NAND型フラッシュメモリ半導体のシェア(2022年)世界2位(18.9%)のキオクシア(KIOXIA、日本)と、4位(12.7%)のウエスタンデジタル(WD、米国)の合併が差し迫っているという報道が相次いでいる。両社が合併すれば、1位のサムスン電子(33.3%)を脅かし、3位のSKハイニックス(18.3%)を軽く引き離すことになる。日本と米国が力を合わせて韓国を圧迫してくるかたちだ。
キオクシアは現在2位をめぐりSKハイニックスと争っている状況にあるが、華々しい歴史と技術力を持つ伝統ある強豪だ。この会社の源泉は、NAND型フラッシュメモリを1986年に世界で初めて開発した東芝だ。東芝は今でもキオクシアの株の40.6%を持っているが、最大株主ではない。最大株主(持ち株比率55.9%)は、米国の私募ファンドのベインキャピタルが主導するコンソーシアムだが、このコンソーシアムは韓国のSKハイニックスや日本の経済産業省の民官ファンドなども参加する複雑な構造の韓米日複合体だ。東芝は、日本政府の支援を受けて合併法人の最大株主になる計画であるものとみられる。昨年日本政府は、キオクシアとウェスタンデジタルが三重県四日市市で共同運営しているフラッシュメモリのチップ工場に、約929億円の補助金を支援した。
東芝は1970~80年代、日本の半導体5強(東芝・三菱・NEC・富士通・日立)と呼ばれ、1980年にNOR型メモリを開発してフラッシュメモリの時代を初めて切り開き、1985年には世界初となる携帯用パソコンであるノートブックパソコンを発売した。快進撃を続けた東芝が没落することになった契機は、一つ二つでは断言しがたい。他の日本の半導体企業と同様に、80年代中盤以降、米政府を盾にした米国の半導体企業の報復とけん制(日米半導体協定)の影響もあっただろう。
だが、東芝の最大の失策は、2006年の第1次安倍内閣が推し進めた「原子力ルネッサンス」の尖兵となり、米国の原発企業ウエスチングハウスを買収したことだ。当時、ウエスチングハウスの市場価値は18億ドル程度と評価されたが、東芝は競争者を打ち負かすため、54億ドルという無理な金額を投じた。原子力産業に対する行き過ぎた楽観と慢性的な政治と経済の癒着が禍根となった。東芝は2011年に爆発した福島第一原発の3号機と5号機の原子炉とタービン発電機を供給した企業でもある。原発への投資によって急激に悪化した財務状況を隠すために、2248億円の会計不正まで犯し、家電と医療部門に続き半導体まで売却し、事実上グループが解体される屈辱を受けた。
米中半導体戦争を機に半導体強国の地位の奪還をねらう日本政府の戦略に乗って、東芝は過去の栄光を取り戻すことができるだろうか。