユーロを使うことになる見通しだ。

 一部では、同文書の限界を指摘する声もあがっている。文書には、ドイツが「どんな脅威に優先順位を付けて対応するか」などの具体的な言及がなく、台湾など重要なイシューが抜けているということだ。中国関連研究機関のロディウムグループのアナリスト、ノア・バキン氏はロイター通信とのインタビューで、「今後数年間、最も大きな安保課題になる台湾に対する言及がない」と述べた。この戦略を具体的に実行する専門常時機関である国家安全保障会議(NSC)の設置内容も抜けている。自民党と緑の党が設置を主張し、議論の過程で争点になったが、合意には至らなかった。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1096008.html韓国語原文入力:2023-06-15 22:10
訳H.J

関連記事